14年の<フジロック>でキャリア31年にして待望の初来日(!)を果たしたUKの至宝、ウォーターボーイズ。80年代初頭に結成された彼らは、マイク・スコットを唯一のオリジナル・メンバーにして、作品や時期ごとにメンバーも音楽性も変えながら、フォーク、ケルト音楽、ゴスペルまで飲み込んだ独自のロックンロールを追究。93年に6作目を発表後一度解散するも、00年代に復活すると、その後はW.B.イェイツの詩を引用した11年の前作『An Appointment with Mr Yeats』が話題に。USインディの雄ザ・ウォー・オン・ドラッグスを筆頭に彼らからの影響を公言する若手が続々台頭したり、14年にはプリンスもライヴで彼らの楽曲をカヴァーしたり(バンドもプリンスの曲をカヴァーしていて相思相愛の関係)、春にはなんと初の単独来日も決定したりと、ここにきてふたたび最盛期を迎えている印象だ。

そしてこの最新作『モダン・ブルース』では、キャリア史上初めてアメリカ音楽の聖地ナッシュヴィルでレコーディングを敢行。同地で活躍するジャック・ホワイトやブラック・キーズにも刺激を受けながら、サザン・ソウルの名シンガー、ドン・ブライアントなどアメリカ人ミュージシャンを招集し、米南部のソウル・ミュージックやサザン・ロックを溶かし込んだ彼ら流の“モダン・ブルース”を完成させている。また、全編にはジャック・ケルアック『路上』からの引用や近藤智洋(元PEALOUT)“The Midnight Chord(真夜中のコード)”のサンプリング、はたまたエルヴィス・プレスリーらレジェンドが多数登場する楽曲など、ユニークな新機軸も多数。「ウォーターボーイズってちょっと渋そうだし……」と二の足を踏んでいた日本のリスナーにも、彼らの魅力が届きやすい環境が整ったと言えるんじゃないだろうか。

そこで今回は、中心人物のマイクに新作での変化、そして今のウォーターボーイズを取り巻く状況についてインタビュー! どうやらこの新作には、90年代のバンド解散時に日本で経験した思い出も反映されているようで……?

The Waterboys -“Beautiful Now”

Interview:The Waterboys

――W.B.イェイツの詩を歌詞に引用した前作『An Appointment with Mr Yeats』のツアーは大規模なものでした。このツアーはあなたにとってどんな体験になりましたか。

とても良かったよ、毎晩W.B.イェイツの詩を歌うことができるなんて、最高の経験さ。世界的な詩の数々の世界に飛び込み、それを音楽に落とし込んで演奏して回るのは本当に楽しかった。

――それまでのツアーとの特に大きな違いは何でしたか?

すごく単純な違いは、歌詞を自分で書いていないから、暗記するのが難しかったことだね。これまでは自分で書いた歌詞だったから、どの行もどのヴァースも、自分がなぜそれを書いたのか覚えていたからさ。でもイェイツの詩を覚えるには、記憶力をフルに使わなきゃならなくて、まるで学校に戻って詩の暗唱をしているみたいだった。カフェの行き帰りに道を歩きながら何度も何度も暗唱して、全部をしっかり覚えるまで繰り返した(笑)。おかげで幸い、最初のショウまでに全部覚えることが出来たよ。

――そこで得た経験が、新作を作る上での新たなモチベーションやインスパイア源に繋がった部分はあったのでしょうか。

意識的なレベルでは特になかったね。でも、何年もイェイツの詩に向き合うことで、自分自身の書く詩に求める基準が高くなった。少なくとも、より高い水準のものを書くように努力したよ。元々僕は詞作にはかなりの注意を払ってきたから、それがすごく大きな変化かといえばそうでもないと思うけれど。

――実際、ウォーターボーイズの大きな魅力として、あなたの歌詞を挙げる人は多いです。歌詞を書く上で大切にしているのはどんなことですか? また、詞作の上で影響を受けたアーティストを教えてください。

僕にとって一番大事なことは、それが自分自身のスイッチを入れてくれるようなものであることなんだ。自分を刺激したり、自分の喜びになるようなものであること。そして良く韻を踏んでいないといけないよ。歌詞について影響を受けたアーティストは沢山いるんだ! まず誰よりもボブ・ディランだね。10代の頃にディランを深く聴き込んでいたし、それ以降も聴き続けている。詞作について僕が知っていることのほとんどは彼から学んだんだ。他の偉大な作詞家を挙げると、ハンク・ウィリアムスはシンプルながらとても深い詞を書くよ。“Your Cheatin Heart”や“Hey Good Lookin”なんかが良い例だ。それにレナード・コーエンは職人だね、彼は年を取るにつれてディランをも超えたと思う。ジョン・レノンも素晴らしい。あとそうだ、スモーキー・ロビンソンもね。

Hank Williams -“Your Cheatin Heart”

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