貪欲、綺語、邪淫……己の罪悪を見つめる。地獄茶会2015 at 増上寺
02.07(土)~02.08(日)@東京都 増上寺
人が持つ10悪のうち、自分に当てはまる悪に○をつける。
■地獄の沙汰も縁次第
「これより、閻魔女王様のもとへお導きいたします……」
獄卒が冥界の入口に辿り着いた我々にそう告げる。頼りになるのはわずか1本の白いひも。左手にしっかと握りしめ、開け放たれたふすまの間から地獄の入り口である大広間へ通された我々が目にしたのは、メラメラ燃え上がる地獄の業火だった……。
私は地獄を知りません。
“地獄のような思い”なら数度、経験がありますが、それすら本当の地獄には及びもつかないものでしょう。ならば、実際に経験してみるよりほかありません。
徳川幕府歴代将軍の墓所としても名高い芝・増上寺にて<地獄茶会>が開催されました。地獄の炎に包まれた中での茶会……? いったいどんな世界が私を待ち構えているのでしょうか。いくばくかの好奇心と恐怖におびえつつ、実際に脚を運んでみました。
会場の増上寺光摂殿
地獄への道しるべ?
「すべてはこころが生み出すものなのです」
増上寺の僧侶の方が、自分たちの犯した罪の深さを知り、閻魔女王の裁きを受け“地獄”から戻った私たちにそのように語ってくださいました。恐ろしい地獄から現世に戻ってきた状態で「全ては心が生み出したもの」というお説法はズシリと響くものがありました。これからは慎み深く謙虚に生きようと心底、反省させられたのです。
地獄というものが死後に赴くところか、心の中のものか、生きている世界そのものか。それは人により思うところが異なるでしょう。それでも“一切唯心造(いっさいゆいしんぞう)=すべてはこころが生み出すもの”とすれば、日頃の「迷い」や「憂い」は幻のようなものかもしれない、という内容でした。
左)僧侶の方のお話を聞く 右)美麗な大広間の天井図
声一つ挙げることの出来ない“地獄”から戻った“元亡者”の我々は、今回の茶会のため特別に用意された雲をモチーフとした主菓子(おもがし)と、亭主たちによってふるまわれたまろやかな苦みのある抹茶をいただきました。
特に作法を強制されることもなく、脚をくずしても一向構わないという姿勢で楽しむお茶。そこは、いわゆる茶道の常識にとらわれない、非常にユニーク(独特)な空間でした。