■アートやパフォーマンスではない、“劇場茶会”である!

「お茶の文化にはこの国の歴史が全部詰まっているんです」

そう語るのは、今回の地獄茶会・亭主である藤本ゆかりさん。衣装デザイナーとして海外でも活躍されています。

もともとお茶を通して“おもてなし”について考え発信するグループ『へそ茶』のメンバーとして活動しており、そこからさらに発展し<劇場茶会>を開催するようになりました。もともとグループ自体がお茶をテーマに様々な活動を行うプラットフォームであるため、会のメンバーから様々な応援を受けているそうです。

“地獄”へ行ってみた!? 「これより、閻魔女王様のもとへお導きいたします……」地獄茶会2015 at 増上寺 art150224_jigoku_7

亭主・藤本ゆかりさん

知人から増上寺さんを紹介され、お話をしたのが昨年の11月。その時点ですでに今回の日程しか空きがなく、ほぼ決め打ちでのスタートだったそうです。

茶会を告知するWebサイトでも紹介されている、一休和尚の逸話(ご用心ご用心 正月は冥途の旅の一里塚 めでたくもありめでたくもなし……)がお正月にまつわるものであるため、正月あるいは旧正月までの開催が条件の企画であるとのこと。

「大広間の広さ(108畳)、天井の高さは素晴らしくポテンシャルが高かったです。その分、それに寄りかかっただけの“しょうもないもの”にならない仕掛けを考えました」

建築家としてGENETOに所属している山中悠嗣 さんの言葉です。藤本さんとは、2013年に京都で開催された日仏現代アートに親しめるイベント『NUIT BRANCHE (ニュイ・ブランシェ)』でもコラボされたとのこと。アートモビールという移動ギャラリーを用い、“地獄”の演出に力を振るわれました。

“地獄”へ行ってみた!? 「これより、閻魔女王様のもとへお導きいたします……」地獄茶会2015 at 増上寺 art150224_jigoku_6

空間プロデュース・山中悠嗣さん

「日程が既にあり、そこからプロジェクションを担当いただく方には昨年末、会場に灯すキャンドルの担当者には2週間前など、ギリギリのスケジュールで加わってもらい、本業のかたわらほとんど寝てない状況で作業を進めました」とのことでしたが、その苦労の甲斐があって、会場には非常に印象的な“地獄模様”が再現されました。

山中さん「前回の地獄茶会は4部屋で異なるテーマを設定したもの。今回は108畳の大広間というある意味大きなワンルームの空間。どのような方法があり得るか頭を悩ませましたが、アートモビールを茶室に見立てたり、パーテーション的に用いたりすることで、うまく場面転換を設定出来たと思います」

“地獄”へ行ってみた!? 「これより、閻魔女王様のもとへお導きいたします……」地獄茶会2015 at 増上寺 art150224_jigoku_5

左)“地獄茶会”特製のお茶菓子が供される 右)お皿は鏡を使用

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