90年代に登場、世界を席巻したミステリアスなドラマ『ツイン・ピークス』が、25年の時を経て新作『ツイン・ピークス』として帰ってきました。(7月22日よりWOWOWプライムにて独占放送 ※第1話無料放送)
『ツイン・ピークス』は田舎町ツイン・ピークスで発生した、町で一番と評判だった美少女ローラ・パーマーの殺人事件をめぐり、主人公・デイル・クーパー捜査官を中心に捜査が進む中、町の裏でうごめく愛憎や欲望、裏切りに満ちた人間関係と、次々と常識を越えた怪現象が交錯する様子を描いた異色のミステリー作品。テレビにて奇才・デヴィッド・リンチ監督の独特の世界観が描かれた映像は、当時大きな話題となりました。
ローラの「25年後に会いましょう」という謎のメッセージで、前シーズンの『ツイン・ピークス』の最終回はクリフ・ハンガー(エンディングを不確かな形にして、結末を視聴者の想像に委ねる表現方法)の形で終わり、多くのピーカー(ツイン・ピークスの熱狂的なファンの俗称)の間ではそのストーリーに対して様々な思惑がめぐりましたが、ローラのメッセージに従うかのように、物語は新たな局面を迎えます。
そして、新たなストーリーの日本上陸に合わせ、主人公クーパー捜査官役を務めた俳優のカイル・マクラクランがプロモーションのために来日、歓迎の来日イベントでは満面の笑顔を振りまく一方で、新たなシーズンに再びオファーを受けたことに大きな興奮を覚えたと語っていました。今回はそんなカイルに、新シーズン参加までの経緯や撮影に向けての取り組みなどを語ってもらいました。
Interview:カイル・マクラクラン
デヴィッド・リンチ監督と「また一緒に仕事ができて、本当に嬉しい」
——今回のシーズンについておうかがいしたいのですが、まずそもそも25年前の最後のシーズンが終わった時点で、25年後にこういう新しいシーズンを考えている、といったお話は当時デヴィッド監督とはされていたのでしょうか?
実はそういう話は全然無かったんだ。前シーズンは、ABC放送が打ち切りを決めた時に、そこで終わる形になった。僕はそれはとても不本意だったんだけどね。というのは、新しいポテンシャルというか、「(悪人キャラクターの)ボブが乗り移ったクーパー」という新しいキャラクターが出てきたころで、演じることにとても可能性を感じていたからね。
——そうでしたか。一方で最終回に登場したローラが残したメッセージ「25年後に会いましょう」という最後のセリフからは、カイルさん自身としては何かあるのではないか、と考えたことはありませんでしたか?
いや、僕は当時そうは思ってなかったね。ただ近年SNSが充実している中で、ちょうど25年が過ぎようとするこの時期にきて、多くのファンから僕やデヴィッド監督、マーク・フロスト(脚本家)に向けて「そろそろ25年になるけど、そろそろ新しいシーズンが始まるんじゃないか?」というファンの声が上がっていた。それが最終的にクリエイターたちを突き動かしたんだと思う。
——以前のシーズンが放送されていたころは、本作以外でもカイルさんとデヴィッド監督が頻繁に仕事をともにされていた時期でしたね。今回25年ぶりに一緒に組んでお仕事をされた感想はいかがでしたか? またこの年月の間には、デヴィッド監督とは連絡を取られていましたか?
彼はL.A.の、僕の家のすぐ近くに住んでいるんだ。だから度々会っているし、一緒に過去の話をしたり、今何をしているかなんてことも話したり、そういう友情をずっと築いてきているんだよ。もちろん映画やテレビ業界以外の話もしているし。だからやはりまた彼と仕事をしたいという気持ちはずっとあったね。彼はある意味唯一無二の存在で、彼にしか作れない世界観がある。だからその中で演じることはとても僕にとっては楽しい。だからこうやってまた一緒に仕事ができて、本当に嬉しいんだ。
——前回のシーズンは、日本国内では海外ドラマブームの走り的な存在として認識されており、その意味ではとても大きな作品だと思うのですが、カイルさん自身は前シーズン出演後、他の作品にも出演された中で、25年の月日が流れた現在、自分自身思われることはありますか?
そうだね。この作品は日本のみならず世界中の人々に、非常に大きなインパクトを与えたと思う。テレビ業界においても同様にね。何しろとても普通ではなかったし、キャラクターが全く予想できない行動をしたり、予測できない展開もあったり。また映像が難解で非常に抽象的だったり、見たことの無い奇妙な情景があったりと、そんな驚きの連続の中で、みんなが反応した。そしてまた音楽もすごく特徴的で引き込まれるものだった。
そんなわけで、全てにおいて新鮮で新しかったと思う。そして「ツイン・ピークス」以降にいろんな作品が生まれた。それらは決してマネしているわけじゃないけど、いろんな情景やイメージ、映像が非常にクリエイティブで、芸術的なものだったね。デヴィッド・チェイスなんかの新しいクリエイターも登場してきたし。非常に今までとは違う伝統を作ったし。そういった流れを作ったのが「ツイン・ピークス」じゃないかと思う。
——逆にカイルさんが「ツイン・ピークス」に出演されたことが、自分の役者としての活動で足かせになったことは無いですか?
いや、そういうことは無いと思うな。僕は他の俳優と同じことはやっていないんだ。より普通じゃないとか、予測できないようなこと、役をオファーされたこともあるけど、その時は余計に自分の仕事が楽しくなったしね。