ドラマー/ヴォーカリストとしての役割を同時にこなす独創的なスタイルで人気を集めるミュージシャン、シシド・カフカ。
彼女がデジタル配信曲を3ヵ月連続でリリースするプロジェクトがいよいよ佳境を迎えている。ここではゲストミュージシャン/プロデューサーを多数迎えた15年の『K5(Kの累乗)』や16年の『トリドリ』に連なる形で、楽曲ごとに豪華アーティストとコラボレーション。
10月の“羽田ブルース”でクレイジーケンバンドの横山剣を、11月の“新宿サノバガン(SUN OF A GUN)”でザ・クロマニヨンズの真島昌利を、RIZEやソロとしても活躍する金子ノブアキを迎えて、楽曲ごとに彼女の新たな表情を詰め込んでいる。
それに加えて、今年はNHKの連続TV小説『ひよっこ』や『視覚探偵 日暮旅人』、『カンナさーん!』といった多くのドラマ/CMに出演するなど、かねてから音楽活動と並行する形で続けてきた女優/タレント業も、大忙しだった彼女。
果たしてこの2017年は、どんな年になったのだろうか? 実は大学時代に写真学科を専攻していたシシド・カフカがこの1年を切り取った9枚の写真から、「シシド・カフカの2017年」を振り返ってもらった。
Interview:シシド・カフカ
——今回はカフカさんに撮ってもらった写真を見ながら、2017年を振り返ってもらえると嬉しいです。まず、猫の写真が2つありますが、これはカフカさんが飼っている猫ですか?
うちは動物が飼えないので、友達の猫ちゃんですね。たまに会わせてもらって癒されているんですよ。最近は猫愛が止まらなくなってきていて、職にあぶれたら動物保護センターで働こうかと思っているくらいです(笑)。いろんな人が「猫を飼ってる」という話をするたびに、私が「家行っていいですか!」って。
——(笑)。じゃあ、プライベートで遊びに行った時の写真ですね。
そうです。左の子は鼻がかわいくて、警戒心がない子なので、寝転がっている間に私がお土産で持って行ったぬいぐるみを鼻先にくっつけて撮ってみました。右の写真はまた別の猫ちゃんで、実はこの視線の先にドーナツがあるんです。でも、テーブルに上がると飼い主さんに怒られてしまうので、首だけ出してずっとドーナツを狙ってる……(笑)。
昔は犬派だったんですけど、猫は力の抜け具合と距離感が好きですね。感情を読み取るのも上手で、他のよく会う猫ちゃんも、ふだんは遊びに行っても「来たんだ」という感じですぐどこかに行ってしまうのに、私の精神状態がよくないときには、ワーっと寄ってきて「大丈夫?」という感じでずっとスリスリしてくれるんですよ。精神状態という意味で、今年は、オン/オフの切り替えを意識して、前より家にいるようにもなりましたし、仕事以外の時間が自分にとって大切な時間になってきたので、そこでゆっくり作業したり、物事を考えたりする時間をちゃんと設けられるようになりました。
——このおいしそうなカツサンドの写真もたまらないですね。
これは阿佐ヶ谷にある『SATOブリアン』のカツサンド。(カフカさんが久坂早苗役で出演したNHK連続TV小説)『ひよっこ』の出演者のみなさんと一緒に食事に連れて行っていただいたときの写真です。この日は省吾さん(佐々木蔵之介)、元治さん(やついいちろう)、高子さん(佐藤仁美)……すずふり亭メンバーが多かったのかな。あと、ヒデ(磯村勇斗)と島谷(竹内涼真)、スタッフさんがひとりいて、有村架純ちゃんが来れなかったんだと思います。
撮影がはじまって最初のころの、まだ少し寒かった時期だと思いますね。メイクをしていたらたまたま予約が取れたそうで「行きますか?」と誘ってもらって、「肉ですか? 行きます!」と(笑)。コースで出てくるんですけど、すごく美味しかったです。ドラマーは食べるのも仕事だったりするので、お肉を食べて精力をつけて、という感じですね。
——おいしいものを食べるためのいいわけでは……。
ないです、必要なことなので(笑)! 写真で見ると赤身でほぼ火が通っていないようにも見えますけど、私はレアがすごく好きなんですよ。この日は、お肉の話とか、みんなで他愛のない話をしました。あと、私が撮影に慣れていないので、そこで舞台とドラマの違いを聞いてみたり、「皆さんよくお食事行かれるんですか?」と質問してみたりもしました。でも、基本はみんな肉に集中していましたよ。
——雰囲気のいい現場だったんですね。
すごく和やかでした。それに、全員が(有村)架純ちゃんに向かって作り上げているイメージで、本当にみんなが架純ちゃんに惚れてやっているんだなぁって。スタッフさんなんかは特にそうで、その和やかさは画面にも表われるんだなということをすごく感じました。
——カフカさん自身はどんなことを意識して役にのぞみましたか?
これまでの役と同じように今回も強い女ではありましたけど、今までは表面的なものは強い女性のまま、内面的にちょっと動かされたりするイメージの演技が多かったと思うんですよ。でも今回の早苗は、表面的なところでも変化していくので、その部分は丁寧に考えました。「ここでこういう言葉を言うということは、何割笑っていてよくて、何割こういう反応をしよう」ということを、自分の中ではちょっとずつ変えていったつもりなんです。
その割合が大きく変わったのが、炊事場で島谷(竹内涼真)に詰め寄られたシーンです。早苗は会社でもお局さんだし、言葉も強いし口も立つしで、誰も特に何も言わない、「早苗さんってそういう感じですよね」という雰囲気で。それが同じくらい達者に責められて「仲良くなりたいがためのお節介なんでしょ」って認める瞬間から、やっといろんな変化が出てきた気がします。
——これはなんでしょう?
すごく久しぶりにバイト時代の仲間と集まった時の、お酒の席での写真ですね。
——デビュー前、下積み時代に5年間ほどやっていたという……?
そうです。昔、働いている時はその人たちと休みの日に飲みに行ったりしていたんですけど、デビューしてからはそういう機会がほとんどなくて。でも、この間たまたま日程が合って、飲みに行くことができました。久しぶりに腰を据えてみんなで話をして、「仲間っていいな」と思いました。もちろん、今は今で仲間がいますけど、私のダメだった時代を知っている人がまだ一緒にお酒を飲んでくれて、「あれはダメだよ!」ってダメ出しをされて、「でも、こうこうだから!」って言い返したりもして。それってすごくいい関係だと思うんです。
もう10年くらい付き合いがあるメンバーで、男女も混ざっていて歳だっていろいろで。でも未だにみんなで隔たりなく飲めるのって、すてきなことですよね。しかも、まだ当時と同じことで笑えるというのが嬉しくて。ちょっとホームに戻ったような感覚でした。「この日の写真をInstagramに載せたい」と言ったら、みんながグラスを上げてくれて撮った写真です。