今回の制作プロセスは、みんなが同じ窓から同じ景色を見てるっていうか、
そのゴールを達成するためにはなりふり構わずって感じ(笑)

――リード・シングル“Love is to Die”はとても美しくメランコリックなナンバーです。歌詞に出てくる《call 111》の「111」とは、ニュージランドの緊急通報用電話番号ですよね。歌詞のビハインド・ストーリーなどはあるのでしょうか?

え、それホントなの!? 最っ高(爆笑)! 全然知らなかった!! ここでの「111」は、まずテレサ(・ワイマン)の誕生日が11月11日だっていうのと、いろんな人にとって11月11日って特別な意味合いがある日なのね。グーグルとかで検索してもらうと様々な説が出てくるんだけど、とにかくテレサにとって「111」が特別な数字でラッキー・ナンバーでもあるから、彼女にとっての「安全な場所」という意味のメタファーとして選んだんだと思うわ。

――“Biggy”や“Go In”のように、インダストリアルなビートがよりくっきりと輪郭を表すようになった気がします。今回、メンバー間で新たに試みたチャレンジ、楽器、機材などはあったのでしょうか?

まず、このアルバムではメンバー全員が歌ってるわ。これはずっと前からやりたかったことだったの。あと私がギターを担当した曲があるんだけど、これも初めてのチャレンジだったし、今回はみんな様々な楽器にトライしたわ。そもそも曲作りのプロセスも前作とはまるで違って、前作は各自ずっと自分の担当する楽器だけを演奏して、私はベーシストだからずっとベースのパートだけを考えて作ったんだけど、今回はあえて曲が求める方向性に従った。曲に必要な要素/音であれば、そのフレーズを思いついたメンバーがその楽器を担当する……っていうアプローチだったの。だから、みんなが同じ窓から同じ景色を見てるっていうか、そのゴールを達成するためにはなりふり構わずって感じ(笑)。自分たちが「最高」と思える作品を作るためなら、手段を選ばないくらいのね。

Warpaint – “Biggy”

――7曲目の“DISCO//VERY”は歌詞が衝撃的ですが、《we’ll rip you up / and tare you in two(引き裂いて、真っ二つにする)》という言葉通り、「DISCOVERY」というワードが「DISCO」と「VERY」で文字通り真っ二つにされています。これは二重人格や物事の二面性を歌っているのですか?

まあ、これはある意味ジョークというか、ノリで思いついた歌詞なの。ソングライティングの際にどうしてもこの曲の歌詞だけアイディアが出て来なくて、各自宿題として持ち帰ったんだけど、それで持ち寄ったアイディアを詰め込んだらウォーペイント流のヒップホップになったって感じ。だから、この歌詞は他のどの曲よりも深い意味は無くて、単純に言葉遊びから派生して出来上がった歌詞だと思ってもらった方がいいわ。あえて意味をつけるとしたら、「私たちのことなめんなよ!」って感じ? うそうそ、冗談(笑)。

――ははは。ところで、エミリー(・コーカル)はR&Bとラップ・ミュージックに影響を受けたと語っています。それはソングライティング面というよりも、ループするビートやトラックメイキングの面においてしょうか。

このアルバムを作るにあたって、今まで以上にR&Bやラップ・ミュージックを聞き込んだっていうようなことは、特に誰もしていないと思う。彼女がどういう意図で発言したのかはわからないけど、もちろん日常的にヒップホップやR&Bを聞くし、自分たちが聴いて育ってきたジャンルの一つではあるんだけど、特定の音楽ジャンルだけから影響を受けたワケじゃない。私たちはそれぞれ、かなり幅広い音楽から影響を受けていると思うしね。もしかしたら、メディアはヒップホップやR&Bのようなグルーヴを、まさかウォーペイントの音楽から聴けるとは思ってもいなかったから、そういう質問をしてくるのかもしれないけど……。とにかく、私たちはセクシーなアルバムを作りたかっただけなの。

――そして、ジェニーとクリス・カニンガムの結婚にはすごく驚きました。おめでとうございます! クリスは今回、ミュージック・ビデオからフォトグラフ、そしてアルバムのアートワークに至るまでヴィジュアル面をすべて手がけており、「第5のメンバー」と呼べるほど貢献しています。なぜ、ウォーペイントのサウンドと彼の描き出す世界観がフィットすると思ったのですか?

