音楽界の魔術師=ジャイルス・ピーターソンって?
数々の気鋭アーティストをその審美眼(耳)によって送り出してきたイギリスのカリスマ・ラジオ・プレゼンター、ジャイルス・ピーターソン。過去にベン・ウェストビーチやホセ・ジェイムズを発掘し、昨年でいえば、ダブステップ・シーンの第一人者であるMALAをキューバ音楽と引き合わせ、傑作『MALA IN CUBA』誕生を契機づけた功績でもよく知られているだろう。そもそもそうした活動以前に1998年より開始したラジオプログラム「WORLDWIDE」を通じて、新たな音楽の発見と紹介を行い、シーンの潮流に多大な影響を与え続けているという点で、彼は偉大な存在といえる(このラジオプログラム「WORLDWIDE」は一時期、日本でもJ-WAVEを通じて放送されていた)。
<WORLDWIDE SHOWCASE>が今年も開催!
そんな彼がここ日本において、J-WAVEとタッグを組み、毎年開催している音楽の祭典が<WORLDWIDE SHOWCASE(以下:WWS)>。今回で実に7回を数える<WWS>だが、このイベントにおいて、ジャイルスはDJセットをプレイする傍ら、司会進行を務めている。彼のキュレートにより集められた国内外の旬なアーティストたちが、この日ならではのステージを披露するというだけでもスペシャルだが、豊富なトピックを散りばめながら、ひとつのテーマに沿って首尾貫徹、飽きさせることなくひとつのエンターテインメント・プログラムとしてのショウケースを成り立たせているということが、ひいてはジャイルスをラジオ・パーソナリティーとしても特別な存在にしている。
豪華ラインナップ集結。<WWS13>の見所は?
さて今年の<WORLDWIDE SHOWCASE 2013(以下:WWS13)>を彩る出演アーティストを紹介したい。まずは、上半期を席巻したダフト・パンクのムードを牽引した傑作セカンド『Troubadour』を名門〈STONES THROW〉より上梓したステップキッズ。アリシア・キーズや50セントのバックも務めた超一流の演奏力を持つ彼らが新作からどんなパフォーマンスをするのかに期待が高まる。次に、ガリアーノ、トゥ・バンクス・オブ・フォー、アール・ジンガー・・・と90年代より活動の形態を変えながらも、今なおシーンをリードしてきたジャイルスの盟友=ロブ・ギャラガーが新たなプロジェクトWilliam Adamsonをスタート、現在リバイバルの機運にあるアシッド・ジャズに新たな息吹を吹き込むこの新プロジェクトが遂に<WWS>でヴェールを脱ぐ。そして、日本が誇るDJ/プロデューサーJazztronikが普段とは全く異なる、ストリングスを加えたバンド編成でライブを披露。前述のロブ・ギャラガーも参加するこの編成は決して他では見られない豪華なセットになるだろう。
さらには、クラブ・シーンにおける「ジャズ」の再発見を世界に示した松浦俊夫が指揮をとるニュー・プロジェクト、HEXの初ライブが、ゲストボーカルにEGO-WRAPPIN’の中納良恵を迎えて行われる。〈BLUE NOTE〉より11月20日(水)にリリースされるアルバムでは、ジャズを先鋭的なサウンドで最解釈、オリジナル曲はもちろん、客演に中納とエヂ・モッタ、グレイ・レヴァレンドを招き、同レーベルの有名曲をカバーするなど、初ライブとなるこの日、一体どんなステージングを見せるのか、要注目である。さらに特筆すべきは、出演者全員によるセッションで“Tokyo Blues”をプレイすることが決まっているということ! どこをとっても見所だらけのこのイベント、当日一体どんなマジックが起こるのか、是非ともあなた自身の目で確認してほしい。
(text by Yu Nakazato)