そして<サマーソニック>最終日。日曜日のマリンステージのトリを務めたのはレディオヘッドである。
多くのレディオヘッドファンがこの日ひそかに期待していたのは、往年の名曲“Creep”が聞けるかもしれないということだ。長年この曲をプレイしていなかった彼らだが、この数年海外のライブで時折披露していることと、2003年に<サマーソニック>に出演した際に演奏していることで、各SNSでもまことしやかに噂になっていたのだ。
予定時間を15分ほど過ぎて、やっとライブが始まる。待ちに待ったレディオヘッドの登場に、オーディエンスは思わずステージに向かい手を伸ばす。
こちらも今年リリースした新譜『ア・ムーン・シェイプト・プール』を引っさげての来日となり、アルバム収録の“Burn the Witch”からスタート。トムが指揮者のように手を降りかざし、ジョニーの操るキーボードの旋律にボーカルが乗っていく“Day Dreaming”、ステージが青い光に包まれ、音のうねりにどんどん引き込まれていく“Ful Stop”など冒頭5曲はリリースしたばかりのアルバムから披露された。
ライブ中盤は、古くは『OKコンピューター』収録の“No Surprises”や『キッドA』収録の“The National Anthem”から、『ザ・キング・オブ・リムス』収録の“Lotus Flower”や新譜まで新旧織り交ぜたセットリストだったが、やはりファンもバンドと共に歳を重ねているのか、古い曲が披露されるとひときわ大きな歓声が上がる。
“Idioteque”をプレイするとメンバーはステージを降り、本編が終了。 今日、まだ“Creep”は演奏されていない。
数分後、会場の熱いコールに応えるようにメンバーが再度ステージに登場する。するとトムがおもむろに「チョットタカイデスネ」と、どこで覚えたのか、汎用性が低そうな日本語を披露したのち“Let Down”からアンコールがスタートした。
セットリストは既に20曲目、ドラムのフィルのカウントからイントロが始まると、この日最大、否、二日間で最大の歓声があがる。待ちに待った“Creep”が始まった。
モニターに映るオーディエンスの表情は、恍惚、涙する者などさまざまだが、それぞれに思い入れのあるこの曲を、冒頭から一秒たりとも聞き逃すまいと味わっているように見えた。掲げた掌を下ろす暇もなく、会場は大合唱、時にトムの歌声に聞き入り、また歌う。
ステージが終わっても鳴りやまぬ歓声、拍手。アーティストとオーディエンスがまさしく一体となり、<サマーソニック2016>の幕を閉じた。
もしあなたが、当日にこのライブ会場にいたのなら、ライブを楽しむあなたや友達の顔もオンエアされるかもしれないし、会場にいたら不可能なほど近くでアーティストのプレイを楽しむことができるのも、この番組のメリットだ。
惜しくも見に行けなかった人はもちろん、当日見た人もまた違う目線でこの夏を思い出してみるのはいかがだろうか。
番組は11月26日(土)にWOWOWにて全曲ノーカットで放送される。
文:須藤愛美
PROGRAM INFORMATION
SUMMER SONIC 2016 ヘッドライナーズ スペシャル
アンダーワールド ライブ・フロム・サマソニ 2016
2016.11.26(土)
START 17:30
WOWOWプライム
レディオヘッド ライブ・フロム・サマソニ 2016
2016.11.26(土)
START 19:00
WOWOWプライム