記録のレイヤーがよみがえらせる、GOMAの生きた証
第25回東京国際映画祭にてコンペティション部門観客賞を受賞し、あの巨匠ロジャー・コーマンも大絶賛したという日本映画『フラッシュバックメモリーズ 3D』が、いよいよ今週末から全国公開される。この作品はひとりの人間を追ったドキュメンタリー・フィルムでもあり、臨場感あふれるライヴ・ムービーでもあり、とある家族の愛の物語でもある。
Qeticの読者であれば野外フェスなどでその名前をご存知かもしれないが、日本を代表するディジュリドゥ奏者・GOMAは、2009年11月26日に首都高速で追突事故に巻き込まれた。その後、記憶の一部が消えてしまったり、新しいことを覚えづらくなるという高次脳機能障害の症状が後遺し、後にMTBI（軽度外傷性脳損傷）と診断される。本作では、ディジュリドゥが楽器ということさえ理解できないほど記憶を失いつつあったGOMAが、リハビリを経て回復していく過程を妻すみえの日記と共に追憶。そこに突如飛び込んでくる症状「フラッシュバック」を（GOMA直筆の絵を元にした）アニメーションで表現し、渋谷WWWで撮影されたスタジオ・ライヴの模様と、手持ちカメラによるドキュメンタリー映像を交錯させることで、観客は従来の3D映画とはまったく違った映像体験を味わうことになる。
監督を務めたのは、『童貞。をプロデュース』（2007年）や前野健太のドキュメンタリー映画『ライブテープ』（2009年）などで知られる松江哲明。「3Dをパーソナルな表現として捉え、立体感や奥行きをレイヤーとして認識する必要があった」とWebサイトで語っているように、この『フラッシュバックメモリーズ 3D』では単なる視覚表現としてではなく、被写体の深層心理にまで踏み込んだ3D手法にトライしているのだ。GOMAは本作の撮影時のことも覚えていないそうだが、「現在（いま）」を刻み込んだ映像や日記の「記録（過去）」を通して、我々はGOMAの生きた証を「記憶」する。そして、鑑賞後は実在するGOMAの新しい人生＝未来を同時代に生きることができる。『I Believed the Future.』――映画や3Dの既成概念をぶち壊す革命的な1本を、ぜひ劇場で！
（text by Kohei Ueno）
『フラッシュバックメモリーズ 3D』
1月19日（土）より、新宿バルト９他、全国順次公開！
監督：松江哲明 出演：GOMA&The Jungle Rhythm Section
配給・宣伝：SPOTTED PRODUCTIONS
製作・宣伝：SPACE SHOWER NETWORKS INC.
(C)2012 SPACE SHOWER NETWORKS INC.
『フラッシュバックメモリーズ 3D』公開記念
松江哲明特集上映『FLASH BACK 1999→2012』
劇場：オーディトリウム渋谷（連日21:10～）
●2月09日（土）上映作品
フラッシュバックメモリーズ3D公開記念 密林大陸〜トーク
（フラッシュバックメモリーズができるまで）
●2月10日（日）上映作品
初期傑作選 『あんにょんキムチ』『カレーライスの女たち』
●2月11日（月）上映作品
AV傑作選 『前略、大沢遥様』『双子でDON!』
●2月12日（火）上映作品
ガンダーラ映画祭セレクション『童貞。をプロデュース』『セックスと嘘とビデオテープとウソ』
●2月13日（水）上映作品
PV／音楽映画 川本真琴『アイラブユーって聞こえる』『ライブテープ』
●2月14日（木）
松江哲明のお蔵出し『アブコヤワ』『極私的神聖かまってちゃん』
●2月15日（金）上映作品
震災後の松江哲明 『トーキョードリフター』『シークレット作品』
