てついた冬の夜空に光が差し込み、世界が少しづつ色彩を取り戻していく。ソリッドでありながらも、どこか優しく暖かなShe Her Her Hersのサウンドスケープに身を委ねるたび、そんな光景が浮かんでくる。本作『stereochrome』は、そんな彼らの前作からちょうど1年ぶりとなるセカンド・アルバムだ。

タカハシヒロヤス(ヴォーカル、ギター、シンセ)、とまそん(ベース、コーラス)、坂本夏樹(ギター、コーラス)により11年に結成。ほどなくして関口孝夫(ドラム)が加入するも、ファースト・ミニ・アルバム『scene』リリース直後に彼が脱退、ファースト・アルバム『Rollercoaster』は3人体制でのアルバムとなった。そして、新たに松浦大樹(ドラム)が加入し、クラムボンやSpecial Othersなどを手がけた星野誠をレコーディング&ミックス・エンジニアを迎えて作り上げたのが本作である。

まず驚かされるのが、前作以上に奥行きと広がりのあるサウンドスケープだ。例えば、ミニマルなアンサンブルで幕を開ける冒頭曲“Point of No Return”は、突如雪崩のようなフィードバック・ノイズに呑み込まれ世界が一変する。そんな「静」と「動」を行き来するダイナミクスは、前作よりも遥かに上がっている。タカハシと坂本によるギターのアンサンブルも、コードをレイヤーし音の壁を構築したかと思えば、異なるアルペジオやカッティングを組み合わせて幾何学的な模様を描き出すなど、様々なアプローチで聴き手を飽きさせない。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインやライド、ジーザス&メリーチェインといった90年代シューゲイザーを基軸としつつ、ポストロックやガレージロックなどのエッセンスをも散りばめているあたり、すでに貫禄すら感じさせる。もちろん、グロッケンシュピールやピアノ、シンセといったギター以外の音色も、本作の中で重要なスパイスだろう。

ヴォーカルの表現力も飛躍的に進歩している。倍音をたっぷり含んだタカハシのスモーキーな声は、優しさの中にも「憂い」があり、光と影のコントラストは以前にも増して濃くなった。ストレートな8ビートのキラーチューン“tiny”で切なくも多幸感あふれるシャウトを披露し、かと思えばイントロがストロークスを彷彿とさせる“INITIALIZE”では、ブルージーなメロディを官能的に歌い上げる。ファルセットによるオクターヴ・ユニゾンを駆使し、メロディを立体的に聴かせる工夫も見事だ。

前作の延長線上にありながら、楽曲、アレンジ、サウンド・プロダクション、そして演奏と、あらゆる意味で進化/深化を遂げたこのアルバム。是非とも多くの人たちの耳に届いて欲しい。

(text by Takanori Kuroda)

She Her Her Hers“stereochrome”album teaser

She Her Her Hers“INITIALIZE”

Event Information

2014.03.27(木)@タワーレコード新宿店 7F
2014.04.03(木)@下北沢CLUB Que
2014.04.06(日)@新宿Motion
2014.04.23(水)@新代田Fever

【開催決定!】stereochrome tour 2014
2014.06.23(月)@新代田Fever
2014.06.25(水)@梅田Shangri-La
2014.06.26(木)@池下UPSET

Release Information

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