Snaccが7月17日に渋谷・WOMBで<デビューライブ「シグナル」>を開催した。現メンバーはAsahi、En、Teikyu、Hanaの4人。今年2月にシングル“シグナル”、7月に“アイナラ”を発表し、この日が記念すべきデビューライブとなった。
オープニングアクトは戦慄かなの。「Snaccは私のイベントでプレデビューライブをしてるんです。私はこの子(Snacc)たちの曲が本当に大好きで。私の曲を作ってくれてる方が、Snaccの曲を作ってたりもして、内緒で新曲も聴かせてもらったんですけど、めっちゃかっこいいです」と太鼓判を押した。さらに「私は小学5年からアイドルが大好きで、いろんな子たちを見てきたし、自分でもいろいろやってきたから、『もう見飽きたな』ってとこもあったけど、Snaccみたいな曲は今までなかったと思う。曲がとにかく良いんで、みなさんも布教してください(笑)」と話した。
先輩からの熱い応援を受けて、Snaccが緊張した面持ちでステージに登場した。オープニングではクールなR&Bに合わせてダンスを披露。緊張のせいか、フォーメーションを含め、動きにはまだ初々しさが残っていた。ただサウンドのセンスが非常に良い。Yaffleや小袋成彬がプロデュースする作品が好きな人にハマりそうな音といえば伝わるだろうか。
その流れのまま1stシングル“シグナル”を歌唱した。R&Bを基調したこの曲は、ムーンバートン的な浮遊感あるシンセと、牽引力あるファンキーなベースラインが特徴。だがメロディは日本人に馴染みあるコード感で、口づさみたくなるパートがたくさんある。混ぜ方のセンスが良くて面白い。手掛けたのは日本のポップミュージックにインターナショナルのスタンダードを取り入れてアップデートさせている新世代アーティスト・OHTORAとmaeshima soshiの2人。メインのヴォーカルパートは主にEnとHanaが、サブヴォーカル/ラップはAsahiとTeikyuがそれぞれシームレスに歌い分けていた。
続く“アイナラ”はウェッサイを彷彿とさせるファンキーで重いベースラインが特徴。この曲が面白いのは間奏でリズムを倍にとって、スクエアプッシャーばりのフュージョン的で、ジャジーでもあるベースラインが入ること。しかも2番のフックでウェッサイ要素とスクエアプッシャー要素がミックスされる。だが主役はあくまでヴォーカル、トラックは主張しすぎない。Snaccのメンバーには歌唱力があるが、この曲ではあえて歌い上げない。良い意味でローファイなのが日本らしい。STUTSやPUNPEEのサウンド感が好きな人に聴いてもらいたい。
さらにメンバーのキャラクターも興味深く、EnとHanaはエネルギッシュなタイプで、Asahiはちょっと控えめ。Teikyuはかなり控えめ。人間臭く凸凹なメンバーたちがハイセンスなトラックで、親しみやすい歌を歌うのは観ていてかなり楽しかった。ちなみにライブで披露された新曲“candy junky”はUKガラージ的なベースミュージック。かなりかっこいい。クラブの爆音で聴いたらやばそう。“アイナラ”と“candy junky”は、戦慄かなの“broken”でレトロフューチャーなR&Bを制作したKohei Shimizu。今年の3月までsooogood!名義で活動していたクリエイターだ。
次の曲はオープニングアクトを務めた戦慄かなのが今年1月にリリースしたアルバム『solitary』に収録された“soda”のカバー。イントロが流れると観客からも大きな声援があがり、途中からは客席で見ていた戦慄が乱入して、観客を煽りまくって場内のテンションを爆あげた。歌い終わると「後ろで一緒に見てた友達が『あのやる気ない子好き』って言ってたけど、絶対あんたのことだよね」とTeikyuに話しかけた。するとTeikyuは控えめなキャラの最大限を振り絞って「やる気はめちゃあります」と答えてみんなを笑わせた。
ラストの“know about me”をプロデュースしているのは、倖田來未などの国内アーティストやK-POPアーティストにも楽曲提供を行なっているYoung Yazzyと、ROYALcomfortとしての活動や様々なメジャーアーティストへの楽曲提供・編曲などマルチに活動するコンポーザーROVERによるプロデュースチームDistorted Wave。G.RINA、鎮座DOPENESS、ZEN-LA-ROCKのFNCYを好きな方にはぜひおすすめしたい90’sスタイルの楽しいR&Bで、歌う前にサビのコールアンドレスポンスや振り付けを観客と一緒に練習して、ゆるく親しみやすくも、ハイセンスな楽曲とパフォーマンスで場内を盛り上げた。戦慄かなのはオープニングアクトのMCで「みんなそれぞれいろいろ大変なストーリーがあってここまで来た」と話していたが、メンバーはライブの間、終始「楽しい!」と連呼していた。Snaccとしてのストーリーはまだ始まったばかり。これからの活躍に期待したいところだ。
取材・文/宮崎敬太
写真/稲垣謙一
スタイリング/Keisuke Fujita〜 THE FOUR-EYED