コロナ禍で韓国エンタメにハマり、最終的に韓国映画やドラマなどの記事も書くようになった私がK-POPアイドルを知るきっかけは、専ら映画・ドラマである。そこから該当するアイドルにハマっていくかというと、そうでもない。俳優のファンクラブやファンミーティングに課金している身であり、K-POPにまで手を広げたらすでに足りないお金と時間がスッカラカンになりそうだからだ。そのため、今回韓国の大手芸能プロダクション〈SMエンタテインメント〉主催のコンサート<SMTOWN LIVE 2024 SMCU PALACE @ TOKYO>(以下、SMTOWN)をレポートするとなった際も、知っていたのは、最近観たドラマ『もうすぐ死にます』に出ていたシウォン(SUPER JUNIOR)のみ。急いで出演する全13組55名のプロフィール情報を調べ、MVを数曲ずつチェックするが、全く覚えられない。さすがに心許ないので、Kカルチャーの師として慕っている知人の八重樫夏美さんに同行してもらい、東京ドームへと向かったのであった。
SMTOWN LIVE 2024 SMCU PALACE @ TOKYO
2024.02.21(WED) at 東京ドーム
韓国ドラマは『ロマンスは必要2』から、K-POPは神話からハマったという夏美さんは、〈SMエンタテインメント〉の動向も長年追い続けている熱狂的なファン。「新しい経営陣になって初の<SMTOWN>だから、どんなイベントになるか楽しみ! 今年無事開催できて本当に良かった〜」と期待を膨らませている。どうやら大人の事情が色々あったらしく、この恒例イベントが次回いつなのかとヤキモキする日々を過ごしていたのだとか。それにしても生憎の雨模様にも関わらず、ものすごい人、人、人。東京ドーム周辺を完全にジャックしたファンダムの強さに舌を巻く。
入場して渡されたのは、Bluetoothと連携して光る腕輪。出演者のイメージカラーや演出などに合わせて光る仕組みだという。設定をしていると、隣でガサゴソとせわしなくなる夏美さん。「これは東方神起、これはaespa、これはSHINee……」と、これまで手に入れたペンライトのコレクションを披露してくれた。観客席に煌めく他の光を見ては、「あれは赤色だから東方神起のファンかも」、「aespaの中身はエンブレムがカスタムできるんだよ。あの人のはウィンターだよ」と嬉しそう。一つ、また一つと輝きが増していく会場を目にし、未知なるイベントへの期待が高まっていく……!
最初に登場したのは、この日デビューしたNCT WISH。NCTと冠の付くグループは複数おり、彼らはそのNCT最後のユニットだという。アップビートなダンスナンバー“NASA”を披露して会場を温めた後、目を輝かせて「先輩たちみたいにかっこいいアーティストになりたい」と展望を語る姿が眩しい。この時にはストリート感ある衣装や振り付けだったが、後半の“WISH”では無垢さを感じさせる白い衣装で愛くるしい振り付けに。私が想像する男性アイドルグループ像そのもので、プロデューサーがBoAだと知って妙に納得。「BoAは日本市場をよく知っているから、日本の人々に受けやすい“可愛い”を取り入れて展開していくのかもね」と夏美さん。未来に希望を抱くメンバーたちに前向きなメッセージ性の楽曲、そこにBoAの情報が加わったことで、今後彼らの動向を見守っていこうとひっそり決意する。
2番目に登場したのはHYOYEON。中毒性のあるビートに乗せて「You know what I deserve(私が何に値するのか分かっているでしょ)」と強気に歌い踊る彼女があの少女時代のメンバーだと知って驚く。さらにその少し後、TAEYEONも登場。HYOYEONとはまた異なる方向性で、ギターの音色が切ない別れの曲を歌い上げていた。私の中で”Gee“で記憶が止まっている少女時代。あの頃から彼女たちは一人ひとりどのような道を歩んでいるのか……、早くも探究欲が刺激されまくりである。
この流れでガールズグループに言及すると、この日はRed Velvetとaespaが出演。Red Velvetは時にクラシックもサンプリングしたロマンティックな曲に細やかな振り付けを合わせたガーリッシュなスタイルで、aespaはヒップホップ調の曲と大胆な踊りを組み合わせて“強さ”を前面に出したかっこいい系。それぞれ世界観が明確に構築されており、登場するや否や会場を自分たちのムードへと持っていく様がお見事だった。特に、Y2Kファッションからパンク感あるドレスまで着こなし、生歌も披露したaespa。いずれの曲もロックなアレンジになっており、それが彼女たちの高音ヴォーカルにバシッとハマっていて最高に痺れた!
