––––ちなみに彼が80年代にやっていたインダストリアル・バンドのダブは、現在のあなたの〈CO.LD〉の質感にも通じるところがあると思うのですが、いかがでしょうか?

んー、正直言って、自分としては考えてもみなかったし……彼の昔の音楽と〈CO.LD〉とのつながりを自分でも感じたってことは一切ないな。ただ、それは納得がいく意見だと思うよ、まったくそうだよね––––だから、エイドリアンがかつてやっていた実験的なインダストリアル・ミュージック、そういったものの多くはその後の音楽をインスパイアしていくことになったし、インスピレーションは色んなものに発展していった。たとえばとても評価されているプロジェクト、ナイン・インチ・ネイルズなんかがそうだけど、直接的であれ間接的にであれ、エイドリアンがやるような音楽から多く影響を引いているのが見て取れる、あれはそういうプロジェクトなわけだよね? で、僕が思うに、とても自由で流れに任せていく、そういうフリーな姿勢を音楽に対して持つ美点のひとつというのは、普通だったら結びつきを見出せないような色んなものを関連づけることができる、という点で。だから、今の僕達には簡単に20年前、30年前を振り返ることができるし、そうやって振り返ればそれらの音楽がいかにしてつながっていたかも楽に見て取れるわけだよね? ただ、と同時にとても興味深いのは、あの当時、そういうつながりの見えにくかった時期に、実際ある人間が、ああやってごく自然なやり方で実に様々なものをコネクトさせていった、ということで。そこを考えると面白いよ。

––––エイドリアンとはじめて直接あったのは、いつ頃、どんなときですか?

はじめて彼に会ったのは、えーと……確かあれは、今から数えると3年くらい前になるかな? 僕はあの頃ロンドンにある「Fabric」って名前のナイト•クラブと何年か仕事していてね。そこで〈Tectonic〉のレーベル・ナイト、クラブを全部使っての〈Tectonic〉イベントをやっていたんだよ。で、3年くらい前に僕はその<Tectonic Night>の一環として、エイドリアンを招待して一晩プレイしてもらう機会を得ることができてね。僕は永年彼の音楽のファンだったわけだし、ああして彼に来てもらえることになったのはとてもエキサイティングだった。で、そのイベントの晩に彼とは実際ほんのちょっとしか話せなかったんだけど、それでも彼は「お返し」をしてくれたっていうのかな、パリで行われた〈ON-U Sound〉のショウに僕を招待してくれたんだ。そこでやっとエイドリアンとちゃんとつるむこともできたし、色々な話もできてね。で、お互いに気づいたんだよ、僕達はとてもウマが合うし、かつ、ふたりともちょっと病んだ感じの、ブラックなユーモア・センスの持ち主だってことに。

––––(笑)。

(笑)。おかげでビールもずいぶん進んだっけ! うん、というわけで、僕達はランズ・エンド、エイドリアンが住んでいる街だけど、そこで一緒にスタジオに入ることに決めてね。その時のそもそものアイデアというのは、とにかくお互いの手持ちのマテリアルを引っ張ってきて、それを元に何がしかエクスクルーシヴなダブ・プレートを何枚か作り上げてみよう、そういうものだった。そうやって、まず何か軽く一緒にプレイしてみようじゃないか、と。ところが、僕達はなんというか、あっという間に「ダブ・プレート数枚」のレベルから先に進んでしまったっていうのかな。今でも覚えてるけど、あのスタジオにいた時、僕は彼に向かって「エイドリアン、さて次は何をやろうか?」と声をかけたんだよ。すると、彼は僕をきっと見据えて(語気を強めて)「俺達は一緒にアルバムをやるべきだ!」と返してきてさ(笑)。

––––ワーオ(笑)。

で、僕としても「オ、オッケー、了解っす!」みたいな(笑)。「それは楽しそうだな」、と。

––––(笑)。

というわけで、そこから2年半経った今、こうして僕達はアルバム1枚をモノにしたっていう。

––––でも、このアルバムの前に、あなた達は確かEP他でコラボレーションしたんですよね? そうやって、お互いを探っていった上でのこの成果、と。

その通りだね。まずはじめにやったのは、“Effective”っていう曲(※『Survival&Resistance』収録)があって、僕はそこで少々リワーキングをやったというのかな、ドラムをちょっと加えたりベース部をいじったりとか、曲のパーツをちょっと入れ替えるっていう。うん、基本的にはそれが僕達ふたりのコラボのはじまりで、その次にやったのは僕達にとって正式なシングルの1枚目である『Bring Me Weed』の12インチだったっていう。で、その次には『Music Killer』EPをやって……あれは去年の話だったな。うん、で、こうして僕達はアルバムを完成させたわけだ。

次ページ:個々の構成要素ではなく、ふたつが合わさって生まれた何か