晴天に恵まれた絶好のビーチ日和となった木曜は、夕方5時半から2時間マーラが唯一無二のヘヴィーナダブステップをプレイ。”Chnages” や ”Forgive” といった代表曲も織り交ぜながら、いい意味でいつもの「マーラ節」のブレないセット。昨年以上に低音が効いているように感じられた、砂浜の上に設置されたサウンドシステムから轟くダークなサウンドは新鮮な体験だった。ダブステップというと、普段は真っ暗なところでうつむきがちに聴くことが多いが(笑)、青空を仰ぎながら白い砂浜で聴くのもまた格別。もともとレゲエのサウンドシステム・カルチャーから派生した音楽だということを考えれば納得だ。そういえば、ベース系音楽最大のフェスティバルである<Outlook>もクロアチアの海辺で開催されている。マーラはセットの最後をボブ・マーリーの “Could You Be Loved” で締めくくり、フロアが大合唱になっていたのが良かった。そして夜の部の最後は、何と0時から3時間ロニ・サイズ、クラスト、ダイナマイトMCによる怒涛のドラムンベース・タイム!日本では2000年代以降かなりニッチになってしまったドラムンベースだが、UKではバリバリ健在。野外レイヴやフェスティバルでは必ずピークに聴こえて来る。UKのお客さんも多く、(筆者含め)90年代にドラムンベースを通過している世代が多いからか、これは最高に盛り上がった!筆者が彼らのプレイを見るのは2000年の<Fuji Rock Festival>以来……あの時と変わらぬパワーとサウンド。でも古さは全く感じられず、むしろ一周して再びフレッシュに感じた。マーラも終始ブースの脇で彼らのプレイを楽しんでいたところに、脈々と受け継がれるベース・ミュージックの歴史を垣間見た気がした。
筆者にとって最終日となった金曜日は、ラブリーなキャラクターでWorldwideファミリーのマスコット的な存在であるダイメ・アロセナのコンサートがハイライトだった。<Brownswood>から新譜『One Takes』を放ったばかりの、まだ若々しいキューバの女性ジャズ・シンガー。去年は初々しさが可愛かったが、今年は格段に成長した気がした。合間の英語MCも上手くなったし、何よりステージでの立ち振る舞いが堂々としていてディーヴァの貫禄!中でも後半に平和への願いを込めて、その伸びやかな声で歌った、ファラオ・サンダースの “The Creator Has A Master Plan” のカバーで、「The creator has a master plan, peace and happiness for every man(神には基本計画がある、平和と幸福を全ての人に)」と何度も繰り返していたのが胸を打った。誰もが世界各地で起こっている、耐え難い暴力と憎しみの連鎖に心が折れそうになっている現在。だからこそ、言語や文化の違いを超える音楽の力は尊い。キューバからはるばるやってきて、ロンドンのレーベルから作品を出し、世界をツアーして回っているダイメ。その後のレフトとDJネイチャーのDJプレイも素晴らしいものだったが、ダイメのピュアで濁りのない歌声とまっすぐなメッセージは、未来に希望の光を差し込んでくれたようで、私にとっては申し分のないフェスティバルのフィナーレとなった。
photo by Pierre Nocca