その後はJABBA DA HUTT FOOTBALL CLUBや中小企業、ZOMBIE-CHANGといった〈OMAKE CLUB〉の所属アーティストによる作品リリースを手掛け、そのレーベル・ポリシー「ミュージシャンの、ミュージシャンによる、ミュージシャンのための、著作権フリーのインターネット踏み台レーベル」という、軽やかでフレッシュなイメージも相まって、より周囲の注目を集める存在になっていく。そんな機運もあってか、TOKYO HEALTH CLUBはJ-WAVEのラジオCMへの大抜擢の声がかかり、「東京の朝」をテーマとした楽曲“ASA”を発表、7インチでリリース。

ASA / TOKYO HEALTH CLUB

THCという略称はまあ置いといて、グループ名に「HEALTH」とあるようにまさに健全でアイデア溢れる彼らの試みは、ヒップホップ・シーンの中ではある意味新しいニューカマーとしての立ち位置を確立し、サンリオピューロランドと<TAICOCLUB>による共催イベントやDOMMUNEにも出演、「遊び」から端を発しながらも、満を持してアルバムが待望視される存在に成長。そして、今回、4月より所属することになった名門レーベル、〈レキシントン/Manhattan〉との共同リリースという形で、6月8日に3rdアルバム『VIBRATION』をリリースする。

アルバムの価格はいくら? と、ここまで読んで気になった方もいるでしょう。なんと税込2,700円。高い? いやいや、それだけの価値がこの作品にはあるのです(その前にリリースした7インチは両方とも税込2,160円で即完ですよ)。そういう意味では、これが真のファースト・アルバムなのかもしれません。過去2作と比べても音質が格段によい! 音楽作品としての心地よさがまず、ある。それもそのはず、AKLOやSALUをはじめ、SEEDAからRHYMESTERまで、日本語ラップの重要作を多く手掛けてきたBACHLOGICがサウンドエンジニアを担当。にも関わらず? 気負いをあまり感じない、独特の気の抜けた遊び心たっぷりなユルさは健在で(天晴れ!)、〈OMAKE〉とはよく言ったような、これまでどおりのノベルティー感覚のある細かいネタがちりばめられた楽曲群には、よりクセになっていく中毒成分も。

天竺 / TOKYO HEALTH CLUB

先行で公開されたミュージックビデオは、多摩美の気心知れた同窓生であり、気鋭のクリエイター泉田岳によるもの。人生をテーマに、西遊記と掛け合わせたというアイデアのこの“天竺”は、泉田とその助監督、快速東京のボーカルとしても知られる福田哲丸はじめ馴染みのメンバーで制作され、グループ名をそのまんま切り口に、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』へのオマージュを交えた砂漠シーンから、急転直下のオチまで好き勝手にやっている様子が想像出来て微笑ましい。キャリアの最初からそういうスタンスを崩さず、良い湯加減♨のままのTOKYO HEALTH CLUBは潔い。アルバムには、〈OMAKE CLUB〉所属のZOMBIE-CHANG、MCpero、そして大先輩で過去にリミックスを行ったMACKA-CHINが参加。まさにこれまでどおりの関係性を崩さない、決して肩肘はらない、でも等身大のカッコよさがあるアルバムとなっている。

ENJOY MUSIC CLUBや7月6日(水)に待望のアルバムリリースが決まっているパブリック娘。など、フリースタイルダンジョンや高校生ラップ選手権で盛り上がりをみせるラップ・ブームの中、tofubeatsやceroによるシティポップの活況を追い風に確立したヒップホップ・ナードたち。古くは四街道ネイチャーやキミドリ~そして、RIP SLYMEやKICK THE CAN CREW全盛のラップ・ブームに続く、新しい季節がまたやってきている。TOKYO HEALTH CLUBはそんな新しい物好きな健康優良少年少女たちの玩具となって、夏の淡い日常の隙間を埋める、微弱なバイブレーションを与える手助けとなってくれるはずだ。オススメ!

ニュータイプ・ヒップホップクルー・TOKYO HEALTH CLUBの実態に迫る! 71i9WFH7sL._SL1500_

EVENT INFORMATION

Eggs presents SAKAE SP-RING 2016

2016.06.04(土)
OPEN 11:30/START 12:00
NAGOYA(スクールオブミュージック)

track maker

2016.06.17(金)
OPEN 23:00
SOUND MUSEUM VISION@渋谷

YATSUI FESTIVAL! 2016

2016.06.19(日)
OPEN 12:30
渋谷

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RELEASE INFORMATION

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text by Yu Nakazato