kim(UHNELLYS)

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コラムニスト

声とバリトンギターによるリアルタイムサンプリングと、それにジャストのタイミングで合わせたドラムを基盤に、ロック、ヒップホップ、ジャズの垣根を飛び越えた唯一無二のサウンドを構築する「UHNELLYS」で歌う男。2013年には2度目の<FUJI ROCK FESTIVAL>に出演し、夜の食堂を大いに盛り上げる。そして2014年3月、自身で設立したレーベル、〈I’mOK〉から5thアルバム『CHORD』をリリース。何度でも言うが音楽は素晴らしい。

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別れのとき

妻に借りてきてもらった本に小さいメモが挟まっていた。古本屋で買った本や図書館で借りた本には、たまにこんなメモが残されていることがある。今見つけたメモにはこう書かれていた。「女を許せ」

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若い女

「あなたが息子を大事にするとはどうしても思えないの。だから迎えに来たわ。」半年ぶりに会った母ちゃんはかなり怒っていた。父ちゃんのせいでもう家族がぐちゃぐちゃだ。新しく出来た若い母ちゃんに僕を押し付けてまたどっかに消えたのが先週。それを聞いた母ちゃんが乗り込んで来たってわけだ。

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内緒だからね

最近耳が遠くなってきた母に娘が何か内緒話をしている。私が近くに居ないことを確かめながら耳元でコソコソと。私はその姿を2階のベランダからこっそり眺めながら思い出し笑いをする。私も小さい頃に全く同じことをしたから。私がお婆ちゃんに内緒話をしたのは6歳の頃。母の誕生日の1週間前だった。

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BREATHE

地下にある子供部屋でリズを寝かしつけている時だった。「なんだか外がおかしいの」と妻が言う。僕が様子を見に行く頃にはこの町は毒性のガスで満たされていた。すぐに携帯電話も使えなくなり、バタバタと目の前で人が倒れていく。僕は急いで家に戻り鍵を閉め、妻を連れて地下に閉じこもった。

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間違い探し

この辺りには昔から一軒しか店が無い。酒も食料も日用品もこの店で揃えることが出来る。自転車さえ乗らなくなった老人達はみんなここに集まる。買うものが無くたって毎日やって来る。この場所に派手な若者たちがバイクや車で集まって夜中まで騒いでいたのはもう50年も前の話。今ではすっかり老人達の憩いの場だ。両親の店を手伝うトミーとサミーは近所でも有名な双子だった。

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笑う門には福来たる

精神的にぐらぐらしていた去年の今頃。仕事もプライベートもまるで上手くいかなくて、私は少しでも時間があれば神社に行くようになっていた。古いベンチに座ってただ何時間も過ごす。神様にすがりたかったのか、静かな場所に行きたかったのかは憶えてない。このまま一人で部屋にいたら死んじゃうかもって気づいて、さまよった先が神社だった。そんな私を救ってくれたのは神様でも仏様でもなく、売店のおばちゃんだった。神社に来る人たちを何十年も見続けているおばちゃんは全部お見通しだ。

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古いラブレター

日本から出張して来たサラリーマンに一目惚れしてしまったママ。「スーツ着た男なんて映画でしか見たこと無かったもの。だからあの人がスターに見えちゃったの」日本には妻も子供もいるって知ってたけど我慢出来なかったって。2人で過ごした期間は3ヶ月くらい。そんな短い時間で僕が出来た。だから僕は生まれた時から父親がいない。日本にいる。

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思い出の中に

すみません、この席は空いてないんです」バーカウンターでの立ち話に疲れ、少しソファに座ろうと思った僕に彼女は言った。申し訳なさそうな、でも何だか嬉しそうでもある複雑な表情で。よく見ると隣のソファの下には誰も呑んでいないグラスがお供え物のように置いてある。お酒の力も手伝って僕は思い切って彼女に理由を尋ねた。3年前の今日、彼とここで出会ったんです。

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灰色の日々

判決が下った直後の裁判所で「お前が会いに来ると余計に辛くなるから面会には来ないでくれ」と言われたのが7年前。私は彼に言われた通り、面会には一度も行かなかった。事件のあとは住所も仕事も変えて、ひっそりと暮らしながら彼の帰りを待っていた。もう今の私には家族も友人もいない。たった一人も。

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ニューヨークの恋人

いつも優しい夫。穏やかな夫。世間にはそう見えている。でも本当はただの冴えないつまらない夫。服装のセンスまるで無し。口喧嘩では1度も私に勝ったことが無い。明らかに私が悪くても。夫はそんな男。だから油断してた。夫は初めて浮気をするつもりらしい。SNSで何ヶ月もメール交換している、会ったことも無い女と。

