新世代のR&Rヒーロー、ディアハンターが
魅せた荒れ狂うギター・ノイズから滲む退廃的なグラマラス
何だかんだで個人的にはディアハンターのライブを観るのはこの日が初めて。それもあってかこのバンドが登場する前の会場の期待感、そして若いオーディエンスの熱狂にはいまいちピンと来ていなかった。しかし、遅まきながら今回のパフォーマンスを観たことでこのバンドが生み出す新たなロックン・ロールの熱狂を感じることが出来た気がする、そんなステージだった。それはブラッドフォード・コックスがロック・スターとして課される多くの期待を引き受ける覚悟を感じ取ったということかもしれない。シーンに登場した当初の彼らはチルウェイヴに代表されるUSインディのサイケデリック化の一つの表れという印象を持っていたので、もっとヨレヨレの演奏を想像していたのだが、その予想は良い意味で完璧に裏切られた。
バンドの演奏はタイトさを極め、最新作『モノマニア』で打ち出したニューヨーク・ドールズを彷彿させる甘美でグラマラスな古のロックン・ロールを猛烈な爆音で鳴らしていた。特に“Dream Captain”から、“Nothing Ever Happened”の長尺ジャムは正に圧巻の一言。そして終盤の“Back to the Middle”、“Monomania”でのノイズの洪水、アンコールにおける“Agoraphobia”、“Helicopter” と一気にカタルシスを畳み掛けたステージは00年代後半以降をリアルタイムとする世代にとって彼らが特別な存在であることを雄弁に物語る説得力があった。
「Are you high?」、ブラッドフォードはこの日、ステージから問うた。オーディエンスはそのストレートな質問にどぎまぎしていたが、この臆面もないロック・ヒロイズムは滑稽さではなく、力強い求心力を漂わせていた。納得の<HCW>2日目のラスト・アクト。
text by. Keigo SADAKANE
All photo by 古溪 一道(コケイ カズミチ)
★セットリスト
Austra
Omar Souleyman
Four Tet
Juana Molina
Deerhunter
※ディア・ハンターのセットリストに関しては変更あり。