1曲目は“Do You Still Love Me”。鋭く刻み込むギターと歌い出しがインパクトのあるブルージーなロック・チューンで、ドラマティックな激情的なメロディと未練を綴った歌詞が切ない。インパクトの強さと楽曲の印象度がいちばん強いだけに、この曲がシングルになりそうな予感がした。2曲目は優しいギターの音色が優しいほっこりしたミディアムテンポのカントリー・チューンで、日曜日の昼下がりのようなリラックスムードが心地いい。続けてアップテンポな王道のロックンロール・チューンをプレイ。LAの青空をイメージさせるポジティヴなヴァイブが気持ちいい。そしてライアンお得意のスローだけど熱量のある切ないブルースもよかった。彼の歌い出しのナーバスなヴォーカルが好きな人にはかなりグッとくるはず。ここまでは余裕の表情を見せていたライアンだったが、新作初披露ということもあって実はとても緊張していたそうで、ソーダやミネラルウォーターを何度も飲み込んでは「緊張で口の中が乾いてカラカラなんだ」とMCで笑わせていた。さらには珍しくメガネで登場しただけに「誰か『メガネを修理しろ』ってTwitterでリマインドしてくれない?」とジョークを飛ばしたりしてどんどんスタジオ内は徐々に和やかなムードに包まれていった。
そしてポエトリーリーディング調のカントリー・ブルースと続いた中、ライアン史上最大と言っていいほど切ない泣きのメロディと枯れた哀愁が漂う感情的なバラードをプレイ。全身全霊をかけたような強い気迫が込められていて、それはまるで彼の内面をさらけ出したかのように生々しくてなり衝撃的だった。
その後、王道のアップテンポなカントリー、ブルージーなバラードとニューアルバムに収録される11曲を歌い上げた。初めて聴いただけでも威力を感じる玉曲が多く、おそらく最新作にして最高傑作というライアンのこれまでのキャリアの頂点を飾るものになったと感じた。この日はさらに“Dirty Rain”をはじめとした人気曲を4曲も披露してくれて、およそ1時間半に及ぶライヴが終了。最後に「音楽は変わらないから。ピース!!」といってステージから去ったライアンが印象的で、大統領選の後、アメリカ中が変化を迎えようとしている状況だけに強張っていた気持ちが解けたような気がした。
そんなライアンが日本で今年最後となるニューアルバムを引っさげた初の単独ライヴを開催!! 新バンドで披露する初のライヴをお見逃しなく!!
撮影・取材・文/小泉いな子