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言葉がなくても

離婚して3年が経った。僕たち夫婦に子供はいなかったが、子供のように可愛がっていた犬達とたまにここで会っている。「引き離すのは可哀想だから」と、妻が新しい夫と面倒をみてくれている。まだ独り身の僕にとっては、久しぶりに家族と過ごせるこの時間がとても大切な時間だ。犬と長く一緒に暮らすと会話が出来るようになる。だから彼らの「言いたくても言えないよ」「でも言わなきゃ」という雰囲気はすぐに伝わって来た。ママに口止めされているのかもしれない。僕はどちらかというと正義感の強い弟のジギーに「大丈夫だから言ってごらん」と伝えた。すると

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彼女の決断

毎日の通勤電車に何か少しでも楽しみがあると気持ちが軽くなる。僕の楽しみはいつも同じ駅から電車に乗ってくる可愛い女の子を眺めること。話しかけたいとか、仲良くなりたいとかそんな下心は全然なくて、ただ毎朝彼女を見つけるのが楽しかった。でも最近の彼女はため息ばかりついている。仕事が大変なのか彼氏と喧嘩でもしたのか。僕は勝手に心配していた。そんな彼女に異変が起こった。

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人間交差点

はとても背が小さいから背が高い人が好き。背が高いだけで恋愛対象になるくらい。だからサマンサの彼氏が凄く背が高くてついつい気になってしまう。顔を見上げて話すたびに胸が高鳴るわ。こんな私に気づいてる彼がさっきから機嫌が悪い。ああでも仕方ないの。ごめんなさい。

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ニューヨーク青春白書

僕は小さい頃にビバリーヒルズ高校白書という恋愛テレビドラマを夢中で観ていた。高校生になったら絶対に男女のグループを作ってドラマチックな生活を楽しみたいって思ってた。実際には高校で実現出来ず大学3年の頃にようやく結成。男4人女3人。その中に双子が1組。選びに選んだ理想的なメンバー達だ。

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武士の後悔

突然現れた武士達は言った。「そろそろ戦争あるって聞いて居ても立ってもいられなくてさ」お気持はありがたいですが、今の時代は刀じゃそれこそ太刀打ち出来ないですよ、と僕が言うと武士達は首を横に振った。「俺たちは元々武士じゃない。俺たちの後悔を話すためにわざわざ来たのさ」俺たちは金持ちも貧乏もいない平凡な村の農民だった。

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孤独の穴

目が覚めた。ということは俺はまだ生きている。深酒していた呑み屋から出た瞬間に男達に連れ去られ、棺桶のような箱に乱暴に詰め込まれたのは憶えている。運ばれて揺られている間にそのまま寝てしまったらしい。死の危険が迫ってもいつの間にか寝ていた自分に心底呆れる。このぐうたらな性格が自分の人生を狂わせて来たというのに。馬鹿は死ななきゃ治らない。本当に。

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はじめまして。さようなら。

ぐるぐる巻きにされている包帯を外す時が来た。包帯が解けていくたびに、少しづつ白い光が薄く目に飛び込んでくる。本当に目が見えるようになったのかも知れない。私は1枚の写真を握りしめてその時を待っている。どうしても会いたい人。どうしても会いたかった人。私は何年も路上や酒場で歌う盲目の流しをしていた。その場でリクエストに応えて1曲歌い、小銭をもらう。何度も追い払われながら、それでも私は歌い続けた。他に仕事なんてない。これが私の最後の生きる道だ。

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君が死んだ理由

私は小さい頃から死骸に触れると言葉を感じる。実際に聞こえるわけじゃないから「感じる」といつも説明している。不思議と生きているうちは感じる事が出来ない。誰もが死を迎えると何かを解き放つのかも知れない。

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トラベリング

数年ぶりに日本に帰って来た僕を家族は温かく迎えてくれた。「また新聞に名前載ってたわよ、今度は何を発見したんだっけ? 隣の遠藤さんが見つけて切り抜きを持って来てくれたの」「アフリカの大学での講義がニュースで流れたのは私も見た、彼に自慢しちゃった」

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安全第一

ほんの一瞬悲鳴が聞こえた。振り向くと固めていたはずの土砂が崩れ落ち、作業穴は完全に塞がっていた。1本の腕だけが土砂から突き出ている。穴の中で作業していたスズキの腕だ。目の前で音も無くもがき続ける不気味な腕。俺とムラタはその必死に動き回る腕を見ながら思わず笑ってしまった。

