収益を全てコロナウイルス救済支援に寄付するオンラインフェスティバル<SECRET SKY MUSIC FESTIVAL>が、日本時間の5月10日(日)に開催された。ミレニアル世代の天才DJ、ポーター・ロビンソン(Porter Robinson)主催で行われた本イベントは、昨年の<SECOND SKY MUSIC FESTIVAL>に引き続き、マデオン(Madeon)やサン・ホロ(San Holo)、ナノビー(Nanobii)といった世界各国のアーティストに加え、日本からはキズナアイ、長谷川白紙、kz(livetune)らがライブ配信で参加し、オンライン上を賑わせた。
約14時間にも及ぶライブストリーミング配信では述べ25万人が視聴し、架空のフェスティバル会場を催した特設サイトには世界中からたくさんの音楽ファンが集まった。バーチャル空間に作られた会場では、パフォーマンスに対するコメントが終始溢れ、ここ日本でも「#Secretsky」がTwitterのトレンドにランクインするなど大きな盛り上がりを見せた。
そんな大成功を収めた<SECRET SKY MUSIC FESTIVAL>のライブレポートと復習プレイリストに加え、日本代表として参加した3アーティストからのコメントが到着した。
<SECRET SKY MUSIC FESTIVAL>ライブレポート
ポーター・ロビンソンが昨年開催した自身のフェス<SECOND SKY MUSIC FESTIVAL>のオンライン版ともいえる<SECRET SKY MUSIC FESTIVAL>は、スタートからポーターのマスコットキャラクターであるDJ Potaroで幕を開け、2番手にはフライング・ロータス(Flying Lotus)の〈Brainfeeder〉からのリリースで人気を集めるルイス・コール(Louis Cole)によるユニットのノウワー(KNOWER)がライブをするという豪華さで、ネット越しの我々観客を早くから魅了した。それ以降もポーターの審美眼によってキュレーションされたラインナップはフェスを華やかに彩り、日本からの参戦となった長谷川白紙は圧倒的な世界観のライブを見せつけ、kz(livetune)はDJと映像の見事なコラボレーションのみならず、自らも光の粒子となって度胆を抜く演出を見せてくれた。
同じく日本を代表しての出演となったバーチャルYouTuber・キズナアイのライブを終え、遂に出番となったのはポーターの盟友であるマデオン。3月のロックダウン期間中に公開された彼のライブセット<IRONING BOARD SESSION 1>と同じく、マデオンのデザインポスターが多数張られた部屋からパッドを使って一曲目に演奏されたのは、自身の“Be Fine”。スタートから、今年の1月に行われた素晴らしい来日公演を思い出させてくれた。次にブラストラックス(Brasstracks)によるカニエ・ウェスト(Kanye West)の“All of the Lights”カバー、ホワット・ソー・ノット(What So Not)などの楽曲をシームレスに繋ぎ、自身の楽曲も織り交ぜながらジャンルもBPMも縦横無尽に行き来し、四つ打ちパートではディプロ(Diplo)のハウストラックも使いながら、彼が大きな影響を受けているフレンチエレクトロの系譜を感じさせるDJスタイルをたっぷりと披露した。
そして驚くべきは、部屋の中でのライブだと思われていたのが、DJが進むに連れて部屋の壁が溶けて歪み出し、気付くと完全に背景が真っ暗になりマデオン自身も色が変わったりと、来日公演で体験したVJの世界観が目の前に繰り広げられていたことだ。印象的だったのは、四つ打ちの流れからブロックハンプトン(BROCKHAMPTON)“SUGAR”〜ザ・ウィークエンド(The Weeknd)“Blinding Lights”などのR&Bを差し込み、気持ち良い緩急をつけながらの得意のエレクトロサウンドの展開。中でも、フルーム(Flume)とトロ・イ・モワ(Toro Y moi)による“The Difference”や、出演者でもあるアナマナグチ(Anamanaguchi)などのインディーダンスの流れも盛り込み、マデオンの音楽嗜好の広さを見せ付けながらも自分の世界観に綺麗に落とし込む、プロデューサーとしての手腕を見せ付けてくれた。後半は、来日時のハイライトにもなった“Miracle”、ポーターとの名曲“Shelter”、“Heavy With Hoping”の他、アーティストによるカバーと畳み掛け、ラストにはフランク・オーシャン(Frank Ocean)によるアリーヤ(Aaliyah)“At Your Best (You Are Love)”の傑作カバー、ザ・クラッシュ(The Clash)の“Train in Vain”で、終始マデオンのルーツを感じさせる音楽愛に溢れるセットとなった。
