音楽家の原摩利彦、篠田ミル、サイモン・フィッシャー・ターナーによるサウンド・ドキュメント・プロジェクト THEY ARE HEREが始動する。
パレスチナ・ガザ地区の人々との実際の交流を起点に、彼ら、彼女らから提供されたフィールド音源をもとに構成されたサウンド・ドキュメント・プロジェクト THEY ARE HERE。本プロジェクトでは、紛争のあらゆる暴力性や情報封鎖から、人間の文化の存在をないことにされてしまっているガザ地区の人々の“私たちの声を世界に伝えてほしい”という願いに応えるように、音楽家たちがそれぞれの手法でその存在を可視化させていくという。
発起人である原摩利彦、共同発起人である篠田ミル、プロジェクトに賛同したサイモン・フィッシャー・ターナーとともに制作された音楽作品群は、Bandcampにて公開される。“To-the-sea”は、原摩利彦によるガザの音源を使った最初の作品集。海で子どもたちと遊ぶ母親の美しい思い出のフィールドレコーディングや現地に伝わる歌、詩人であり革命家のアブドゥ・ラヒーム・マフムードの詩の朗読などが収録されている。
篠田ミルによる“Reminder”シリーズは、現地からの映像・オーディオデータを編集、ループすることによって構成される楽曲群。スティーブ・ライヒの“It’s Gonna Rain”をインスピレーション源に、反復の中に浮かび上がるサウンドスケープを持って、パレスチナへの思いを再起させる。“ReminderⅠ”では、ガザの海辺で戯れるKefah一家の声と波音が繰り返され、異なるペースで反復される電子音とともに海辺の輝きや波打ち際を描き出す。また、“ReminderⅡ”では、“Aiplane 3h56am”と題されたSaedaのオーディオファイルが反復され、ドローン監視下のガザのサウンドスケープが線描される。
原摩利彦は「2024年8月よりパレスチナ・ガザ地区の人たちとSNSを通じて知り合い、寄付を続けてきました。交流を重ねていくうちに次第に仲良くなり、今では自分にとってとっても大切な存在です。ある人は『私たちの声を世界に伝えてほしい』と言いました。そして同時に『私たち家族に何かが起こったら、あなたが私のことを許してくれますように』とも」とコメント。さらに、「毎日、世界中で小さな子どもを含む多くの民間人が、武力により命を奪われています。人間の命、尊厳を奪うことは、いかなる状況であれ正当化できないと考えます。みんな、必ず誰かの子どもであり大切な人です。すべての人々が満足に食事ができますように。安心して静かな夜に眠れますように。やりたいことに挑戦する自由と希望がありますように。作品を販売した利益は、音源や写真の提供者へ送ります」と付け加えている。