第二がセットという町の魅力だ。昨年のレポートには会場のロケーションの良さに触れたが、今回行って感じたのは「会場だけではない」ということ。セットは特別な観光名所がたくさんあるようなところではなく、ラグーンを挟んで本土から少し離れた島のようになっている。町の中心部には運河が流れ、水に囲まれたひっそりとしたリゾート地。筆者は(昨年同様、意外と近い)バルセロナから電車で行ったのだが、ラグーンに沿って走る車窓からの眺めで既にときめいてしまう。観光客が大挙して来るようなところではないので、大型バスや大型リゾートホテルに視界を遮られるようなことはないし、客引きや勧誘に煩わせられることもない。のんび~りしているのだ。それに食べることが大好きな日本人にとってめちゃくちゃ嬉しいのは、新鮮な魚介類と豊かな食文化!通常フェスティバルでは「食」の優先順位は下がりがちだが、<WF>の参加者は食べる気満々で来る!生牡蠣、ムール貝、あさり、マテ貝などの貝類、イワシや手長海老も豊富で美味しく、適当なお店に入ってもかなりレベルが高い。タコが名物らしく、町の中心部にタコの銅像(!)があり、ティエルというタコのトマト煮を詰めたパイが名物郷土料理。飲み物はいつも冷えたロゼ・ワインを一緒に。
第三に、これはジャイルス・ピーターソンのまさしく「ワールドワイド」なアプローチの賜物だと思うが、フェスティバル全体から伝わるオープンさと温かさ。フランス語も堪能なジャイルスの二ヶ国語による絶妙な名司会で、おそらく半数を占めるであろう地元フランスのお客さんとUKを中心とした各地からの来訪者との温度差もなく、同じくフランス語堪能なロンドンのDJでプロデューサーとしてもジャイルスの運営する<Brownswood>の作品を始め多方面で活躍するシンバッドと、ブリュッセル出身のレフトがジャイルスの「右腕」のように各会場で様々なサポートを務めていたのも印象的だった。彼らはここ数年毎年出演しているレジデントのような存在。毎年ラインナップは入れ替わるものの、何度も呼ばれるアーティストも多く、マーラ、ベンジー・Bそれに松浦俊夫も常連のお客さんにはお馴染みの<WF>ファミリーだ。筆者もまだ二度目ながら、「また来たね!」という感じで歓迎してもらえて、自然と「また戻ってきたいな」と思わせてくれるのである。これがリピーターの多いこのフェスティバルの最大の魅了ではないだろうか。
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