『ANYWHERE』制作時に聴いていた10枚のレコード

旅先での制作時に、小谷には好んで聴いていた10枚のレコードがあるという。参考までにそのタイトルを並べてみると、アルーナジョージ『ボディ・ミュージック』、クウェズ『イルプ』、ディーン・ブラント『The Redeemer』、ロミュアルド『I’ve Found』、DJ Koze『Amygdala』、シュローモ『Laid Out』、ジャスティン・ティンバーレイク『20/20エクスペリエンス 2/2』、ソン『Bloodflows』、ケレラ『Cut 4 Me』、ヴィック・メンサ『Innanetape』。その特徴はR&B寄りのダンスミュージックが多いことだ。この全てが『ANYWHERE』のイメージソースとなり、アルバムの制作に影響を与えている。

とはいえ最も大きかったのは、やはり海外旅行客として普段と異なる毎日を過ごしたことだろう。海外で体験する時間が特別な記憶として刻まれるのはもちろんのこと、10都市で20日間の録音(単純計算して1都市あたり2日間の短期滞在)ということから、その結果として『ANYWHERE』は、刹那的でプリミティブな作品に仕上がっている。部屋のデスクに向かって、あるいはベッドに寝転がりながらなのか。一日の終わりに、その日の記憶を辿りながら作られた楽曲たちは、極めてロマンティックでリラックスしたムードを帯びている。もし、日本で上記の音楽に触れながら制作していたとしても、きっと同じアウトプットにはならなかったはずだ。

YOSUKEKOTANI“CTY”

いつまでも色褪せない瑞々しさ

旅然り、肩の力を抜いて思いつくままに奏でるベッドルームミュージックの要素は、今後のYOSUKEKOTANIのキーワードとなるのかは分からない。けれども、ソロになってもHARVARDの専売特許ともいえる、耳当たりのいいメロディーと心地いいアレンジは変わらず受け継がれている。

そして、アルバム1枚を通して聴いて思うのは、僕がHARVARDに感じてきた、いつまでも色褪せない瑞々しさは、『ANYWHERE』というタイトルにも通じるのかもしれないということ。いつでも、どこでも、毎日のように再生ボタンを押したくなる音楽がここにある。

(text by Shota Kato[CONTRAST])


Release Information

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