続いて、本フェスの主催者であるポーター・ロビンソンが登場。DJ機材に、プロジェクターによるVJを本人にも被せたシンプルなセットながらも気負いのない雰囲気が、それまでイベントスタートからSNSで一緒に観客と盛り上がっていたポーター自身のフェスを心底楽しんでいる感とラフな感覚が妙にマッチしているように思えた。
1曲目から新曲“Something Comforting”と“Sad Machine”のマッシュアップという容赦ないスタートを切り、続いてムラ・マサ(Mura Masa)の新作からクレイロ(Clairo)をフィーチャーした“I Don’t Think I can Do This Again”とThe 1975“I Like America & America Likes Me”とのマッシュアップでひたすらにエモーショナルな感情を揺らし続ける。自身の“Easy”や“Language”などのダンスチューンでエナジーを高めつつ、ジェイムス・ブレイク(James Blake)やカリブー(Caribou)など、繊細でポーターの世界観ともリンクする楽曲を並べつつ、リル・ビー(Lil B)をフィーチャーしたフリースタイル、アニメソングやゲームサウンド、宇多田ヒカル、パソコン音楽クラブなど日本人アーティストの楽曲を盛り込むなど、こちらもマデオンとは別の角度で彼らしさを表現していた。さらに“Shelter”や“Get Your Wish”などを中盤に出し惜しみなくプレイし、後半には自身の楽曲をメインに構成するもアヴリル・ラヴィーン(Avril Lavigne)“I’m With You”と“Language”のマッシュアップ、“Something Comforting”にフェス出演者のkz(livetune)の名曲“Tell Your World”をマッシュアップするなど、常に飽きさせることなく驚きとエモーショナルさを与え続けてくれた。
そしてVJの文字で最後の1曲として紹介されたのが新曲“Look At The Sky”。青く澄んだ大空をバックにVJに歌詞が浮かび上がる。「Look at the sky. I’m still here. I’ll be alive next year. I can something good.」という歌詞には、現在の皆が置かれた状況とポーターなりの決意表明にも似たメッセージがリンクし、最後に相応しい忘れられない演出となった。
Text by TJO
kz(livetune) コメント
<SECRET SKY MUSIC FESTIVAL>、参加できてとても嬉しく思います。
またみんなで一緒に遊びたいねという気持ちも込めてポーターとも馴染み深いmograでやらせていただきました。僕らなりの楽しさを感じてもらえれば幸いです。
キズナアイ コメント
<SECRET SKY MUSIC FESTIVAL>、最高でした!世界的に活躍されているアーティストさんがたくさん出ていて、そこに私が混ぜてもらえたというのが本当に光栄でしたし、世の中に対して大きな意義を発信していく音楽フェスに出演させていただけて、すごく嬉しかったです。これからも歌やダンスをもっと頑張って、たくさんの人に届けていきたいなと思いました!!
長谷川白紙 コメント
今回の<SECRET SKY MUSIC FESTIVAL>では元々大好きなアーティストも多く参加していたので、わたしもそこに加われることが非常に光栄で、かつとても楽しかったです。更に、今回このオンライン・フェスティバルは−−もしかしたらポーター自身の所感とは異なるかもしれませんが−−現実世界のフェスティバルとは違った領域に到達しているように感じました。今一度主催のポーター・ロビンソンと全てのアーティスト、スタッフの皆様に多大なる敬意と感謝を表します。