kim(UHNELLYS)

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コラムニスト

声とバリトンギターによるリアルタイムサンプリングと、それにジャストのタイミングで合わせたドラムを基盤に、ロック、ヒップホップ、ジャズの垣根を飛び越えた唯一無二のサウンドを構築する「UHNELLYS」で歌う男。2013年には2度目の<FUJI ROCK FESTIVAL>に出演し、夜の食堂を大いに盛り上げる。そして2014年3月、自身で設立したレーベル、〈I’mOK〉から5thアルバム『CHORD』をリリース。何度でも言うが音楽は素晴らしい。

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武士の後悔

突然現れた武士達は言った。「そろそろ戦争あるって聞いて居ても立ってもいられなくてさ」お気持はありがたいですが、今の時代は刀じゃそれこそ太刀打ち出来ないですよ、と僕が言うと武士達は首を横に振った。「俺たちは元々武士じゃない。俺たちの後悔を話すためにわざわざ来たのさ」俺たちは金持ちも貧乏もいない平凡な村の農民だった。

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孤独の穴

目が覚めた。ということは俺はまだ生きている。深酒していた呑み屋から出た瞬間に男達に連れ去られ、棺桶のような箱に乱暴に詰め込まれたのは憶えている。運ばれて揺られている間にそのまま寝てしまったらしい。死の危険が迫ってもいつの間にか寝ていた自分に心底呆れる。このぐうたらな性格が自分の人生を狂わせて来たというのに。馬鹿は死ななきゃ治らない。本当に。

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はじめまして。さようなら。

ぐるぐる巻きにされている包帯を外す時が来た。包帯が解けていくたびに、少しづつ白い光が薄く目に飛び込んでくる。本当に目が見えるようになったのかも知れない。私は1枚の写真を握りしめてその時を待っている。どうしても会いたい人。どうしても会いたかった人。私は何年も路上や酒場で歌う盲目の流しをしていた。その場でリクエストに応えて1曲歌い、小銭をもらう。何度も追い払われながら、それでも私は歌い続けた。他に仕事なんてない。これが私の最後の生きる道だ。

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君が死んだ理由

私は小さい頃から死骸に触れると言葉を感じる。実際に聞こえるわけじゃないから「感じる」といつも説明している。不思議と生きているうちは感じる事が出来ない。誰もが死を迎えると何かを解き放つのかも知れない。

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トラベリング

数年ぶりに日本に帰って来た僕を家族は温かく迎えてくれた。「また新聞に名前載ってたわよ、今度は何を発見したんだっけ? 隣の遠藤さんが見つけて切り抜きを持って来てくれたの」「アフリカの大学での講義がニュースで流れたのは私も見た、彼に自慢しちゃった」

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安全第一

ほんの一瞬悲鳴が聞こえた。振り向くと固めていたはずの土砂が崩れ落ち、作業穴は完全に塞がっていた。1本の腕だけが土砂から突き出ている。穴の中で作業していたスズキの腕だ。目の前で音も無くもがき続ける不気味な腕。俺とムラタはその必死に動き回る腕を見ながら思わず笑ってしまった。

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過去の清算

私はこの集落でしっかり者で有名だった。集会がある日は先に会場に到着して掃除をし、人数分のお茶を用意しておく。団体旅行の時には私が全ての観光先を決めて、スケジュールを組み、バスと旅館を手配した。もちろん経理も私だ。もう何十年もそんな感じだからか、最近は何か催しがあると自然と私の所にお金が集まって来る。

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あなたのために

駄目な男と恋愛するのはこの男が最初で最後。私はふらふらと始発電車に乗りこみ、彼の広い肩で眠りに落ちながら決心した。自分を変えるために、今までの自分を捨てるためにわざわざ女たらしで有名だった男と付き合ってみたけれど。ここまで変えられちゃうと戻り方がわからなくなってしまう。露出の多い服も派手目な化粧も彼のため。

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Moon River

弟がいた記憶はかすかにある。たしか3歳くらいまでは一緒に暮らしていた。放蕩三昧の父親に嫌気がさした母親が、僕を連れてニュージャージーからフロリダに引っ越してからは1度も会っていない。前の父親とは比べ物にならないほど真面目な新しい父親に僕はすぐに馴染み、まるで本当の息子かのように僕は大事に育てられた。

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俺たちに明日はない

僕たちは生まれた時から一緒。ブリーダーの繁殖作業により僕らは生まれた。だから父親も母親も知らない。でも不思議と寂しいなんて感じたことは無かった。同じ境遇の兄弟達が周りにたくさんいるし、次から次へと弟や妹が増えていく。

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あなたの未来についてお話が

私は課長だ。ずっと前から課長だ。この先もずっと課長だろう。なにしろ課長のまま10年以上経っている。小さい会社だが少しづつ業績も上がっていて、社員も年々増えているが私は課長のままだ。

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毒
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道無き道を何時間も歩いて、やっと辿り着いた山奥のそのまた奥にある湖。ここは僕が地学を研究し、探し求めていた水源があるとついに断定した場所だ。ある決まった年代の岩石を通過した水のみに含まれる貴重な成分を、僕は何年も追いかけている。

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ハッピーバースデー
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ハッピーバースデー

私は壊れてもいない靴の修理のためにここに座っている。どうしても会社に戻りたくなくて。昔、実家がカバン屋だったから革のニオイを嗅ぐと少し落ち着くのだ。

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視線
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視線

僕たち3人は保育園で出会いすぐに親友同士になった。まだ言葉もうまく喋れないうちに。親たちが迎えに来るまで3人はずっと一緒。誰かが泣いていれば泣き止むまでそばにいる。

