・ハードロックだけじゃない! ソロになってからの活動&グラミー受賞の快挙
バンド時代の伝説が膨らむほど、軽視されがちなのがその後のソロキャリア。しかし、ジョン・ボーナムの死に伴う1980年のツェッペリン解散後、他の2人より群を抜いて精力的なプラントの働きぶりは全盛期にも匹敵するかもしれない。今日までに、共作も含めると13枚のアルバムを発表。その全てが傑作とは正直言い難いが、旧友ジミー・ペイジとの邂逅&再来日も話題となった90年代を経て、マイペースにみずからの好奇心と向き合うようになった00年代以降の活躍は特にユニークだ。2002年発表の『ドリームランド』では、ZEP結成前後の60年代後半に親しんだ曲をケルト/トラッド風味の新鮮な解釈でカヴァー。さらに「砂漠のブルース」の代表格であるティナリウェンに魅了され、マリ共和国の都市ティンブクトゥの砂漠で開催された音楽フェスにも参加している。思えばブルースを出発点として、ファンクにフォーク、レゲエ、往年の名曲“カシミール”に象徴される中近東音楽まで素地としたのがツェッペリンだが、その可能性を伸び伸びと掘り下げていくうちに、プラントの好奇心はアフリカの地に辿り着いたのだ。
そういったルーツ・ミュージック探求の旅が一つの結実を見せたのが、2007年リリースの『レイジング・サンド』。23歳離れたアリソン・クラウス女史とのコラボレーションによる味わい豊かなアコースティック作は、<第51回グラミー賞>で主要部門を独占する大成功を収めるとともに、「現在のロバート・プラント」を世間に認知させることにもなった。かつての怪物的なハイトーンはもう出ない。しかし彼は、みっともなく若作りするのではなく、渋みと深遠さを遥かに増した新しい自分の声を見つけることに成功したのだ。聴くほどに沁みる、すばらしいアルバムなので未聴の方はこの機会にぜひ。
Robert Plant, Alison Krauss -“Please Read The Letter”(『レイジング・サンド』より)
・2007年の再結成ライヴも凄かったがソロのライヴはここが凄い
ジョン・ボーナムの息子、ジェイソンをドラマーとして迎え、2007年にロンドンで一夜限りの再結成を果たしたツェッペリン。世界中からファンが駆け付け、ペイジもジョーンジーも健在ぶりを見せつけるなどメモリアルな公演となったが、これが現時点では最後のリユニオン。復活ツアーが実現しない理由の一つは、プラントのソロ活動が上述のとおり充実しまくっているからだと言われている。ファンには悩ましい話だが、1984年の来日ツアーではZEP楽曲を封印していたプラントも、かつての名声と折り合いをつけた今では惜しみなくプレイしているのでご心配なく。今回の<サマソニ>で彼が率いるセンセーショナル・スペース・シフターズは、ジャスティン・アダムズをはじめ気心知れてる仲間たちに、リッティというアフリカの弦楽器を操るジュルデー・カマラなども加えた強力布陣。トラッド/ワールド色強めの演奏は中毒性もすこぶる高く、容赦なく放たれるおなじみのナンバーでノックアウトされるのは間違いない。ZEPの最終作『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』の続きに広がる、瑞々しい現在進行形がステージで繰り広げられるだろう。その目で歴史的瞬間を目撃すべし。
Robert Plant Presents Sensational Space Shifters perform ‘Black Dog’ live on their 2013 tour
・予習にバッチリ! ロバート・プラントのライヴが観れる!
そしてナイスタイミング! 現時点での最新作『バンド・オブ・ジョイ』発表後の2010年10月、ロンドンのラウンドハウスで収録されたライヴが、3月30(日)にWOWOWで放送。ここでプラント翁が率いているのは、ZEP以前にジョン・ボーナムと組んでいたバンドの名を継承した、その名もバンド・オブ・ジョイ。メンバーは現行とは異なれど、ブルージー&アーシーな演奏は近年のスタイルを踏襲したものなので<サマソニ>予習にもうってつけ。絶好調ぶりを確かめるうえでも貴重なプログラムといえるだろう。ここでは『バンド・オブ・ジョイ』収録曲に加え、“聖なる館”や“ロックン・ロール”といったツェッペリン時代の人気曲もお見舞い。あまりのカッコよさに万雷の拍手が何度も沸き起こったあとは、合唱隊まで登場して神聖なムードに包まれる。熱唱しながら何度もクシャクシャの笑みを浮かべるプラントの表情からも、我が道を突き進む充実感が伝わってくるはずだ。
またWOWOWでは、先に紹介した07年のツェッペリン再結成ライヴを収めた映像作品『祭典の日』も4月20日(日)に放送予定と大盤振る舞い! 衰えを感じさせぬパワフルな演奏は、奇跡と呼ぶのに余りあるもの。この夜の再現も待ち望みつつ、今年のZEP旋風を満喫しましょう。
(text by Toshiya Oguma)
Program Information
洋楽ライブ伝説 ロバート・プラント ライブ・イン・ロンドン 2010
2014.03.30(日)11:00
放送チャンネル:WOWOWライブ
レッド・ツェッペリン Celebration Day/祭典の日
2014.04.20(日)21:00
放送チャンネル:WOWOWライブ