年の<サマーソニック(以下:サマソニ)>にロバート・プラントがやってくると聞いて、「アアアーーーーアー!」と叫んだ方も多いのでは。サメ事件をはじめ様々な武勇伝でも知られるロックの王者、レッド・ツェッペリン(以下:ツェッペリン/ZEP)の花形シンガーがお久しぶりの日本上陸です。ヘッドライナーを務めるアークティック・モンキーズもここ数年はハード・ロックに傾倒しているわけだが、狂熱の70年代を誰よりも体現してみせた大御所中の大御所、ブロンドの王子まで一緒にやってくるとなればロックン・ロール的に大事件と言うほかない。おまけに絶好のタイミングで、ツェッペリンのアルバム初期3作もデラックス・エディションで再発が決定(日本盤は6月4日発売)。つ・ま・り、2014年は世界的にもZEPイヤーなのだ! 勢い余って、<サマソニ>でのステージはコミュニケイション・ブレイクダウンして倒れる人も出てきそう。これはもうワクテカすぎます。

ZEPヴァージンでいまいちピンときてない人、「ツェッペリンは一応通ってるけど、今更べつに興味ないよ〜」なんて斜に構えたそこのアナタ。プラント翁をナメてはなりません。今回はヤング≒アダルトなQetic読者のために、「現在のロバート・プラントが見逃せない理由」を1からプレゼンさせていただきます。

・ロバート・プラントって誰?

“パーシー”という(本人は好まない)愛称も知られるロバート・プラントは、1948年生まれの65歳。60年代からいくつかのバンドで活動していたが、やはりツェッペリンのシンガーとして最も有名だろう。天才的なリフ・メイカーにしてバンドの司令塔であるジミー・ペイジのギター、卓越したミュージシャン・シップで屋台骨を担うジョン・ポール・ジョーンズのベース、そして重戦車のごとき圧倒的パワーでアンサンブルを牽引するジョン・ボーナムのドラム。音楽的なイディオムも豊富で、重厚かつ巧みな技も備えた彼らが20世紀最強のロック・プレイヤー集団であることに異論の余地はなさそうだが、この3人に引けをとらない“楽器”こそがプラントのもつ桁違いの声量、類い稀なヴォーカリゼーションだった。この高次元のパワーバランスこそが、ロックの限界と最大音量を大幅に更新していく原動力となる。また、プラントはケルト神話や北欧民話にも耽溺し、神秘的でファンタジー色の強い歌詞世界にも貢献。バンドの幻想的なイメージに100%対応した華々しいヴィジュアルも、ロックのパブリック・イメージと化して今日まで影響を及ぼし続けている。要するにスーパー偉大で、男子も女子もみんな彼に憧れたのだ。

・元祖ハイトーンボイスヴォーカル!

“移民の歌(=immigrant song)”に象徴的な超音波スレスレのシャウト、底知れぬ馬力とワイドな声域を活かしたZEP初期におけるプラントの歌唱スタイルは、ロックの世界に革命をもたらした。70年代初頭には「一番高い声を出せるヤツが偉い」みたいな風潮も招き、イアン・ギラン(ディープ・パープル)やジョン・アンダーソン(イエス)などもプラントに追随。フレディ・マーキュリーやアクセル・ローズも大いに刺激されたはずだし、後年のヘヴィ・メタルにおけるシンガーの在り方も決定づけることに。ジャック・ホワイトや、もしかしたらシガー・ロスのヨンシーもその系譜に位置づけられるかもしれない。プラント本人は1973年に喉を手術するなど声の黄金期は長く続かなかったが、クリスタル・キングの“大都会”からジャイアン・リサイタルに至るまで(ジャイアンが『ドラえもん』劇中でZEPシャツを着てたのは有名だ)、その影響は各方面に散見される。

Led Zeppelin – “移民の歌(Immigrant Song)”

・その美形〜セックスシンボルと呼ばれて〜

クイーンやジャパン(バンドの方)の人気が最初に日本で火がついたのも、何はともあれルックスがよかったから。今では信じられない規模で、洋楽のスターが日本でリアルに王子様扱いされていた時代。黄色い歓声が誰よりも向けられたのがミスター・フォトジェニック=ロバート・プラントだった。ブロンドの巻き毛、逞しい体躯にフィットした鮮やかなステージ衣装、はだけた胸に覗かせるギャランドゥ。こんなセクシー・ガイがマイクとコードを握った得意の決めポーズで「どれだけ君を愛しているか、ベイビー」なんて歌ったら、幻惑されて胸いっぱいの愛を抱かないほうが無理というもの。かの名作少女マンガ『エロイカより愛をこめて』でエロイカ伯爵のモデルになったのもよく知られているし、『あの頃ペニーレインと』におけるケイト・ハドソンの見た目もプラントをモロに意識したものだという。ロックにおける麗しさを定義した永遠の貴公子、罪作りな男である。

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