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鶴の恩返し

「しばらくの間海外に行け。俺が連絡するまで俺に連絡するな。帰ってこいと言うまで帰って来るな。すぐ出発しろ」深夜3時の電話は僕が多額の借金をしていた金融屋からだった。とうとうこの時が来た。

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終点の先に

私のパパは毎日みんなを学校に届けてくれるスクールバスの運転手。私もそのバスに乗って学校に通っていた。バスに乗り込む時に運転席のパパと目が合うと、少し恥ずかしくて、でもやっぱり凄く誇らしかった。

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未来予想図

観光客が集まる繁華街を抜けてしばらく歩いたところに、陽気な兄弟が営む路上マッサージ店がある。僕はタイに来ると必ずここに寄る。もちろん腕が良いのだけどそれだけじゃない。この兄弟は足の裏を見て占いをしてくれる。

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プラスとマイナス

会社が妻の愛人に乗っ取られてしまったことに気づき、急いで事務所から飛び出して私は車に轢かれた。減速することなく走り去る茶色いワゴンをなんとなく憶えている。目が覚めたのは病院のベッドの上。下半身は不随になっていた。

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島のマドンナ

私がアルバイトをしている船乗り場には、到着する船をこっそりと待つネコがいる。1日に5本しか船は来ないのに、いつも同じ場所で律儀に誰かを待っている。船が乗船場に近づくたびにどこからともなく定位置に現れ、最後の乗船者が降りるのを見届けてまたどこかに歩いて行ってしまう。

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感情論

ロボットに感情を持たせることが解禁されたのは2年前。倫理的に問題があるとして日本ではなかなか規制が緩和されなかった。でも人間同士の付き合いに限界を感じている僕を含む大勢にとっては、これまでに無い嬉しいニュースだった。

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私はこの数ヶ月間、毎日1時間かけてここに来ている。数100メートル向こう、360度見渡せるこの場所に。犬のバドも一緒だ。

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僕たちの視界

4年ぶりに見る外の景色にアカネはとても興奮している。こんなにはしゃいだ声を聞いたのは久しぶりだ。どうしてこんなにはしゃいでいるの? と近くにいるはずの妻に聞くと「シャボン玉が沢山飛んでるの」と教えてくれた。

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夫婦のかたち

離婚してください。なかなか言えなかった言葉を今日、私はするりと言った。なにかきっかけがあったわけではないけど、天気の良い日に布団を干すようにとても自然に言えた。

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ひとりごと

僕は別に監視員でも警備員でもない。海鮮を店先で焼いてお客さんを引き寄せるただのアルバイトだ。毎日ここに立っているから、岬に向かう人はみんな僕の前を通り過ぎる。

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黒い太陽

アカネが産まれた時にはもう太陽は暗かった。日中明るい時間は1日6時間くらい。その時間も段々短くなっていて、アカネが物心ついた頃には、夕方と夜しかなくなった。

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いつかの紅葉

「この人をよろしくね」そう言って妹の紅葉は旅立った。結婚式まであと数週間だったのに。それまで必死に明るく振る舞っていた紅葉の婚約者は、堤防が決壊したかのようにその場に泣き崩れた。

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交差する刹那

最近小さい女の子がさらわれる事件が続いてるんだって。学校の友達もいつの間にかいなくなったりしてるし。新聞には載ってないけど噂は本当なのかも。実は私は犯人に心当たりがあるの。

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私から離れて

結核にかかった私はしばらく隔離されることになった。どうりで何週間経っても咳が止まらなかったわけだ。レントゲンで結核らしき影が見つかった時のお医者さんの慌てようは今思い出しても笑ってしまう。

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まな板の恋

割烹料理屋だから目印になるだろう、そんな軽い気持ちで俺の家を待ち合わせ場所にしたのが大きな間違いだった。

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彷徨う理由

今から50年ほど前「ゾンビは人を襲う」という迷信があった。だからゾンビが初めて街に現れた時は酷い扱いを受けた。見た目が気色悪く、言葉が通じない死人がノロノロと近づいて来るのだから恐怖を感じても仕方がない。

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猫の家来

殿、連れて参りました。中山道のあの茶屋の娘でございます。一目で惚れたんだ、と殿が興奮気味に仰っていたあの時の娘です。なんとこの娘も「殿の熱い視線がどうしても忘れられなかった」と申しております。これには驚きました。はい、十分に人目につかぬよう気を配りました。

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パズル

目覚めると男はもういなかった。平日の朝だし、仕事に行ったのだろう。名前を聞いた気がするけど思い出せない。汗ばんだ顔と力んだ手つきは憶えてる。

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More Than Words

会話も無く引っ越しの準備をしている私達。別居なんて離婚と一緒だって思っていたのに。先月、夫から「別居したい」って言われて私はどうしても断れなかった。だったら離婚しようよ、って私ならすぐ言い返すと思っていたのに。

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夏の終わりと始まり

「やたら陽気なおデブ」僕は小さい頃からそう思われてる。大声で笑ったり、大げさなリアクションをしたり、ハンバーガーをいくつもたいらげたり、膨れたお腹を揺すってみせたり。ずっとこんなことをして来た。

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声の記憶

「やっと見つけたぜ。俺はあんたに憧れて育ったんだ。いつか会いたいってずっと願ってたんだ」訪ねて来た若い黒人が興奮気味に私に言う。私には一体何のことかさっぱり分からない。君は誰かと私を勘違いしているよ、そう言っても若者は一向に譲らなかった。

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不可能リサイクル

法律が改正され、不要な家族は粗大ゴミとして捨てられるようになった。住んでいる地域の福祉課の許可が必要だが、本人の了承があればそんなに難しいことではないらしい。

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