第14回 最後の同窓会

私が毎年この梅雨の時期に開催する高校野球部の同窓会。卒業の翌年から律儀にスタメン9名と、マネージャーだった私で集まっている。大学生活の話や、恋愛自慢などをしていた頃もあったが、ここ何年かは結婚や家族関係、新しい転職先の話が主な話題だ。社会に出て段々と立派な大人の男性になっていく彼らを見るのはとても複雑な気持ちだった。

高校時代のすべてを捧げたナイン達にとってやはりお互いの存在は偉大なんだろう。3年間ずっと一番近くでその姿を見続けていた私にとっても、彼らの存在は特別なものになってしまった。だからこそ、この同窓会は途切れる事無く続いているし、私にとっても大事なイベントだ。

ナイン達が異変を感じ始めたのは5年前くらいからだろうか。不慮の事故や原因不明の死因で、ナイン達が一人、また一人と、亡くなっていったのだ。会場の予約席に空席が目立つ様になった頃「来年は俺がいなくなるかもな」とぽつり呟いたメンバーまでいた。今話せる事を話しておこうとしたのかも知れないが、当時の思い出話がここ最近はすごく多かった気がする。時間の流れは凄く穏やかなようで実は残酷なんだ。彼らの話を聴きながら、私はそう思っていた。

そして今日が10年目の同窓会。とうとう私以外の参加者は誰一人来なかった。私は既に誰も来ない事を知っていた。むしろ誰も来ない事は私しか知らなかった。10年かかった長い長い復讐が終わった。とうとう私はこの日を迎えた。今年が最後の同窓会。私の新しい人生の門出に、一緒に乾杯してくれる相手がいなくて少し寂しく感じたけど、こんなにお酒がおいしいと感じたのは人生で初めての事だった。外は雨が降り続いている。ちょうど10年前の「あの日」も雨が降っていた。大嫌いだった雨。これからは好きになれるかも知れない。