火の光景がフラッシュバックされ、あるがままの日常の瞬間を刻みこんでゆくような、幻想的な映像に釘付けになった。それは、フルアルバム『シーベッド』のリリースを控えた、フォンデルパークのリード・トラック”Dracula”のミュージック・ビデオ。ローファイでレイドバックしたサウンドの質感、ロマンティックで官能性さえも感じさせるような世界観には、自然と引き込まれていくような不思議な魅力を無意識のうちに強く感じてしまう。

フォンデルパークは、幼馴染みのルイス・レインズバリー、アレックス・バレー、マット・ロウの3人からなるUKの注目バンド。あのジェイムス・ブレイクを育て上げたマネジメント・チームが送り出す新人アーティストであり、2012年末には本国UKで、ジェイムス・ブレイクとのツーマン・ライブも大盛況のうちに終えたばかり。彼らの待望のフルアルバム『シーベッド』は、設立30周年を迎える老舗レーベル〈R&S〉から、3月23日(土)に遂にリリースされる。

彼らはこれまでに、〈R&S〉より2枚のEPを発表。海の彼方にヘリコプターが見えるジャケットが印象的な「Sauna EP」は、2010年12月のリリース。そして、2011年7月には、2nd EP「nyc stuff and nyc bags」を発表。打込みを効果的に使いながらも、彼らならではのドラマティックで暖かなサウンドは、この2枚の時点で完全にその世界観を確立している。最新作のタイトル “シーベッド” は「海底」という意味合い。まるで、深い静寂に包まれた海の底から、海面に差し込む光を眺める映像が浮かび上がってくるようであり、ローファイでレイドバックしたサウンドが全編に流れ、柔らかでロマンティックなトラックが散りばめられている。また特に注目したいのは “California Analog Dream”。もともとはオリジナルが「Sauna EP」に収録されている曲であるが、当時の2ステップ・ビートをベースとした疾走感のあるチルウェイブ・トラックが、最新作では生ドラムやハーモニカ・ラインが加えられ全く新しい曲に生まれ変わり、タイトなドラミングによって柔らかなグルーヴが曲全体を包み込んでいる。この2年間の彼らの歩みを表しているような素晴らしいアレンジだ。

「このレコードには、閉ざされた感情が沢山含まれている。若い時に感じるフィーリングとか、恋をしている時に感じるフィーリングとか」とレインズバリーは語る。まさにその言葉通り、このアルバムを深く聴けば、誰もが心に持っている様々な感情が自然と溢れ出てくるかもしれない。ロック、ダブステップ、チルウェイブ…全てのミュージック・ラヴァーを優しく包み込むようなこの作品は、何年経っても色褪せないであろう、不思議な魅力を携えている。今最も愛すべきベッドルーム・ミュージックが、ここに誕生した。

(Yasumasa Okada[DESTINATION MAGAZINE])

Release Information

2013.03.23 on sale!
Artist:Vondelpark(フォンデルパーク)
Title:Seabed(シーベッド)
R&S Records / Beat Records
BRC-371
¥1,980(tax incl.)
日本盤ボーナストラック付

Track List
01. Quest
02. Blue Again
03. Dracula
04. Come On
05. Always forever
06. California Analog Dream
07. Closer
08. Seabed
09. Bananas (on my biceps)
10. Outro 4 Ariel
11. Stop Fake Shoot ※
12. Heavyweights ※
※日本盤ボーナストラック付