2016年の洋楽シーンにおいて、もっともリスナーをザワつかせた1曲は間違いなくプライマル・スクリームの“Where the Light Gets In”。世界が恋するイット・ガール、スカイ・フェレイラとのコテコテなデュエットを披露するこのナンバーは、まさにバンドの……というか、フロントマン=ボビー・ギレスピーの良い意味での「節操のなさ」が発揮された超ド級のエレクトロ・ポップだった。ここ数年のプライマル作品にピンと来なかったファンも、「もしかして次のアルバム、大傑作なんじゃねーの?」と期待に胸を膨らませたはず。
photo by Sam Christmas
▶ Primal Scream, Sky Ferreira – Where The Light Gets In
そんなプライマル・スクリームが、本日、3年ぶり11枚目となる新作『カオスモシス』をリリース。2008年の9th『ビューティフル・フューチャー』でコラボしたビヨーン・イットリング(ピーター・ビヨーン&ジョン)を再び指名し、ボビーの妹分と呼べるハイムや、キャッツ・アイ(ホラーズのファリス・バドワンによるサイド・プロジェクト)のレイチェル・ゼフィラ、そして先述のスカイといったフィメール・アーティストたちを迎えた今作は、かつてなく自由で開放感のあるサウンド&グルーヴが渦を巻いている。オープナー“Trippin’ on Your Love”を彩るピアノやパーカッションの高揚感、ハイム3姉妹との息の合ったゴスペル風コーラスは、真っ先に1991年の名盤『スクリーマデリカ』を連想するかもしれない。しかし、2曲目は一転してチープなディスコ・パンクを投下――と、決して一筋縄ではいかないのがプライマルズ・サウンドの面白いところだ。
『カオスモシス』ジャケット
▶ Primal Scream – It’s Alright, It’s Ok – Glastonbury 2013
↑前作『モア・ライト』(2013年)収録のシングル曲をハイムと共演した際の映像。この頃から今作でのコラボを考えていたという
そこで今回は、雄に30年を超えるキャリアを持つプライマル・スクリームの「スゴさ」を、3つの視点から検証していきたいと思う。そして、新たなる名盤『カオスモシス』をもっと深く味わい尽くしてもらえれば幸いだ。
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