むーーーーちゃくちゃ怖ぇぇ。マヌケな質問したら捻りつぶすぞぐらいのものすごいオーラと威圧感を放って、タリブ・クウェリがそこにいた。あれはもう、ワンピースで言うところの覇王色の覇気って言うんでしょうか、常人ならば白目をむいて気絶するレベルの圧倒的なまでの存在感。鍛え上げられた上腕二頭筋がピクピクしていて、気絶寸前の筆者の恐怖をさらに煽る。
ブルックリンで生まれ、ブルックリンで育ち、真の実力者として長きにわたりUSヒップホップ・シーンの最前線に君臨し続ける男、タリブ・クウェリ。タリブはアラビア語で「探求者」、クウェリはスワヒリ語で「真実」の意。その名を体現するかの如く、知的でアフロセントリックなヒップホップを打ち出し、90年代後半にギャングスタ・ラップ以降の新たな潮流(アンチ・バイオレンスで知的なヒップホップ)を生み出したモス・デフとの伝説的なユニット、ブラックスターをはじめ、ソロとしても数々の素晴らしい作品を世に送り出してきた超実力派。あのハイイロ・デ・ロッシも最も影響を受けたラッパーのひとりとしてタリブ・クウェリの名を挙げている。というか、ヒップホップ好きで彼の名を知らない者はいないだろう。
2013年にはミゲル、メラニー・フィオナ、ケンドリック・ラマー、バスタ・ライムス、ネリーなど超豪華メンバーが参加した最新アルバム『プリズナー・オブ・コンシャス』を発表したばかり。そんな大物中の大物が、先日、鎮座DOPENESS&DOPING BANDやDJ KRUSHなど豪華出演者たちとの共演も話題となったパーティ<Hennessy artistry>に出演。パーティの盛り上がりは先出のレポートを読んでいただくとして、ここではその前日におこなわれた貴重なインタヴューをお届けしたい。強烈なオーラに圧倒される筆者だったが、実際に対面してみると、アイツのステッカーを渡すと微笑んでくれたり、とてもジェントルな人柄で、真摯にインタヴューに応えてくれた。
Interview:Talib Kweli
――90年代後半、ブラックスターや〈ローカス〉周辺(※)のサウンドに夢中でしたので、今日はあなたにお会いできて大変に光栄です。
ありがとう。
――かつてあなたやモス・デフらが打ち出した(かつてコンシャス・ラップとも呼ばれた)アンチ・バイオレンスで知的でなおかつアフロセントリックなヒップホップはシーンに確実に新たな風を吹き込みました。その当時、若かりし頃のあなたは、どのようにしてヒップホップという音楽にハマり、そしてどういうヒップホップを目指そうと考えていましたか?
ニューヨークに生まれて、ニューヨークで育って、ヒップホップというカルチャーに関わらないわけにはいかない。常に自分の生活の中にヒップホップがあって、気が付いた時には自然にその音楽の虜になっていた。音楽性やメッセージについては、両親から教えられ、そして受け継いだものだ。
――あなたのお父様は社会学者であり、お母様が言語学者、さらにご兄弟はコロンビア大学法科大学院教授(米国最高裁判所判事経験者)。あなた自身もニューヨーク大学を卒業されていて、非常にアカデミックなご家庭で育ってこられたと思います。メッセージはご両親から受け継いだということですが、具体的にご両親からの影響とは、どのようなものですか?
物事は表面だけを見るのではなく、常に深く考え、洞察しなくてはいけない。そのことの重要さを学んだ。両親は音楽も大好きだったから、音楽的な影響も多大に受けている。
――タリブ・クウェリとは「真実を探求する者」という意味だと聞きましたが、まさにあなたのラップや音楽のコンセプトとも言えそうですね。
その通りだ。
――リリックを書く上で最も大事にしていることは何でしょうか?
どんな場合においても、エンプティ(空っぽ)じゃないものを書くってことだな。仮にトラックが軽い感じのムードの曲だとしても、中身のないことは絶対に書かないように努力している。
――かつてブルックリンのストリートで発祥したヒップホップは、いまや世界的に巨大なカルチャーでありマーケットに成長したと思います。あなた自身も長い間、ヒップホップに関わり、その成長を見守ってきていると思いますが、いま現在のヒップホップについてどのような意見をお持ちですか?
常に新しく刺激的なサウンドが生まれ続けているし、とてもポジティヴに感じているよ。
――ミゲル、メラニー・フィオナ、ケンドリック・ラマー、バスタ・ライムス、ネリーといった様々なゲスト陣も話題となったあなたの最新作『プリズナー・オブ・コンシャス』は、あなたにとってどんなアルバムだと言えるでしょうか?
最高のアルバムだ。自分が満足するものじゃなきゃリリースはしないさ。
――明日、<Hennessy artistry>のパーティに出演するということで、Hennessyとあなたのエピソードについても少しお話を聞かせてください。
昔はよく飲んでたよ。
――いまは?
まあ、たまには愉しむよ。
――あなたの結婚式のスポンサーがHennessyだったとか?
式のパーティでHennessyをたくさんもらって、その様子がウェブサイトにアップされたからそう誤解する人もいるのだろうな。でも別にHennessyがスポンサーだったというわけではないんだ。とてもお世話になったけどね。
――なるほど(笑)。では、最後にQeticの取材でみなさんに必ず聞いている質問をさせてください。現在のあなたの夢を教えてください。
夢はすべてかなった。いままさに夢を体現してる最中さ。
――小さいころからミュージシャンになって世界的に活躍することを夢見ていましたか?
そうだな。でも実際に夢をかなえてみると、決して思い描いていたようないいことばかりではないことも知った。まあ、でも望んでいたことはすべて叶っている。幸せだよ。
――なるほど。今日は本当にありがとうございました。明日のライヴを楽しみにしています!
ありがとう。
※90年代後半のニューヨークのアンダーグラウンド・ヒップホップの盛り上がりを象徴する重要レーベルのひとつ。モス・デフ、タリブ・クウェリ、ブラックスター、フォラオ・モンチ、カンパニー・フロウたちが作品をリリースした。
text by Naohiro Kato
photo by 横山マサト
Release Information
Now on sale! Artist:Talib Kweli(タリブ・クウェリ) Title:Prisoner of Conscious(プリズナー・オブ・コンシャス) Javotti Media/3D MDJCD1049 ¥2,100(tax incl.) Track List |