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過去の清算

私はこの集落でしっかり者で有名だった。集会がある日は先に会場に到着して掃除をし、人数分のお茶を用意しておく。団体旅行の時には私が全ての観光先を決めて、スケジュールを組み、バスと旅館を手配した。もちろん経理も私だ。もう何十年もそんな感じだからか、最近は何か催しがあると自然と私の所にお金が集まって来る。

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あなたのために

駄目な男と恋愛するのはこの男が最初で最後。私はふらふらと始発電車に乗りこみ、彼の広い肩で眠りに落ちながら決心した。自分を変えるために、今までの自分を捨てるためにわざわざ女たらしで有名だった男と付き合ってみたけれど。ここまで変えられちゃうと戻り方がわからなくなってしまう。露出の多い服も派手目な化粧も彼のため。

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Moon River

弟がいた記憶はかすかにある。たしか3歳くらいまでは一緒に暮らしていた。放蕩三昧の父親に嫌気がさした母親が、僕を連れてニュージャージーからフロリダに引っ越してからは1度も会っていない。前の父親とは比べ物にならないほど真面目な新しい父親に僕はすぐに馴染み、まるで本当の息子かのように僕は大事に育てられた。

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俺たちに明日はない

僕たちは生まれた時から一緒。ブリーダーの繁殖作業により僕らは生まれた。だから父親も母親も知らない。でも不思議と寂しいなんて感じたことは無かった。同じ境遇の兄弟達が周りにたくさんいるし、次から次へと弟や妹が増えていく。

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あなたの未来についてお話が

私は課長だ。ずっと前から課長だ。この先もずっと課長だろう。なにしろ課長のまま10年以上経っている。小さい会社だが少しづつ業績も上がっていて、社員も年々増えているが私は課長のままだ。

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毒
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道無き道を何時間も歩いて、やっと辿り着いた山奥のそのまた奥にある湖。ここは僕が地学を研究し、探し求めていた水源があるとついに断定した場所だ。ある決まった年代の岩石を通過した水のみに含まれる貴重な成分を、僕は何年も追いかけている。

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ハッピーバースデー
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ハッピーバースデー

私は壊れてもいない靴の修理のためにここに座っている。どうしても会社に戻りたくなくて。昔、実家がカバン屋だったから革のニオイを嗅ぐと少し落ち着くのだ。

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視線
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視線

僕たち3人は保育園で出会いすぐに親友同士になった。まだ言葉もうまく喋れないうちに。親たちが迎えに来るまで3人はずっと一緒。誰かが泣いていれば泣き止むまでそばにいる。

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鶴の恩返し

「しばらくの間海外に行け。俺が連絡するまで俺に連絡するな。帰ってこいと言うまで帰って来るな。すぐ出発しろ」深夜3時の電話は僕が多額の借金をしていた金融屋からだった。とうとうこの時が来た。

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終点の先に

私のパパは毎日みんなを学校に届けてくれるスクールバスの運転手。私もそのバスに乗って学校に通っていた。バスに乗り込む時に運転席のパパと目が合うと、少し恥ずかしくて、でもやっぱり凄く誇らしかった。

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未来予想図

観光客が集まる繁華街を抜けてしばらく歩いたところに、陽気な兄弟が営む路上マッサージ店がある。僕はタイに来ると必ずここに寄る。もちろん腕が良いのだけどそれだけじゃない。この兄弟は足の裏を見て占いをしてくれる。

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プラスとマイナス

会社が妻の愛人に乗っ取られてしまったことに気づき、急いで事務所から飛び出して私は車に轢かれた。減速することなく走り去る茶色いワゴンをなんとなく憶えている。目が覚めたのは病院のベッドの上。下半身は不随になっていた。

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島のマドンナ

私がアルバイトをしている船乗り場には、到着する船をこっそりと待つネコがいる。1日に5本しか船は来ないのに、いつも同じ場所で律儀に誰かを待っている。船が乗船場に近づくたびにどこからともなく定位置に現れ、最後の乗船者が降りるのを見届けてまたどこかに歩いて行ってしまう。

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感情論

ロボットに感情を持たせることが解禁されたのは2年前。倫理的に問題があるとして日本ではなかなか規制が緩和されなかった。でも人間同士の付き合いに限界を感じている僕を含む大勢にとっては、これまでに無い嬉しいニュースだった。

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私はこの数ヶ月間、毎日1時間かけてここに来ている。数100メートル向こう、360度見渡せるこの場所に。犬のバドも一緒だ。

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僕たちの視界

4年ぶりに見る外の景色にアカネはとても興奮している。こんなにはしゃいだ声を聞いたのは久しぶりだ。どうしてこんなにはしゃいでいるの? と近くにいるはずの妻に聞くと「シャボン玉が沢山飛んでるの」と教えてくれた。

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