ナット・チミエルによるプロジェクト=ユール(yeule)が自身にとって3枚目、〈Ninja Tune〉契約後としては初となるアルバム『softscares』を9月22日(金)にCD、LP、デジタル/ストリーミング配信で世界同時リリース。LPはマーブル・グレイ・ヴァイナルの通常盤と、ホワイト・アンド・ブルー・スプラッター・ヴァイナルの限定盤の2形態で発売される。
ギターサウンドをフィーチャー、岩井俊二監督『花とアリス』サウンドトラックのカバーも
シンガポール出身で現在はロサンゼルスを拠点に活動しているアーティストのナット・チミエルによるプロジェクト=ユール。壊れたコンピューターコードやエラーメッセージをテーマにした2022年リリースの前作『Glitch Princess』は、バーチャルとリアル双方で発生する様々なエラーやバグをノイズやファンタジックな音色を使って表現。チャーリー・XCX(Charli XCX)やキャロライン・ポラチェック(Caroline Polachek)などのプロデュースを手がけてきたダニー・L・ハール(Danny L.Harle)などと共に作り上げた新感覚のエレクトロポップサウンドが高く評価され、PitchforkでBest New Albumを獲得するなど、ユールの表現者としての覚醒の瞬間が収められた会心作と言える内容だった。
そこから約1年という短い期間を経て早くも届けられた最新アルバム『softscares』では、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(My Bloody Valentine)やヨ・ラ・テンゴ(Yo La Tengo)、スロウダイヴ(Slowdive)などのバンドに大きな影響を受けたというユールのギターサウンドへの愛や熱が今作のサウンド面でのキーとなっていて、重たく難解な内容が多い楽曲に寄り添いながらその想いをエモーショナルに浄化させるポジティブなバイブスが作品全体を包んでいる。アコースティックな質感も交えた歪みの効いたシューゲイズサウンドと、近未来感漂うサイバーなエレクトロサウンドが同居した響きは、どこか懐かしく得も言われぬカタルシスを生み出している。
ユールと度々コラボしている「シンガポールのアンビエント・ボーイ」と称されるキン・レオン(Kin Leonn)が全編に渡り携わっており、さらにイヴ・トゥモア(Yves Tumor)やヤングブラッド(YUNGBLUD)などをプロデュースしているクリス・グレアッティ(Chris Greatti)、そして前作アルバムに引き続きムラ・マサ(Mura Masa)がプロディースおよびギターやベース、ドラムの演奏でも参加している。前作にTohjiが参加していたり、楽曲に日本のアニメや駅のホームの音声を使用するなど、日本との繋がりもユールの作品を形成する重要な要素の一つだが、今作でも岩井俊二監督の映画『花とアリス』サウンドトラック収録の“fish in the pool”をカバーしており、日本のカルチャーからの大きな影響が窺い知れる。
私たちはいつも沈黙させられ、この世界のあらゆるものから見放されているように感じる。これを着るな、あれをするなと人はいつも言う。でもあなたがそれを障壁と思わなくなったとき、あなたの生涯は花開く気がするの
yeule