日曜午後9時、夕飯を包んでいたサランラップを取り外すとあたたかな湯気がたちまち部屋に流れ込む
「カーン、カーン、カーン。」近所の踏切から危険を知らせる警告音が聞こえ、思わず窓を開けてしまう
寒そうに歩くお婆ちゃんと、お婆ちゃんに歩調を合わせる犬
小さな優しさに包まれた日曜午後9時
また始まる一週間のための、自分だけのたまらなく愛おしい時間
そんな時、思わず手にとってしまう私の大好きな漫画本を二冊紹介してみようと思う
1.「夕方までに帰るよ」/ 宮崎夏次系
意味を持たずして意味を彷彿させられるような題名に惹かれて完全にパッケージ買いしてしまった一冊。
(この一冊から、まんまと宮崎夏次系さんにハマり、大ファンとなりました)
「偽りの幸せは、絶望の味がする」
その説明文の通り(?)偽りの幸せを送っていた姉弟の話、というよりは、本当の幸せを送っていたつもりが偽りだと気がついたというストーリーなのですが、説明し難い宮崎夏次系さんワールドが炸裂していて、とても読んでいただきたい一冊です。
弟が大好きな”優秀だったお姉ちゃん”は実は偽りのお姉ちゃんで、そんな偽りに嫌気がさしたお姉ちゃんが、ある事情でひきこもりになり、段ボールで顔を覆って生活していたりします。
一見あたたかく描かれた情景に、どこか空白感や寂しさを感じさせるイラスト。意味もわからないまま胸がキュッと苦しくなるかと思えば、笑いも止まりません。
自由にぐにゃぐにゃと描かれたイラストの線やびっくりするほど突発的な言葉やストーリーの展開が本当にシュール。
姉が、弟に突然「出てってよおもらし太郎」と言い放ったり、なんでここでそうなるの!?と読んでいる途中のひとりツッコミが絶えません。
読んでいても読み終わってもとにかく訳が分からない、理解できなさすぎる感性で完全に想像力。読み手によって十も百も出来てしまう様な宮崎夏次系さんの魅力が全開の一冊です。
2.「センネン画報」/今日マチ子
もともとイラストレーターである今日マチ子さん描き下ろしのイラスト漫画集。
(お風呂でも毎日読んでいた程大好きで、読み過ぎてボロボロになってしまいました)
コマで描かれた情景マンガです。
言葉はほとんどなく、イラストだけで描かれた独特の世界観。
コピックの綺麗な水彩色で描かれた恋愛ストーリーや日常の些細な場面。
人が幸せを感じる瞬間や、四季に訪れる匂いでフとどうしようもない寂しがこみ上げてくるような、そんな気持ちが繊細に表現されている一冊です。
言葉が無いからこその「なんだかこの瞬間の気持ちわかるなあ」と読むだけでは無く感じられる本。
ほっこりとしたりキュンとしたり、青春がギュッと詰め込まれていて居た堪れなくなります。
大切なことを思い出したり、小さな幸せを大事にしようと思えるような一冊です。
漫画を読み終えると、あっという間に12時を回っていた。おばあちゃんにそっと寄り添いながら歩いていたあの犬の気持ちを想像しながら、眠りについた。
「タライ・ラマ」兎と書いて”たらを” 生粋の兎好き。
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