光と影、陰と陽。
苗場に降り立つニューオーリンズからの刺客

華絢爛なラインナップを揃えた今年の<フジロック・フェスティバル>だが、終わってみればきっと、彼らの話題で持ち切りになるんじゃないだろうか?

ザ・ホット・8・ブラス・バンド(以下、ホット8)。メンバー全員がジャズ発祥の街=ニューオーリンズで生まれ育ったという8人組のブラス・バンドで、結成は95年にまでさかのぼる。ジャズ、ファンク、ヒップホップを鮮やかに横断したサウンドと、ストリート仕込みの脅威のバンド・アンサンブルが全米を骨抜きにし、モス・デフやメアリー・J・ブライジ、さらにローリン・ヒルといった大物アーティストたちのバック・バンドも務めるなど、同業ミュージシャンからの評価もすこぶる高い。マーヴィン・ゲイやスヌープ・ドッグのカヴァーも収録したデビュー・アルバム『Rock With The Hot 8』(07年)は、ここ日本でも目利きのジャズ・リスナーを筆頭にジワジワと受け入れられた。

ChoiceCuts Live: Hot 8 Brass Band

【レビュー】<フジロック>出演決定! ニューオーリンズからの新たな刺客=ザ・ホット・8・ブラス・バンドの最新作に秘められた光と影 music130509_hot8brassband_53-2-1

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しかしその活動は決して順風満帆ではなく、05年8月、忌まわしきハリケーン・カトリーナによって地元ニューオーリンズの町並みは崩壊。残念ながら命を落としたメンバーもおり、バンドはチャリティー/地域社会プロジェクトへの貢献などを含む精力的なライヴ活動を行いながら、ニューオーリンズの復興と再生に尽力し続けてきた。その模様は、スパイク・リーが監督した255分(!)にもおよぶドキュメンタリー・フィルム『ウェン・ザ・リーヴス・ブローク(原題:When the Levees Broke: A Requiem in Four Acts)』でも余すことなく記録されている。ホット8の楽曲が放つ凄まじいエネルギーは、黒人の劣悪な生活環境を見て見ぬフリし、堤防の補強も怠っていた当時のブッシュ政権に対する「怒り」のステートメントでもあったのだ。あのバンクシーが彼らに共鳴し、アルバム・ブックレットの中にグラフィティの写真を使用することをOKしたというエピソードもファンならご存知かもしれない。

このたび日本先行でリリースされる最新3rdアルバム『トゥームストーン』は、公約通り前作『ザ・ライフ&タイムス・オブ…』(12年)と対をなす作品であり、今回も英国ブライトンのインディペンデント・レーベル〈トゥルー・ソウツ〉からのリリースとなる。光と影、陰と陽。タイトルのトゥームストーンとは「墓石、墓碑」という意味を持つが、ホット8はカトリーナの前後にも、理不尽な暴力事件によって数名のメンバーを失っているのだ。モノトーンのアルバム・アートワークでこちらを見つめるメンバーの姿は、喪に服しているようにも見える。前作収録の“Can’t Hide From The Truth”はニューオーリンズの警察官に対する辛辣なメッセージでもあったわけだが、『トゥームストーン』の収録ナンバーもほとんどがパーソナルな感情を扱ったものだという。だが、そんなコンセプチュアルな側面を一切抜きにしても、本作は燃えるように熱く、スリリングで、誠実な、素晴らしいパーティー・アルバムだ。美しいピアノの旋律とB.I.G ALによるラップが彩る“Tombstone Intro”で幕を開けると、怒号と嬌声が飛び交うブラス・アンセム“Wolf Burger”に突入し、続く“Homies”ではかの有名なK.C.アンド・サンシャイン・バンドの“That’s the Way (I Like It)”にオマージュを捧げてみたりする。“Hot 8 Shit”なんていうイカしたトラックもあるが、全編ヒップホップ色が強まっているのもたまらない。なお、日本盤ボーナス・トラックには、スティーヴィー・ワンダーの“All I Do”のカヴァーも収録されている。

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「この2枚の作品により、嵐が来る前と後の両方を祝うつもりだ。亡くなった者達の魂を解放させ、俺たちの町とバンド・メンバーの人生を祝福するのさ」
ベニー・ピート(チューバ奏者/バンド・リーダー)

これまでもギャラクティックやファンキー・ミーターズ、ダーティ・ダズン・ブラス・バンド、トロンボーン・ショーティ、ダンプスタファンク…といったニューオーリンズ勢が苗場をファンク・グルーヴで包み込んできたが、ザ・ホット・8・ブラス・バンドもまた新たな1ページを刻んでくれるに違いない。<フジロック>の開催直前には、メンバーの最速インタビューも公開予定。ぜひ『トゥームストーン』を聴き込みまくって、心待ちにしてほしい。

(text by Kohei Ueno)

ChoiceCuts Presents The Hot 8 Brass Band (Live at The Sugar Club, Dublin)
<フジロック>でもこんなライブが体験できること間違いナシ! HMVの先着特典オリジナルホイッスル「ホット8ッスル」をゲットして<フジロック>でも吹きまくろう〜!

ChoiceCuts Live: The Hot 8 Brass Band “Sexual Healing”

Release Information

2013.05.11 on sale!
Artist:THE HOT 8 BRASS BAND(ザ・ホット 8 ブラス・バンド)
Title:TOMBSTONE(トゥームストーン)
Tru Thoughts Recordings / Beat Records
BRC-374
¥1,980(tax incl.)
国内盤特典:ボーナストラック追加収録


Track List
01. Tombstone Intro
02. Wolf Burger
03. Homies
04. Shot Gun Joe
05. Milwaukee Fat
06. Eldridge
07. We Goin’ Make It
08. Hot 8 Shit
09. Big Girl
10. Take It To The House
11. Tombstone Outro
12. All I Do ※
※ボーナストラック追加収録

Event Information

FUJI ROCK FESTIVAL’13
2013.07.26(金)27(土)28(日)
新潟県 湯沢町三国202「苗場スキー場」