Us3(アススリー)は、’92年にプロデューサーのジェフ・ウィルキンソンを中心にロンドンで誕生したプロジェクト。ハービー・ハンコック“カンタロープ・アイランド”を大胆にサンプリングした“カンタループ(フリップ・ファンタジア)”は、「Funky,Funky!」のフレーズがあまりにも有名で、誰もが一度は耳にしたことがあるはず。この曲は、全米チャートでトップ10に入り、同曲も収録されたアルバム『ハンド・オン・ザ・トーチ』は、〈ブルーノート・レコード(以下、ブルーノート)〉のアルバムとしては、アメリカ初となるプラチナアルバムを獲得。ロンドンを中心としたアシッド・ジャズ・ムーブメントともリンクしたその活動は、90年代以降、世界中の音楽ファンから注目を集め、今となっては、ジャズとヒップホップを融合させたレジェンドとも言える存在である。

9月18日(水)にリリースされる待望のニューアルバム『ザ・サード・ウェイ』は、トゥッカ・ヨーツ、KCB、アキル・ダサン等のラッパーが全曲に参加。また、ディジー・ガレスピー“Manteca”を使用した“ネヴァー・ゴー・バック”、リー・モーガン“The Sidewinder”をドラムンベース・トラックにアレンジした“ワッ・ジ・ウォン”等、今作も聴き所が満載!

さらに名盤『ハンド・オン・ザ・トーチ』のリリースから今年で20周年となることを記念し、この名盤を最新リマスタリングし、新たに“カンタループ”のニュー・リミックスを収録した豪華デラックス版が発売されることも、ファンにとっては大きなニュースであろう。

今回Qetic取材班は、プロモーションのために来日したジェフ・ウィルキンソンに、インタビュー取材を行うことに成功。最新アルバム『ザ・サード・ウェイ』についてはもちろんのこと、結成から現在に至るまでの多くのエピソードを聞くことが出来た。結成20年を経ても新鮮さを全く失うことなく、さらなるチャレンジを続けるUs3に、今あらためて注目してみるべきだ。

Interview:Geoff Wilkinson(Us3)

【インタビュー】名盤『ハンド・オン・ザ・トーチ』から20年。ジャズ・ヒップホップのパイオニア、Us3の最新作が遂に到着! interview130912_us3_6

――まずは、Us3というプロジェクトの生い立ちから教えて頂きたいと思います。Us3という名前の由来、結成の経緯、どのようなコンセプトでこのユニットを始めたか等を教えて下さい。

元々は、僕と、当時プロダクション・パートナーだったメル・シンプソンによるプロダクション・チームとしてスタートしたんだ。ヒップホップとジャズを融合させる … 50%ジャズ + 50%ヒップホップということが可能なのかどうか?、そんなコンセプトで始めたのさ。プロジェクトのスタートとしての1stアルバムは、ほぼ全て、〈ブルーノート〉のバック・カタログからサンプリングした音源で作っているんだ。〈ブルーノート〉は素晴らしいジャズのレコードが山のようにあるレーベルだから、サンプル源としてはとても良かったね。ただ、過去に回帰するだけのものにはしたくなくて、そこに何か新しいものを加えていきたかった。またプロジェクトのネーミングについてだけれど、Us3 という名前には3つの要素があるのさ。ひとつは昔のレコードをサンプリングすることで、過去のものを現代に伝えて行きたいということ。2つ目に、ヒップホップのビートとラッパーの起用によって新しいものを取り入れて行くということ。3つ目として、若いジャズ・ミュージシャンを起用していくこと。サンプリング音源と、ラッパーのMCを乗せたヒップホップのビートを土台に、若手のミュージシャンを取り込んでいくことで、過去、現在、未来を繋げてゆく…そんな意味で、Us3というプロジェクト名を名付けたんだ。

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