――〈ブルーノート〉の音源をサンプリングするということは、やはり以前からジャズの影響を強く受けていたのですか? 音楽的なバック・グラウンドを教えて下さい。

3歳年上の兄がいて、彼は常にいろいろな音楽を聴いていたので、アート・ブレイキーとかのジャズも自然に耳に入ってきてたんだ。当時はあまり好きでは無かったけれど、大人になってあらためてそういう音楽に触れる中で、どんどん好きになっていったね。

――Us3は、〈ブルーノート〉の音源をサンプリングすることを、正式に認められているということがとても有名ですが、どんな経緯でそのようなことが実現出来たのか、ぜひ教えて下さい。

レーベルと契約する前、インディペンデント・レーベルからレコードを作っていた時に、許諾無しにサンプリングしたんだ。その際に、〈ブルーノート〉のA&Rに呼ばれたことがあって、サンプリングしても良いかとストレートに聞いてみたのさ。当時は、ジェームス・ブラウンのサンプリングが出尽くした感じもあって、ギャング・スターやステッツァソニック等、ジャズ音源をサンプリングするアーティストがどんどん出てきたよね。90年代に起こった一つのムーブメントさ。

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――ハービー・ハンコックの“カンタロープ・アイランド”をサンプリングし、〈ブルーノート〉のアルバムとしてアメリカ初のプラチナアルバム獲得に繋がったことも大変有名ですが、この曲を選んだ理由を教えて下さい。

90年初頭に友人がLAに移り住んで、その友人を訪ねていったことがあった。当時、MTVの「アンプラグド」という番組があって、LAにいた時に、LL・クール・Jが「アンプラグド」に出ていたのを目にしたんだ。そもそも、MTVではヒップホップはあまり流れることは無かったよね。しかもその時の彼は、いつものヒップホップをステージで展開するのだけれど、バックが全員白人のミュージシャンで、ヒップホップではあるけれど全て楽器を使ったエレクトリックでのパフォーマンスを繰り広げられていた。

初めてヒップホップを生演奏で見た体験で、鳥肌が立つ程のエキサイティングなものだったね。その後ロンドンに戻って、あるジャズ・フェスティバルを見る機会があったのだけれど、その時のラインナップが、パット・メセニー、ハービー・ハンコック、デイヴ・ホランド、ジャック・ディジョネットで、彼らが“カンタロープ・アイランド”をもの凄くファンキーに演奏していたんだ。それを目にした時に、「よし、この曲をやろう」とひらめいたのさ。初めは生演奏だけでやろうとも考えていたけれど、〈ブルーノート〉の人と話してサンプリングが出来るということになったので、サンプリングで作ってみたんだ。当時は、ヒップホップのアーティストが生のミュージシャンを使うことはほとんど無かったけれども、ヒップホップとジャズは共通点がとても多いし、この2つを何とか組み合わせてみようと思ったのさ。

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