新潟・燕三条エリアのものづくり産業と文化をアピールする<JRE Local Hub 燕三条 in Tokyo Station>が、2024年9月2日~8日に開催。第1回の昨年に引き続き、今年もJR東京駅構内の「スクエア ゼロ」で行われたイベントの模様と、地域産業の発展を目指す人々の思いを報告する。

燕三条の「おもしろそう」な間口をつくりたい

<JRE Local Hub 燕三条 in Tokyo Station>は、2023年2月にJR燕三条駅構内で開業した、エリアや世代を超えて燕三条地域の技術と人々をつなぐ地方創生型ワークプレイスの「JRE Local Hub 燕三条」を、名称そのままにJR東京駅で展開するイベントだ。

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出張に当たっては、オンラインで商談ができるサービスや、燕三条エリアの企業情報が掲載された燕三条企業図鑑など、「JRE Local Hub 燕三条」が有する機能の移動だけでなく、昨年から5倍以上増えた出展企業による展示即売会も付加された。その他にも、三条市のふるさと納税の紹介や、職人によるデモンストレーションなど、随所で燕三条エリアの製品に触れてもらう趣向が凝らされていた。

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会場は、JR東京駅構内地下1階の「スクエア ゼロ」。イベントスペースとされているが、路線の乗り換え用に留まらず、地下1階のレストランやショップを行き来する通路に面しているので、東京駅を利用する不特定多数の目に触れる空間と言ったほうが正しいかもしれない。それゆえ、職人が金属を打つ作業デモンストレーションの音に、通りすがりで興味を引かれた人は少なくなかっただろう。

「ああやって立ち止まって見ている若い人。あの存在が大きいんです」

これは、通路を見やった齋藤和也さんのつぶやき。齋藤さんは、本イベントの主催団体の一つである株式会社ドッツアンドラインズの代表だ。会場内で多忙の隙をつかまえて話を聞いた。

「我々が今もって続けているのは、燕三条エリアを知ってもらうことですが、大事なのは間口の拡大です。間口があれば人は入ってきますから。東京駅でイベントをやる意味はそれに尽きますね。しかもここなら、『おもしろそう』というシンプルな感覚だけで来てくれる。だからまずは、燕三条のおもしろそうな製品に興味を持ってくれる人を増やしたいんです。その中には、影響力を持つインフルエンサーやユーチューバーがいるかもしれません。潜在的なお客さんと出会えるチャンスも、この東京駅での開催に期待している部分です」

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株式会社ドッツアンドラインズ代表 齋藤和也氏

行政の信用とインフラの強みが一体となった燕三条のPR

開催初日の9月2日には、このイベントを株式会社ドッツアンドラインズと共催したJR東日本新潟支社の白山弘子支社長と、三条市の滝沢 亮市長も訪れた。午後3時45分から始まった開会式では、各々挨拶の言葉を発し、記念のテープカットが行われた。

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支社長と市長には別途インタビューの時間をいただいた。その内容を以下に記すが、両名ともに聞きたかったのは、地域を飛び越えたイベントの意義について。では、先に滝沢市長から。

「今日は燕三条駅から上越新幹線で東京駅まで来て、まだ改札の外に出ていないという珍しい状況ですが、地域を紹介する大規模な催しをのぞけば、市長としてこういう形のイベントに参加させていただくのも稀なケースになります。ですが、燕三条エリアをPRできるなら、可能な限りどんな場所にも足を運びたいと思います、何よりもドッツアンドラインズの齋藤さんたちの精力的な活動は応援せずにいられません。それを行政がサポートすることによって、JR東日本を交えた地域活動の信頼性が高まると理解しています。その一助になればと思い、本日ここに参らせていただきました」

