カット・コピーやヴァン・シーら〈モジュラー〉勢のブレイクを経て、10年代に入ってからもシドニー/メルボルンといった南東部の海岸沿いからフルームやチェット・フェイカー、フライト・ファシリティーズ、ウェーヴ・レーサーといった〈フューチャー・クラシック〉勢を中心に新鋭が続々台頭。彼らが豪州版<グラミー賞>こと<ARIAアワーズ>や全豪チャートに続々名乗りを上げたことで、今ふたたび大きな注目を浴びつつあるオーストラリアのエレクトロニック・シーン。その中にあって、マイアミ・ホラーが10年にリリースしたデビュー作『イルミネーション』は、太陽の日差しや海岸線を思わせるきらびやかなディスコ・サウンドで、ダフト・パンクの“Get Lucky”やファレル・ウィリアムスの“Happy”で巻き起こった現在のディスコ/ファンク再評価をある意味先駆けた好盤のひとつだった。
彼らの5年ぶりの最新作『オール・ポッシブル・フューチャーズ』は、そうした従来の魅力はそのまま、ソングライティングにより力を注ぎ、サウンドと歌詞双方のクオリティを引き上げた一枚。デビュー作のツアーを終えた彼らは、LAに移住し、中心人物のベンジャミン・プラントはアーロン・シャナハンと共にワンダー・ワンダーとしてサイケをブレンドしたオーソドックスな作曲方法を追究。その後LAやメルボルン、世界各地で制作されたというこの作品では、豪州注目の新鋭CLEOPOLDや、スーパーヒューマノイズのサラ・チャーノフ、ベースキャンプのアーロン・ミラー、トキモンスタ作品でお馴染みのギャヴィン・トゥレクといった多彩なゲストを迎え、ディスコ、エレクトロ、インディ・ロックからR&Bに至るまで、過去と比べてもカラフルに様々な音楽性を横断する、ポップでサマーブリージンなマイアミ・ホラー・サウンドの発展形を手にいれている。
彼らが新作に込めた思いとは、一体? ベンジャミン・プラントにメール・インタビューで話を訊いた。
『オール・ポッシブル・フューチャーズ』ジャケット
Interview:Miami Horror[Benjamin Plant(Productio, Synth,Bass)]
――前作から約5年振りの新作が完成しましたね。まずはこの5年間をどのように過ごしていたかを振り返ってもらえますか?
デビュー・アルバム『イルミネーション』(10年)をリリースした後の一年間は、ほとんどの時間をツアーで回っていて、11年の年末にはLAへ移住したんだ。その後、僕らはワンダー・ワンダー(メンバーのベンジャミン・プラントとアーロン・シャナハンによる別プロジェクト)の制作もしていたし、ジョッシュ(・モリアーティー)もバントとは別のプロジェクト(オール・ザ・カラーズというヴィンテージ・ロック・プロジェクト)に参加していた。それらを経た後の13年から、今回のアルバムの制作を本格的に開始したんだ。LAへ移住してからは、まずは生活環境に慣れることからスタートしたよ。音楽だけではなく、日常生活を楽しむこと……プール・パーティーだったりデザート・ホリデイ(笑)? だったり、とにかく毎日を楽しんで過ごしていたんだ。
Miami Horror –“Holidays”(『イルミネーション』収録。ネオン・インディアンが参加)
Miami Horror –“I Look To You”(『イルミネーション』収録。キンブラが参加)
Wunder Wunder –“Coastline”
All The Colours –“Shame”