<WHITE HEAT CLUB>
tricot@Madame Jojo’s in London
チェコ共和国、ハンガリーでのフェス出演を終えたtricotは、ロンドンのクラブ、Madame Jojo’sでのライブ及び、イギリス西端のコーンウォール州にあるEden Projectという施設にて開催されるピクシーズのサポート・アクトのために、イギリスへ飛んだ。
7月8日、tricotはロンドンの中心部ソーホーに位置する老舗ナイト・クラブ、Madame Jojo’sにて毎週火曜日に開催されているイベント<WHITE HEAT CLUB>に出演する。20時からはインディーズのバンドを中心に数バンドがライブを行い、23時からはDJが入って朝方まで続くクラブ・イベントだ。この日はtricotの他にイギリスの2バンドが対バンで出演する。
7月8日のこの日はちょうど、ワールドカップ準決勝の好カード・ブラジルvsドイツ戦が正にライブの時間と重なっており、このサッカー王国のイギリスで果たしてお客さんが集まるのか、と疑問と不安を抱いていた。が、そんな懸念は杞憂にすぎず。遠い極東の地から訪れた日本のバンドを一目見ようと、1バンド目の演奏が終わるころには280キャパの会場を埋め尽くす人達が集まっていた。2番目の出番であるtricotのメンバーが、転換のためにステージに現れると、「Ochansensu-Su!」と、イギリスのBBCで何度もプレイされていた楽曲名をコールする声があがる。そして、ブラジルvsドイツ戦のキックオフとほぼ同時刻に、イギリス初戦のtricotのライブが始まった。
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この日は複数バンドが出演するイベントであったために、30分という短い時間ではあったが、逆に先の二つのフェスでこなしてきた長いセットを30分に凝縮して駆け抜けた、濃厚な30分となっていた。また、同じ海外でもフェスとは違って、tricotのライブを見たいが為に訪れた観客も多いことから、その盛り上がり様はこれまでと違っていて、“爆裂パニエさん”では合唱が聴こえる場面も。ただ、やはり対バンを見に来た者アリ、出演バンド関係なく<WHITE HEAT CLUB>のイベント自体を楽しみに来た者アリで、ライブ開始直後と、観客をどんどん取り込んでいって最高潮に達した最後の楽曲“MATSURI”とでは、その熱に雲泥の差があり、終盤にはブラジルに圧勝したドイツのように、日本のtricotがイギリスの観客を見事にねじ伏せていった。
tricotは2番目の出番だったために、トリをかざるバンドが控えているにも関わらずアンコールが鳴り始め、その歓声はしばらく止むことはなかった。その後、すぐにメンバーは物販のあるバー・スペースに出て行くと、フロアに居た観客は皆そこに集まり、Tシャツとレコードを手にして列をなし、メンバーは興奮冷めやらぬお客さんのサインと写真撮影に応じていた。
ちなみにtricotはこれまでリリースをした2枚のミニ・アルバム及び1枚のフル・アルバムを、それぞれのジャケット・カラーに合わせて、赤白青のトリコロールカラーとなるアナログ盤を作っていて、ライブ会場で販売をしている。日本ではまだCDが売れているが(日本は世界で一番CDが売れている国)、イギリスを含む欧米諸国、というか日本を除く全世界でといったほうがいいだろうか、CDは売れずに配信に取って代わってきている。一方、その反動現象として、全体としては小さな市場ではありつつも、アナログ盤の売上が伸びているのだ。イギリスでは2013年、なんと前年比100%増と、過去10年間で最も高い売上を記録している。また、日本でも8月2日、HMVが渋谷のDMR跡地にレコードショップをオープンしたことが大きく報じられるなど、同様の流れが見えつつある。実際、tricotの楽曲は世界でも配信されているのだが、それでも「Vinyl(ヴァイナル、アナログ盤のこと)は作っていないか、買えないのか」という多くの問い合わせが海外からtricotの元に寄せられているらしい。
こういった流れや海外での活動を視野に入れていたこともあってか、アナログ盤を積極的に作っていたtricotはこのイギリス公演にも持参をしたのだが、当日販売分は即完売となり、アナログ盤の需要の高さを実感した日でもあった。