あの大御所バンドも戦車! IRON MAIDENの『A Matter of Life and Death』
ここまででご紹介した通り、戦車ジャケというと勢いのあるスラッシュメタル勢やパンクやハードコアからの影響大なバンドが多いのですが、実はこんな大御所バンドも戦車ジャケのアルバムを出していました! ということでご紹介したいのが大御所も大御所のヘヴィメタルバンド、アイアン・メイデン(IRON MAIDEN)のこのアルバム! アイアン・メイデンというと、“Aces High”という大名曲の存在やヴォーカリストのブルース・ディッキンソンが大の飛行機マニアということもあってか、航空機や爆撃機のイメージが強いのですが、実は近作のアートワークに登場していた戦車。バンドのマスコットキャラクターであるエディが乗る戦車と骸骨の歩兵による死の進軍。ところで、戦車ジャケって骸骨の登場回数が異常に多い気がします。戦車=戦争=死=骸骨という、まさに、コテコテで単純明快、しかしながら何よりも男の子のハートを高鳴らせてくれるメタル美意識! このアルバムは、アイアン・メイデンが世に送り出したアルバムの中でも、前作の『ダンス・オブ・デス』と並んでプログレッシヴ色が強く、各トラックも長尺ナンバーが続きます。
Iron Maiden – “The Reincarnation Of Benjamin Breeg”
ひたすに男臭くロックで、しかし、どこかポップな要素もあるメロディーラインを持ったアイアン・メイデンの楽曲が好きな筆者としては、ちょっと親しみづらいアルバムではあるのですが、それでも、メイデンサウンドの最大の魅力であるギターの大交錯とブルース・ディッキンソンのシャウトはカッコ良い! と素直に思わせてくれます。まさに、戦車の如き重厚な質感を持ったアルバムです。
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バンド名、ジャケット、全てが戦車! TANKの『Honour&Blood』
そして、戦車ジャケといえば、やっぱりこのバンドは外せません! その名もズバリ、タンク(TANK)! ジャケットもバッチリ、タンク! ……と、戦車尽くしの英国バンド、タンクによる84年作『Honour&Blood』です。パンクバンド、ダムドに在籍していたアルジー・ワードが中心人物だったことで、パンクとヘヴィメタルを結び付けるバンドとして、HR/HMファンに知られているタンク。モーターヘッドにも可愛がられていたらしく、よく「モーターヘッドの弟分」という冠詞でも語られるバンドで、本作でもその評に恥じないロックンロール感に溢れた漢らしいメタルサウンドを聴かせてくれます。タンクは解散したり、再結成したり、再結成後にアルジーが脱退して同じくタンク名義で活動したり……と複雑な経歴を重ねながら現在も活動中。
ヘヴィメタル、ハードロックバンドにありがちな内紛によって分裂状態になるという切ない状況になっていますが、それでも流石は戦車という単語をバンド名にいただくバンドらしく頑強な活動を続けています。アルジー以外のメンバーによるタンクは今年ニューアルバムをリリースするようです。
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ヘヴィメタルは、何故に戦車に惹かれるのか?
そんなこんなで、戦車ジャケのアレやコレやをご紹介。自分の音楽的嗜好もあるのかもしれませんが、戦車をアルバムのアートワークに使っているバンドは、スラッシュメタルやモーターヘッド直系なロックンロールでパンキッシュなサウンド、つまり、ヘヴィメタルにおけるサブジャンルの中でも、とりわけ速くて過激なバンドが多いということが分かります。そうした”速さ”を追求しているバンドが、何故に鈍重な戦車に惹かれるのか? これは単純に戦車の重厚で硬質なイメージが、ヘヴィメタルの音楽的要素にストレートに結び付いているからだと思います。或いは、砲撃や地雷にも負けず、戦場を切り開きながら進撃する戦車の屈強な姿に、自信の音楽的方向性を託しているのかもしれません。
邪悪なデザインもあれば、コミカルなデザインもある戦車ジャケ。実写もあれば、イラストもある戦車ジャケ。シリアスでメッセージ性の強いデザインもあれば、「どうしてこうなった!?」と言いたくなる妙なシチュエーションのデザインもある戦車ジャケ。そして、それらによって演出され、形作られる各バンドのヘヴィメタルサウンド。やはり、戦車はヘヴィメタルのアートワークにおいて、重要なモチーフの一つだと言えるでしょう。これからも、素敵な戦車ジャケのヘヴィメタルアルバムが数多くリリースされることを鋼鉄音楽ファンの一人として強く願います。
(text by 住吉STRANGER)