THE BIG PARADE 2014
デジタル時代の歌詞 feat. new product by SIX
2014.09.13(SAT)@Digital Garage

詞の意味……、そんなことを改めて考える時代がくるとは思わなかった。30代の筆者は、CDを買ったときはまずは一聴し、次にブックレットに書かれた歌詞を読みながら聞き直す、という行為がルーティンとしてあった。そのため、歌詞=メッセージという理解をいわばアナログ的に感じとれた時代を生きてきたといえる。だが、デジタル時代の現在、ブックレットが必要ない世代は「歌詞」をどう捉えているのだろうか?

先日、大盛況で行われた音楽×新型ミュージックフェスティバル<THE BIG PARADE 2014>のプログラムの1つとして、そんな「歌詞」について考えさせられるトークショー<デジタル世代の歌詞 feat. new product by SIX>が行われた。

登壇したのは、J-POPグループのAAAの活動と平行しソロラッパーSKY-HI(スカイ・ハイ)として活躍する日高光啓氏と、初音ミクの“VOCALOID(ヴォーカロイド)”を使用して制作した楽曲でネット音楽世代の孤児となり、いまや様々なジャンルのアーティストの楽曲の作詞、作曲、プロデューサーとしても活躍する、livetuneことkz氏。そして今回トークショー後半で発表されたプロダクトの開発を行ったクリエイティブエンゲージメントエージェンシー株式会社SIXの斉藤迅氏(ドゥーワップバンド、JINTANA&EMERALDSのリーダーとしても活躍!)という3名だ(とモデレーターのヴィレッジヴァンガードの金田氏)。現代で活躍するアーティストは、この時代において「歌詞」の表現や意味、リスナーの捉え方についてどう考えているのか? 非常に興味深いセッションとなった。

kz氏は「自ら検索してまで歌詞を見ようとする人は、カラオケで歌わなくちゃいけない、といった義務感がある人」ーーと、現代に生きる人々が歌詞に対してどのように捉えているのかを指摘する。そしてkz氏と日高氏、両者共に口を揃えていたのは「若い世代は“ものごと”を善くも悪くもカルチャーから入らない世代に見える。だからこそ臆せずに何でもチャレンジも出来る時代であるが、そこにはカルチャーとしての歴史や本質が大事だということ」。今まで聴き継がれていた音楽のメッセージを歌詞を通して理解することから、新たにクリエイトできる事もあるのだ。両者共にネット世代のアーティストでありながら成功しているのは、そのようなものの捉え方かもしれない。

トークショーではそれぞれ影響を受けたアーティストについてや、彼ら自身の楽曲で「歌詞」がオススメだという1曲をチョイスするコーナーもあり。さらには歌詞とメロディーの制作方法や、歌詞における主観性や第三者性に関する話など、作り手ならではの貴重なトークも繰り広げられた。

★SKY-HIが自身の楽曲で歌詞をオススメする1曲
SKY-HI -“Tyrant Island”Lyric Video

★livetuneが自身の楽曲で歌詞をオススメする1曲
livetune feat. 初音ミク -“Tell Your World”

トークショーの最後には、そんなデジタル時代に、歌詞を使ってより深い音楽視聴体験を提供するためのプロダクト「Lyric speaker」が世界初として発表された。これは専用アプリからスマートフォンに楽曲をダウンロードし、それを再生できるBluetooth内蔵のスピーカー。もちろんそれだけではない。その楽曲再生時、透明モニター上にその楽曲の歌詞が美しいタイポグラフィーで表示され、「言葉」を音だけではなく視覚的にも楽しむことが出来るのだ! また、音楽のテイストに合わせてフォントが変わる仕組みや、歌詞の翻訳機能も搭載しており、新しいかたちで「歌詞」を味わえるとのこと。また、どのような空間にもマッチする、インテリア性抜群なスケルトンボディも嬉しいポイントだ。

音楽が昔より誰でもいつでも楽しむことができるのはデジタルのおかげであることは明確である。あとはそんなデバイスやガジェットを上手く使って、如何にその本質に迫れるかというある種の岐路に私たちはいるのかもしれない。音楽ファンの多くは歌詞をじっくり理解したいと思っているはずだが、このスピーカーはそんな欲求を満たすのにまさにうってつけのアイテム。アーティスト達は「歌詞」という主張を放つ。それを受け取る私たちは、彼らのメッセージを深く理解できたら、いつもの音楽も違ったものに聴こえてくるかもしれない。

(text by Qetic・ダブルビー)

Product Information

Lyric speakerコンセプトモデル

プロダクト監修:株式会社SIX
クリエイティブディレクター:野添剛士、斉藤 迅、大八木翼(SIX)
アートディレクター:矢後直規(SIX)
プロダクトデザイン:小野直紀(博報堂)
テクニカルディレクション&システム開発:橋本俊行、Jungun Kim、中野誠也 (aircord)
アプリ開発:深津貴之、国分宏樹(THE GUILD)
モーションディレクター:takcom
インテグレートプロデューサー:荒川隼人(博報堂プロダクツ)
ラインプロデューサー:髙木悠太(博報堂プロダクツ)
プロダクションマネージャー:小篭薫(博報堂プロダクツ)
プロダクトムービーディレクター:植木秀治、平尾太一(博報堂プロダクツ)
カメラマン:鈴木康平(博報堂プロダクツ)
歌詞データ技術協力:シンクパワー
制作プロダクション:株式会社博報堂プロダクツ

仕様:
・モバイルからの楽曲を再生するblue toothスピーカー。
・透明モニター上で、楽曲再生時にその歌詞を美しいタイポグラフィーで表示し、
 「言葉をインテリアとして楽しめる」スピーカー。
・曲のジャンルを自動判別して、アニメーションやフォントが変わる機能を搭載予定。
・言語を自動判別して、日本語→英語 英語→日本語に翻訳する機能を搭載予定。
・専用アプリケーション