“基本的にはやっぱりベーシックな部分は変わらないんですよね。アイテムとか色の合わせ方とかは今も昔もずっと変わらない。” – 佐藤賢三

ーー石津謙介さんが作ったものは、やはりかなり大きかったんだなと感じます。その当時から今まで変わらないことは何でしょうか?

テリー氏 僕ね、一つ聞きたいんですけど、VANに強烈な影響を受けた人が歳をとっていくじゃないですか? でも、ファッションっていうのはいつの時代も若い人が作って行く。それをどういう風にシフトしているんですか?

佐藤氏 基本的にはやっぱりベーシックな部分は変わらないんですよね。アイテムとか色の合わせ方とかは今も昔もずっと変わらない。ただ、今はそれらをスタイリングする上でのサイズ感をすごく大事にしていて、そこにメッセージがあるようにも感じるから。そのサイズ感によって年代が分かれたり、セグメントがある。だから、より若い子達にも着られる、着やすくなるようなサイズ感を意識したりしています。

【ファッション鼎談】演出家テリー伊藤氏×VAN代表佐藤氏・熊王氏×JMD代表下山氏。アイビー再熱の今だからこそ語る、当時と今の着こなしとは? feature131216_ivy-fashion_9308

熊王氏 ありがたいと思っていることは、幹があるということ。同じネイビージャケットの着方がその世代によって全然違うように。うちはその幹があってそれをどれだけ枝葉に変えられるか。若い世代にアピールできるか。幹がないのに、崩すのはでたらめになってしまいますが、幹があってそれを崩していくっていうのはすごく良い事だと思っていて、そうすることで色々なエキスが加わって新しいお客さん、新しい世代に響くというのは素晴らしい事だなと思っています。今そういうことを一生懸命やっていますね。

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テリー氏 最近VANの服買う時、2サイズくらい下のものを買うんです。そうすると、トム・ブラウンみたいなシルエットになるんですよね。だいぶタイトになりましたよね?

熊王氏 そうですね、だいぶ細身になって来ましたね。お父さんが買っていて、それを息子が見て、かっこいいじゃないかって言って、2代で着てもらっている方もいらっしゃいますね。着方は違うんですけどね、どちらも成立している。

下山氏 僕も息子から学ぶことも多い。こういう考え方もあるんだなって。でも僕は今の時代にあったものを作ろうとは思わないかな。アメリカの人ってファッションはライフスタイルじゃない? お金が無い人は本当にハイブランド買えないし、でもブランド側もそういう人をターゲットにしてない。ファッションって色々あっても良いんだけど、時代に合わせる必要はないんじゃないかなと思う。やっぱり好きなブランドがそういうことをやってほしくないっていうのもあるからだと思うんですよね。売れてくるとブランドって1人歩きしてしまう。コントロールできなくなるというか。それを成功だっていわれるけど、自分にとってはそうじゃない。石津さんに「大きくするな、目が届かなくなったらおしまいだよ」って言われたことがあったんです。それが長くやって来て、やっと今分かるんです。ファッションって、イキザマみたいなものじゃない? 僕自身、それを石津さんにすごく感じていたから。

テリー氏 あんなに愛された人もいないんじゃないかな。アイビーっていうのはファッションとは別にダンディズムみたいなものもあった。今それをいうのは恥ずかしい事なのかもしれないけど。VANがもう一つ作ったことは、インドアなことに目を向けたということ。生活雑貨を販売するオレンジハウスとか、観葉植物を販売するグリーンハウスを見た時、僕はビックリしたんです。今は着飾ることに必死で、家の中まで気にする余裕がないじゃない? でもあのころは、洋服だけじゃなく、ライフスタイルまでもを提案したVANを見ていて、僕は日本は変わるんだと思った。ファッションだけじゃなくて、どういう風に生きればいいのかっていうこと。今の時代それを言うのってちょっと気恥ずかしかったりするけど、さりげなくVANはそれを提案したんだよね。

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下山氏 マイク眞木さんが、「VANは会社じゃない、学校だった」って言ってたのを思い出しました。

テリー氏 でもあのころは、洋服だけじゃなく、ライフスタイルまでもを提案したVANを見ていて、僕は日本は変わるんだと思った。ファッションだけじゃなくて、どういう風に生きればいいのかっていうこと。今の時代それを言うのってちょっと気恥ずかしかったりするけど、さりげなくVANはそれを提案したんだよね。アイビーが流行っているっていうか、再熱しているのってすごく良い事だと思う。おしゃれするって心がウキウキするじゃない? 40代、50代の人がきれいでいるっていうのは日本のためにいいことだよ。

熊王氏 イメージもいいですしね!

下山氏 見ていて、楽しんでくれているっていいよね。

テリー氏 365日アイビースタイルじゃなくてもいいじゃない? シーンとか会う人に合わせて変えたっていいんだからね。

下山氏 石津先生が作った言葉って“T・P・O”以外にもたくさんあって、スニーカーもそうだし、トレーナーもそう。ライフスタイルから生まれた言葉なんだよね。

テリー氏 スタジャンもそう?

佐藤氏 そうですね。アメリカでは、ベンチウォーマーっていうのかな? 元々は。

テリー氏 石津さんは、本当にファッション界のウォルト・ディズニーですよね。

佐藤氏 言葉でメッセージを送るのが、すごく上手な人ですよね。

下山氏 上手というか、彼自身からそのまま出ている。文化を作った人なんですよ。じゃないと僕たちの気持ちが動く事はなかったと思うから。

テリー氏 そういう言葉のルーツを知っているって良いことだよね。知っているから崩せる。基礎が出来ているから成立する。テーブルマナーを知っているのと同じようなことだよね。でも今って、昔と違って素材が全然違いますよね。フリースなんてなかったし、ダウンだってなかった。昔は重い、オイルが入った分厚いニットきてたけど、今フリース一枚の方が全然温かいじゃない? そういうことも含めて、21世紀のアイビーってなんだ? って考えていくのも大切だと思うんだよね。懐かしむだけじゃなくて。この50年近くで進化したアイビーを、今の方が良いっていう人もいれば、昔の方が良かったっていう人もいてもいいと思う。あの頃手に入らなかったようなものも、知識があるだけで、それを手にする事が楽しくなるから。

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