1970年代末より、〈ON-U〉を牽引し、UKのルーツ・ダブのみならず、ポスト・パンク、そしてダンス・ミュージックにおいても、“ダブ”道を邁進してきたエイドリアン・シャーウッド。そして2005年にレーベル〈Tectonic〉を設立し、ブリストル・ダブステップの頭目として、ベース・ミュージックを進化させてきたピンチ。先日この2人によるコラボ、シャーウッド&ピンチのアルバムデビュー作『Late Night Endless』が、日本先行リリースされた。
現在のテクノ/電子音響など、エレクトロニック・ミュージックの“現在”をも飲み込み、“空気の暴力”とも言えそうなベースが支配する、巨大なうねりとなるエレクトロニック・ダブの最新型である本作。さらにマスタリングは、ベーシック・チャンネル傘下の伝説のスタジオ、Dubplate&Masteringのラシャド・ベッカーが手がけており、もはや“空間芸術”とも言えるサウンドそのものの“鳴り”が表現されている。
そして今回このシャーウッド&ピンチより、ピンチのインタビューが到着! エイドリアンとの出会いからコラボレートに至るいきさつや、長いプロセスを経て制作された今作にかける想い、そして2人のこれからまでたっぷりと語られた、密度の濃いインタビューは必見である!
Interview:ピンチ(シャーウッド&ピンチ)
––––まずはエイドリアン・シャーウッドに対して、このコラボレートをはじめる前のあなたの彼に対する思い入れがあれば教えてください。
そうだね、僕はエイドリアンの音楽、彼が様々なフォーマットを通じて作ってきた音楽を聴きながら育ってきたんだよ。僕の兄はダブ・ミュージックの大ファンだったし、〈ON-U Sound〉のカタログにも好きな作品がたくさんあるって具合で。そんなわけでそれこそ10歳くらいの頃から、僕は『Pay It All Back』コンピレーション・シリーズだとかダブ・シンジケートのアルバム、アフリカン・ヘッドチャージ、タックヘッドなんかを聴いていた。だから文字通り僕は「エイドリアンの音楽を数多く聴きながら大きくなった」し、僕自身のプロダクションにおけるアプローチの影響になっているのは間違いない、彼はそういう人だね。その影響は多岐にわたるけど、たとえば僕は彼のサンプリングの使い方、あの、サンプルをぶつけ合ってちょっと妙な雰囲気をクリエイトするやり方なんかが大好きでね。うん(笑)、ああいうのは僕個人の音楽的な興味にもばっちりハマるものなんだ。だから、自分がガキだった頃から、その存在はしっかり意識してた、そういう人だね。
––––あなたにとっての最初の音楽的な影響源/ルーツのひとつは彼だっていう。
確実にそうだね。というのも、若い頃はより多くを吸収できるっていうのかな。「これは自分にとって大切だ」って感じで影響を強く受けるものだし、大人になってからよりも、若い頃に触れたものの方が重要性を帯びるものじゃないかな。だから、素晴らしいことだと思う。こうしてあの頃から20年経って、自分はエイドリアンと一緒に仕事できる、やろうと思えばすぐに彼とやれる状況になったんだからね。
––––彼はさまざまなプロジェクトを行っていますが、どのプロジェクトが好きですか? その理由も教えてください。またフェイヴァリット・ディスクを1枚あげてください。
んー、選ぶのはすごく難しいなぁ! ってのも、どのプロジェクトも別物なわけで、それぞれ異なる目的のためにやったってものが多いし、しかもそのどれもが見事な出来だからね。ただ、自分にとってもっとも心に残るプロジェクトと言えば、たぶん……ダブ・シンジケートだね。あれは間違いなく、僕個人としても聴いていてすごくエンジョイできたし……特に『The Pounding System』ってアルバムが好きだな。まあ、ダブ・シンジケートのアルバムはどれもグレイトなんだけども。