日本にもすっかり音楽フェスティバルが増えたとはいえ、ヨーロッパ全土でのその数とは比較にならない。<WF>で話した誰かが、「オランダだけでも年間200のフェスティバルがあるんだよ」と言っていたけれど、筆者の住むベルリン及びその近郊で個人的に把握出来るだけでも相当な数があるので、かなり信憑性の高い数字だと思う。ではヨーロッパ全体では一体いくつあるのだろうか!? かなり前から格安航空会社が普及しているので、日本なら<Fuji Rock Festival>に行くような感覚と予算で、学生でも隣国のフェスティバルに遊びに行く。その規模も様々で、13万人規模の<Glastonbury>のようなものから、会員登録制の数百人規模のもの、あるいはもっと小さな野外パーティーのようなものもある。つまりどういうことかというと、音楽好きにとって、「どのフェスティバルに行くか?」は夏の計画を立てる上で重要なポイントとなる。
では、その中から<WF>を選ぶ理由は何か。それを考えた時に自ずと<WF>の特徴と魅力が明らかになる。
まず第一にジャイルス・ピーターソンによる音楽プログラム。彼のラジオ番組やDJプレイを聴いたことがある方ならお分かりだと思うが、彼の対象範囲は非常に広い。モダンジャズ、フリージャズ、ジャズファンク、ラテン、ブラジル、アフリカその他ワールドミュージック、ハウス、ディスコ、ドラムンベース、ダブステップ、ヒップホップなど、オーガニックなグルーヴを持つ音楽全般だが、そこには不思議と「GP印」とでも呼ぶべき一貫したテイストとクオリティの高さがある。<WF>の来場者は筆者自身を含め、この「GP印」に絶大な信頼を置いている。実際に、毎年ラインナップには全く知らない名前もある。でも実はそこがフェスティバルの醍醐味の一つで、好きなアーティストを特別な環境で聴くというだけでなく、新たな音楽や才能の発見があること。これこそがフェスティバルに行く意義ではないかと思う。
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