80年代のエレクトロ・ポップ・シーンにおいて、重要人物と言えば、バグルスのトレーヴァー・ホーン、エレクトロディスコの神であり、スパークス(Sparks)、ジャパン(Japan)といった多くのバンドを手掛けた、ジョルジオ・モロダー等数多くの名が上がる。しかし、昨今のシーンにおいて直接的な影響を与え、リヴァイヴァルの続くエレポップにおいての最重要人物は、ヴィンス・クラーク(以下:ヴィンス)以外にいないだろう。
ヴィンスは今や、世界最高峰のスタジアムバンドとして君臨する、デペッシュ・モードの創設メンバー、及びリーダーとしてデビュー。デペッシュ・モードでは彼のソングライティング・センスを生かした、どこか影があり、キッシュなエレクトロ・ポップを展開した。しかし、わずか1作を残して彼はバンドを脱退。そして、シンガーのアリソン・モイエを迎え、翌年にはヤズー(Yazoo)を結成した。ヤズーでは、まさに現行のエレクトロ・ポップの雛形とも呼べる、ポップでダンサンブルなエレクトロサウンドにソウルフルなヴォーカルをミックスさせる、スタイルを確立。(私はヤズーこそ、今最も再評価すべきバンドなのでは? と思う。)
Yazoo(Yaz)- “Don’ t Go”
しかし、ヤズーも長くは続かず、その後結成されたのが、このイレイジャー(Erasure)だ。イレジャーは当時相方を探していたヴィンスが、オーディションによって見つけ出したアンディ・ベル(当時から聖歌隊の経験があり、ヴィンスが惚れ込んだとか。まぁ、よく見つけてきた。)をヴォーカルに迎え、結成された。
Erasure – “Gaudete”
そんなヴィンス率いる、イレイジャーがこの度新作『ザ・ヴァイオレット・フレイム』を完成させたのだ。86年の結成以来、活動休止もほぼすることなく、コンスタントにリリースを続け、昨年のまさかのクリスマスアルバム『スノー・グローブ』(今年のクリスマスに是非!)に続く通算16作目だ。