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新潟県三条市長 滝沢亮氏

続いて白山支社長。市長と同様の質問を提示したが、同じJR東日本とは言え、新潟支社による首都圏のイベント開催が単純に興味深いと伝えてから話をうかがった。

「私どもの最大の強みは、移動です。燕三条駅で実施している“JRE Local Hub 燕三条”を東京駅でも紹介するのは、その移動という強みを最大限に生かす形になります。以前から、“JRE Local Hub 燕三条”をより多くの人が集まる場所で見てもらいたい思いがありました。であればJR東日本の城であり、世界に向けた日本の陸の窓口でもある東京駅でPRするのが最善です。東京駅を利用する方々に燕三条を知ってもらう機会をつくること。それは移動がもたらす価値でもありますから、このイベントが燕三条の素晴らしさを思う存分アピールできる場になればと思います」

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JR東日本新潟支社長 白山弘子氏

“真のメイド・イン・ジャパン”を

今回の記事を読んで、燕三条エリアに興味を持ってくれた方にはこんな情報を紹介したい。

今年で12回目となる「燕三条 工場の祭典」が、2024年10月3日~6日に開催される。工場を「こうば」と読むこのイベントは、普段は公開されていない燕三条エリアの工場見学やものづくり体験などができる、地域を挙げた一大フェスティバルだ。今年の特徴を、<JRE Local Hub 燕三条 in Tokyo Station>で告知を担当していた祭典監事の熊倉正人さんにたずねた。

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「燕と三条それぞれの商工会議所による共催となり、これまで以上に地域に根差した組織で活動できることになりました。加えて工場の祭典は、出店108社を6つのエリアに区切っていますが、その各エリアが独自のPR企画を練ってくれています。10回以上開催してきて、参加する工場にも学びがあると気付いてくれたおかげです。今年から始まった取り組みは、祭典に足を運んでくれた方々を満足させるものになると信じています。東京駅から上越新幹線で1本ですから、ぜひ燕三条に遊びに来てください」

食器、酒器、カトラリー、包丁、斧、玩具、食品……。バラエティに富んだ製品展示が功を奏する形で、会場の人波は途切れることがなかった。ここで再び齋藤さんにご登場いただき、初日ながらイベントの感想を聞いてみた。

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「日本の製造業に関わるすべての人が口にするのは、メイド・イン・ジャパンへの原点回帰ですが、僕はその先の“真のメイド・イン・ジャパン”をつくりたいです。それは、クラフテッド・バイ・燕三条。つくった地域を刻んでいくことで、世界に訴えかけたい。クラフテッド・バイを謳える地域は日本中にたくさんありますから、それら地域の力が凝縮した製品を集めたアンテナショップが全国の主要都市にできたら最高でしょうね」

2020年10月に信越本線帯織駅で開設したものづくり支援施設の「EkiLab帯織」に始まり、一般公募のアイデアコンテストである「EkiLabものづくりAWARD」の開催。そして「JRE Local Hub 燕三条」の開業と、今回で2年連続となる東京駅でのイベント。それら様々な形態をとりながら着実な拡張を遂げてきたドッツアンドラインズの代表にとって、現時点の目標達成率はどの程度なのだろうか。

「大目に見て40%でしょうか。我々の活動が国内を飛び越し海外で知ってもらえたら70%。それを頼りに海外から人が来てくれたら80%。インバウンドは大きいですからね。その上で燕三条に定住者が増えたら、ようやく100%になるのかな。いや、夢の果てを語るにはまだ時期が早い気がします。それよりも、ひたすら燕三条を知ってもらう活動を繰り返し、間口をつくって広げて、確実に段階を踏んでいくことが今はいちばん大事ですね」

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決して慌てないと言いつつも、齋藤さんのたちの活動は、小さな点が線になっていく社名通りの軌跡を描いている。あるいは、東京駅の地下で燕三条エリアの製品を手にした人のよろこびもまた、誰かに伝わり線となり、斎藤さんたちの軌跡につながっていくのかもしれない。

text by 田村十七男
Photos by 大石隼土

INFORMATION

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燕三条 工場の祭典2024

開催期間:2024年10月3日(木)〜6日(日)
開催場所:新潟県燕市・三条市全域、及び周辺地域

公式HP

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