Chapter.1:ジャパニーズインスト近代史

年のジャパニーズ・インストシーンでは、個性豊かなバンドが至る場所で自然発生中。フェスへの出演、歌モノバンドとの対バン機会の増加などにより、以前と比べて、インストバンドが市民権を獲得してきた印象がある。

シーンとして成熟期を迎えつつある最中、12月11日(水)に1stミニアルバム『neandertharloid』をリリースするヨソハヨソ、18日(水)に2ndアルバム『Haiku Days』をリリースするjohannという2つのバンドを紹介したい。両者についてはChapter.2で作品レビューを綴っているので、ここでは近年のジャパニーズ・インストシーンには、どんな特徴があるのかを紹介していこう。

まず、両バンドに共通する“インストゥルメンタル”という広義な意味で押さえておきたいバンドは、やはりtoeだろう。全身全霊、感情剥き出しのエモーショナルな演奏が胸を打つtoeは、名実ともにジャパニーズ・インストシーンの頂点に位置するバンドだ。<FUJIROCK FESTIVAL 2012>では最大40,000人を収容するGREEN STAGEに出演。海外ツアーは軒並みソールドアウトを記録、CMへの楽曲提供と、その活動はオーバーグラウンド、アンダーグラウンド、そして国内外の壁を越えて認知されている。toeだけを生業としないという活動スタンスも含め、バンドのひとつのモデルケースとして、彼らに憧れるフォロワーが後を絶たない。

【特集】ジャパニーズ・インストシーンのホープ、ヨソハヨソとjohann。シーンのトレンドを交え、両者の魅力を徹底レビュー! feature131209_inst_toe
toe

インストバンドを掘り下げるひとつのきっかけとして、toeと関係性のあるバンドを追ってみるのもいいだろう。例えば、レーベルメイトの間柄にあるmouse on the keysは、映像や風景と高い親和性を持つインストバンドだ。2台の鍵盤と1台のドラムによる編成で、ミニマルかつタイトな楽曲を繰り出し、ライブではその世界観を映像とともに表現することもしばしば。コンテンポラリーアートとの親和性を感じさせ、toeと同じく海外でも広く認知されている。また、ファッション、カルチャーなど、音楽周辺のカテゴリーと自由にクロスオーバーできるのも、インストバンドの魅力のひとつ。ホテルニュートーキョーはその最たる例だろう。アーバンでメランコリックなサウンドでクリエイターからの支持を集め、最近ではデザインホテルを利用したライブやファッションショーでの演奏など、独自の活動を展開している。ニュートラルに様々なジャンルの垣根を越えることができる音楽。それがインストゥルメンタルの醍醐味のひとつなのだ。

【特集】ジャパニーズ・インストシーンのホープ、ヨソハヨソとjohann。シーンのトレンドを交え、両者の魅力を徹底レビュー! feature131209_inst_mouse-on-the-keys
mouse on the keys

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SPECIAL OTHERS

演奏という側面では、SPECIAL OTHERSのように、ライブごとに異なるアレンジで楽曲を披露するのもインストバンドならではのアプローチだ。セッションやアドリブといった楽曲を忠実に再現しない即興性の高い表現は、足繁くライブに通いたくなる欲求を自然と駆り立ててくれる。さらにSPECIAL OTHERSの場合、前述のバンドと異なるのは、インストながらコーラス入りの楽曲が多い。耳なじみの良い特徴的なメロディー、そこに誰でも口ずさめる簡単なコーラスが合わさると、まさに鬼に金棒だ。これは無論、他のインストバンドが踏み込めない領域。日本武道館でのワンマンライブ、Blue NoteとBillboardを舞台にしたツアーも大成功させたことからも、彼らがメジャーで長きにわたって活動し続けているのも頷ける。

歌モノの魅力は否定しない。けれども、もしあなたに「歌が入っていない音楽は聴かない」というポリシーがあるならば、それはとても残念なことだ。音を楽しむと書いて”音楽”。生身の人間から湧き出る音に身を預けることで、気付けば体が反応したり、ときに笑顔になったり、涙腺が緩んだり。音楽の本質のひとつを突いた素晴らしいバンドたちに触れることで、あなたの世界はもっともっと広がってゆく。

Chapter.2:ジャパニーズインストシーンのホープ