7月24日(金)、25日(土)、26日(日)の3日間にわたり、新潟・苗場スキー場で開催された<FUJI ROCK FESTIVAL ’26>(以下、フジロック)。Qeticでは、会場で出演アーティストへのインタビューを実施。今回は、25日深夜のRED MARQUEEにDJセットで出演した、オランダのエレクトロニック・デュオ、ウィーヴァル(Weval)のインタビューをお届けする。
アムステルダムを拠点に活動するHarm CoolenとMerijn Scholte AlbersによるWeval。2013年のデビュー以降、アナログの温かみと緻密なサウンドデザインを融合させ、内省的なエレクトロニカからサイケデリック・ポップ、ダンス・ミュージックまで、ジャンルの境界を軽やかに行き来してきた。
2025年には、“踊ることへの恐れ”を意味する4作目のアルバム『CHOROPHOBIA』をTechnicolourよりリリース。これまでどこか距離を置いてきたダンスフロアへと、あえて正面から踏み込んだ。初来日、初フジロックとなる深夜のDJセットを目前に控えた2人に、作品名に込めた思い、ライブとDJセットの違い、観客とグルーヴを作り上げるプロセス、そして日本で感じたことについて聞いた。
INTERVIEW
Weval

──今回が初来日、そして初のフジロックです。深夜のRED MARQUEEでのDJセットを前に、今はどんな気持ちですか?
Harm Coolen: フジロックのことは以前から知っていて、ここで演奏することは、文字どおり僕たちの夢でした。だから、実際に今ここにいられることが本当にうれしいです。
日本を訪れるのも今回が初めてで、まるで新しい世界が目の前に開けていくような感覚があります。ヨーロッパにいた頃から断片的に知っていた日本文化のさまざまな要素が、実際に来てみると、急にひとつにつながっていくんです。「なるほど、こういうことだったのか」と腑に落ちていく。その感覚を味わえるのが、本当に素晴らしいです。
今夜のDJセットが待ちきれません。
──最新作『CHOROPHOBIA』は、“踊ることへの恐れ”を意味する言葉です。このタイトルは、どのように生まれたのでしょうか?
Harm Coolen: 『CHOROPHOBIA』は、文字どおり「踊ることへの恐れ」という意味です。制作を進めるなかで、自分たちは音楽のダンス寄りの側面に本気で踏み込むことを、どこか怖がっていたのだと気づきました。
エレクトロニック・デュオなので、これまでもシンセサイザーやビートは使ってきました。でも、真正面からダンス・ミュージックを作ることは、どこかで避けてきた。エレクトロニック・ミュージックをやっている2人にしては、少し面白い話ですよね。
もともと僕たちは、ジャンルを強く意識するタイプではありません。けれど、今回の作品について話しているうちに、若い頃は2人とも、実際に踊ることそのものにも少し苦手意識があったと気づいたんです。そうした話が重なって、このタイトルにたどり着きました。

──ライブセットとDJセットでは、オーディエンスへの向き合い方も変わりますか?
Merijn Scholte Albers: DJセットは事前にある程度準備できますが、同時に、その場にいる人たちが何を求めているのかを探る必要もあります。
僕たちは日本で演奏するのが初めてなので、今夜どんな反応が返ってくるのか、僕たち自身にもまったく分かりません。それも含めて、大きなサプライズになると思います。
曲はたくさん用意してきましたが、実際の流れはオーディエンスの反応を見ながら決めて、一緒にいい時間を作っていきたいです。
ライブセットの場合は、たくさんのシンセサイザーを並べて、自分たちの曲だけを演奏します。鍵盤を弾き、歌い、ドラムマシンでジャムをしながら、すべてをその場で組み立てていく。そこがDJセットとの大きな違いですね。

──DJセットのなかで、ダンスフロアと最も強くつながれたと感じるのは、どんな瞬間でしょうか?
Harm Coolen: ライブ開始直後はいつも少し緊張します。
単独公演なら、オーディエンスはチケットを買って僕たちを観に来てくれているので、会場には最初からある程度の熱量があります。一方、フェスティバルのDJセットはもっと自由です。たまたま立ち寄る人もいれば、友人と話したり、パーティーを楽しんだりしながら聴く人もいる。
だから、最初の1、2曲だけは大まかに決めておいて、そこからフロアの反応を見ながらグルーヴを作っていきます。
やがて、みんなが音に意識を向けながら、同時に自然と踊り始める。フロア全体に、ある種の集中が生まれるんです。その瞬間に、オーディエンスとつながれたと感じます。
そこまでいけば、こちらも安心して、少し大胆な選曲ができるようになる。例えば、とんでもなくポップなフックを入れた、僕たちのエディットをかけてみるとかね(笑)。
「これならいける」と感じられたときに、今夜はきっと楽しくなると分かるんです。

──日本の文化や習慣で、オランダにも取り入れてほしいと思ったことはありますか?
Harm Coolen: たくさんありますが、ひとつ挙げるなら、人と人との距離感に敬意があって、みんなが静かに過ごしていることです。
街にはあれだけたくさんの人がいて、慌ただしく動いているのに、全体の音量は驚くほど低い。とても落ち着いていて、僕にはその空気がすごく心地よく感じられました。
Merijn Scholte Albers: 僕も、人々がとても礼儀正しいと感じました。特に地下鉄ですね。
日本ではきちんと列に並んで、降りる人を待ってから電車に乗りますよね。オランダでは、みんながあそこまできれいに並ぶわけではなく、降りる人と乗る人が入り交じってしまうこともあります。日本とオランダの違いがよく表れている例だと思います。
それから、改札の扉が普段は開いていて、カードなどに問題があるときだけ閉まる仕組みも面白いですね。オランダでは逆で、普段は閉まっていて、正しいカードを使ったときに開く。発想がまったく反対なんです。

──好きな言葉、あるいは座右の銘を教えてください。
Merijn Scholte Albers: 少し照れくさい言葉ですし、日本語でどう伝わるか分からないのですが、オランダ語に「Ga naar waar de liefde is」という言葉があります。
日本語にするなら、「愛のある場所へ向かいなさい」という意味でしょうか。
どちらへ進めばいいか分からなくなったときは、ほかのものではなく、愛を感じられるほうへ向かう。その道を選ぶことが、いつも自分を助けてくれると思っています。
Harm Coolen: いい言葉だね。実は今まで知らなかった。今日、初めて覚えました(笑)。
──最後に、日本の音楽ファンへメッセージをお願いします。
Harm Coolen: Merijnが今話した「愛のある場所へ向かう」という言葉が、そのまま僕たちからのメッセージになるかもしれません。
今回、日本に来ることができて、本当に素晴らしい時間を過ごしています。フジロックが終わったあとも少し日本に滞在するので、これからもっとこの国のことを知り、いろいろな人に会いたいと思っています。
日本の皆さんに会えることを楽しみにしています。温かく迎えてくれて、本当にありがとうございました。

Photo by Kazuma Kobayashi
Film by Itaru Sawada
Interview by Qetic