また、今年の<ガバナーズ・ボール>で勢いをみせていたのが、EDM系。派手なセット・演出で観客たちを熱狂させていたのだが、そのなかでも特別な存在感を放っていたのが、最終日3日目の夕方に登場した、世界最高峰ダンス・レーベル〈ULTRA〉に所属、昨年末にポール・マッカートニーなどをゲストに呼んで完成させたアルバム『ハイド』が好セールスを記録している、ブラッディー・ビートルーツである。サー・ボブ・コーネリアス・リフォによるソロ・プロジェクトであるが、ライヴ・セットの場合はヴォーカル&ギター、DJ、ドラマーの3人が、全員黒の衣装で統一、そしてトレードマークであるマスクを被り(そこには驚きの仕掛けが!)パフォーマンス。
ダンス・パンクDJと名乗るだけあり、冒頭からアグレッシブなロックとエレクトロが絡み合ったエキサイティングなビートを轟かせ、パーティ・ピープルたちを興奮状態に陥れた。その後も刺激的なビートをメインにしながら、時折エルヴィス・プレスリーのようなロックンロールをシャウトし、通りすがりの観客の腰までをもシェイクさせたり、さらには最新作収録の“クロニクルズ・オブ・ア・フォーレン・ラブ”では、Voがピアノを演奏し美しい瞬間を紡ぎだすなど、EDMを体感したことのない人も音楽世界に巻き込んだステージとなったのだ。彼らは<フジロック>の2日目の深夜・レッドマーキーにも出演。その激しいビートで魅了させてくれるはずだ!
興奮のブラッディー・ビートルーツのステージ直後となったメイン・ステージには、フォスター・ザ・ピープルが登場。その高い演奏力が評価されているバンドだけあって、開演直後から人の流れが彼らに集中。その激しい流れを見て、フロントマンであるマーク・フォスターは、終始MCで驚きと感動の言葉を絶やすことがなかった。もちろんパフォーマンスからも彼らの興奮と感動が伝わってくるようなもので、冒頭に披露した3月にリリースされ日本でもロング・ヒットを記録している2ndアルバム『スーパーモデル』収録の“アー・ユー・ホワット・ユー・ウォント・トゥ・ビー?”では、パーカッションやホーンなどを加えてよりエキサイティングかつダンサブルに進化したセッション・サウンドを響かせ、会場を沸かせた。
その後も最新作の収録曲を中心に、マーク・ポンディアスやカビー・フィンクといったメンバーはもちろん、サポート・メンバーもさまざまな楽器を演奏しながら、スリリングでエキサイティングな音を披露。改めて2作のアルバムを会場で聴くと、『スーパーモデル』はライヴ仕様のキラキラ感の溢れた内容であることに気づかされた。またダンサブルな楽曲ばかりでなく、まるで瞑想の世界に入り込んでいるような雰囲気を醸し出すナンバーも披露。特にそこで響くマーク・フォスターの透明感のあるファルセット・ヴォイスが、大西洋から注ぎ込む心地よい風を運んでくれたよう。灼熱だった3日間の疲れを吹き飛ばし、会場を爽快な気分にさせてくれたのだ(おそらく苗場でも魔法の時間を紡ぎだしてくれるに違いない)。そして終盤に、世界トータル1000万枚をセールスしバンドの知名度を広めた名曲“パンプト・アップ・キックス”をパフォーマンスし始めると、メンバーも観客もそこにいる全員が最後の力を振り絞るように飛び廻り、大盛況だったフェスの終盤を華やかに締めくくったのだった。
音楽はもちろんであるが、会場のいたるところにオブジェを配置したり、女子が大行列していた生花でヘッドドレスを作ってくれるお店がある(また最新夏スタイルもチェックできる?)など、さまざまなカルチャーが交錯しているNYらしさを体現していた、<ガバナーズ・ボール>。アクセスも非常に良いので(ただ終演後の会場近辺の治安に不安が)、フェスにあまり行き慣れていない人でも気軽に楽しめるはず。来年も開催されるはずなので、フェス前哨戦として足を運んでみてはいかがだろうか?
text by Takahisa Matsunaga
live photo by Erina Uemura