私たちが曲作りをしてる時にクリスも側にいて、彼は自分の仕事も並行していたんだけど自然な流れでバンドと一緒の時間を過ごすようになって、そこからショート・ムービーを作るアイディアが生まれたの。彼は、いわゆるドキュメンタリーとは異なる手法で映像を作ってくれたわ。何か意図的に始まったことでもなく、話し合いの中から生まれたワケでもなく、ごく自然発生的にね。私たちは単純にクリスがどんなものを作るのか楽しみだったし、彼は自分のスタイルを私たちに押し付けようともしなければ、私たちにフィットするものを意識的に作ろうとしたワケじゃないと思う。バンドの側にいて、「じゃあ自分も一緒に何か出来るだろうか」っていうシンプルなところから始まったことだったから、今回はお互いに新たな経験をすることが出来たんじゃないかと思ってる。

――マルティナ・トップレイ・バードやマーク・ラネガンとコラボレーションした、ザ・エックス・エックスのカヴァー“Crystalised”も素晴らしかったです。この共演はどのように実現したのですか?

マルティナは私たちの友人でもあって、彼女がマーク・ラネガンとレコーディングした音源をファイルで送ってきてくれて、それに対してウォーペイントの好きなようにサウンドを乗せて欲しいとリクエストをもらったの。だから、実はメールのやりとりだけで作ったのよ。最終的なミックスはマルティナの方でやったんだけど、私たちも楽しかったし、仕上がりもすごく良かったと思うわ。

Art Department Presents Martina Topley-Bird featuring Mark Lanegan – Crystalised

――2月には<Hostess Club Weekender>で再来日を果たしますね。前回は2011年の<フジロック・フェスティバル>への出演で、あなたの誕生日だったと記憶しています。日本の街やオーディエンスの印象はいかがでしたか?

オーディエンスの反応はとっても良かったわ! むしろ<フジロック>が私たちにとって初めての来日だったから、まさかあれだけ大勢の人たちが観てくれるとは思ってなかったし、正直驚いたのを憶えてる。何を期待していいのかも、会場の規模さえもわかっていなかったから、とても嬉しい驚きだったわ。と言っても、空港に着いて、そのまま現地に入ってライヴをやって、明け方には空港に戻っていたから、私の誕生日だったことと、フェスティバルの会場がとっても美しかったこと以外はほとんど憶えていないの…(苦笑)。次の来日もどれくらい滞在出来るのかはまだわからないけど、今度は日本に住んでいた友達からオススメ・スポットとかのリストを作ってもらって、いろいろ見に行きたいと思ってるわ。

――最後に、2014年の野望を聞かせてください。

とにかくツアーに出て、ライヴをやって、新曲をみんなの前で披露したい。今は本当にただそれだけだし、他のメンバーもきっと同じ気持ちだと思うわ!

質問作成・文: Kohei Ueno
インタビュー協力:ホステス・エンタテインメント

Event Information

Hostess Club Weekender
2014.02.15(土)@新木場スタジオコースト
OPEN 12:45/START 13:40
LINE UP:Mogwai / CHVRCHES / Daughter / Ásgeir / Errors

2014.02.16(日)@新木場スタジオコースト
OPEN 13:00/START 14:00
LINE UP:The National / Warpaint / Youth Lagoon / King Krule / Buke and Gase

TICKET
1日券:¥7,900(1ドリンク別)
2日通し券:¥13,900(各日1ドリンク別)
※1日券先行&2日通し券一般販売中

Release Information

2014.01.22 on sale!
Artist:Warpaint (ウォーペイント)
Title:Warpaint (ウォーペイント)
Rough Trade / Hostess
BGJ-10189
¥2,490(tax incl.)
※日本盤はボーナストラック2曲、歌詞対訳、ライナーノーツ付