尋常でない歓声が上がっていたのは、RIIZEとNCTの面々だ。昨年デビューしたRIIZEはカレッジ風のカジュアルな衣装や手足の長さを活かした元気いっぱいな振り付けで、とにかくフレッシュ。「可愛い」という叫び声が終始飛び交っており、私もいつしかウォンビン(※SM史上1の顔面と言われているらしい)がスクリーンに映るたび、身を乗り出して応援するように。NCTでは、”We Go Up“のような型にハマらぬ魅力のNCT DREAM、セクシーなパフォーマンスを披露しつつ素は天然っぽいWayVもそれぞれ印象的だったが、会場からこの日一番のうねりを感じたのはNCT 127。激しいダンス中でもファンサービスに抜かりなく、まさに脂が乗っている様子。単独ライブでたっぷり彼らのパフォーマンスも観てみたい、とオタク気質が揺さぶられた。
ソロでは、テン(WayV/NCT U)とテヨン(NCT 127)が頭に焼き付いている。単にエレクトロ調の楽曲(“Nightwalker”)自体を気に入ったというのもあるが、なめらかな動きに合わせて衣装がキラリと輝くテンは、常人では醸し出せない色気……! 華のあるパフォーマンスですっかり虜に。一方、(プレデビューチーム)SM ROOKIESメンバーの中でもダントツで活動の場が多かったと言われているテヨンは、踊る時の力の抜き加減が絶妙。自信に満ち溢れ、客席を“打てば響く”状態にさせるほどの凄まじいオーラで、ただただ圧倒!
と言いつつも、私の一番の好みはベテラン2組である。2人の歌と踊りをたっぷりと“魅せる”スタイルの東方神起からは王者の風格を感じ、時折披露する高音シャウトで沼落ち……! SUPER JUNIORは9人組だがそれぞれキャラが際立っており、「覚えたい」と思うほど、曲も踊りもかなりキャッチー。“Sorry Sorry”の隣で激しく振り付けを再現し始めた夏美さんが羨ましくなった。彼女曰く「バラエティ番組の常連で全員YouTubeチャンネルを運営している」という彼らはトークも面白く、与えられた3分間のMCタイムに各々好きなことを喋り尽くして終わらせる、というカオスな光景を繰り広げてバッチリ笑いも取っていた。
<SMTOWN>の醍醐味と言えば、グループの垣根を超えたコラボレーションだという。付け焼き刃の知識であれど、会場の反響具合と合わせて「凄い組み合わせなのだろうな」と感じるステージが幾つも繰り広げられていた。特に衝撃を受けたのは3組。リョウク(SUPER JUNIOR)とソヒ(RIIZE)のデュエットは高音のハーモニーが本当に美しく、特にソヒの突き抜けるような透明感ある歌声を一聴した際には、思わず目を丸くした。彼にはぜひ今後、韓国ドラマのOSTを担当してほしい! SUPER JUNIORとNCT WISHのコラボレーションは、登場前からワクワクした。事前に1階アリーナ後方の未使用ステージに“何か”がスイーッと運ばれてきたのを目撃したからだ。そして周囲から熱い眼差しが注がれる中で登場したのが、NCT WISH。SUPER JUNIORの“U”をパフォーマンスし始め、メインステージに現れた先輩たち=SUPER JUNIORへとバトンタッチ、最終的に全員で踊り遂げる。“尊敬”や“継承”など、彼らの様々な想いが交錯しているようで、何だか感動的……!
この日はイェソン(SUPER JUNIOR)によるOfficial髭男dism“Pretender”や、ウェンディ(Red Velvet)とウィンター(aespa)によるあいみょん”空の青さを知る人よ“といった日本人アーティストのカバーも披露されたが、強烈なインパクトを放っていたのがチャンミン(東方神起)とキュヒョン(SUPER JUNIOR)とショウタロウ(RIIZE)によるYoasobi“Idol”カバーだ。パープル、ピンク、ブルーの衣装に身を包み、キュンとさせる振り付きで歌う本物のアイドルたちは最強! ここですかさず夏美さんが解説してくれた。「キュヒョン率いる“ギュライン”というのがあって、これはワイン・漫画・ゲームの3つが好きな仲良しメンバーのグループなの。<SMTOWN>では必ずこのギュラインでパフォーマンスをするのがお決まりなんだよ。今回は日本で開催されたし、他のメンバーであるSHINeeのミンホとかが不在だから、ショウタロウがあえて抜擢されたのかもね。」次回までに所属グループの縦と横の繋がりをひと通り抑えることが、私の新たな目標になったのは言うまでもない。
この日は約4時間全48曲とかなりの長丁場ではあったが、その分満足度の凄まじさたるや。トップクラスのアイドルたちの競演は見応えがあり、そのとてつもないエネルギー量に、帰宅後は夕飯も食べずにベッドに倒れ込んでしまった。<SMTOWN>は〈SMエンタテインメント〉の知識が乏しくても、K-POP初心者でも大丈夫。新旧問わず様々なコンセプトのグループやソロアーティストが出演するので、あまりよく知らなかったとしても、私のようにきっと新たな推しに出会うことができるはず! ちなみに夏美さんは新たなガールズグループの予告映像が流れたことがハイライトの一つだと振り返り、「噂通り3月デビューかも」と予想していた。長年のファンにとっても、最新情報も得られる貴重な場であるようだ。とにかく今は、次回開催決定のニュースを心待ちにしている!
Text by 山根由佳
Photo by 髙村祐介・釘野孝宏
PROFILE
山根由佳
編集者・校正士・写真家のマネージャーなど複数の草鞋を履くフリーライターであり、海外ドラマ&映画の熱狂的ウォッチャー。観たい作品数に対して時間が圧倒的に足りないことが悩み。ホラー、コメディ、サスペンス、ヒューマンドラマが好き。
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