毎日真夏日が続く今日この頃。こんな時は音楽を聴いて、ここではないどこかへと誘ってもらいたい。思いっきり熱い音楽で夏を満喫してもいいし、違う季節の曲を聴いて気持ちだけでも、その歌われている季節に佇むも良し。中には季節無関係な音楽に身を委ね、しばし浮世から離れてみてもいいかも……。

Plastic Treeは、いつでも、どのようなライブでも、どんなお客さんの前でも、自身の世界観を終始曲げずに展開し、逆にそこにみなを誘ってきた。

そんな彼らがニューシングル『インサイドアウト』を発売した。昨年デビュー20周年を迎え、これまで、現在、そしてこれからを示唆する意欲的な前作アルバム『doorAdore』から間を空けずリリースする今作は、自身の王道の音楽性を用いながらも、より多くの人に分かりやすく伝わりやすい、まさに良質なポップスと呼べるタイトル曲を含んだ2曲入り。

中でもタイトル曲の“インサイドアウト”は、どこか夏の夜明けのマジックアワーを想い浮かばせる、間口も広く親しみやすい分、多くの人を「ここではないどこか」へと誘ってくれる楽曲だ。

Plastic Tree/インサイドアウト【MUSIC VIDEO】

そんな彼らは夏をどのように過ごし、夏が来るとどのような楽曲を聴いているのだろう? ボーカルの有村竜太朗とベースの長谷川正が答えてくれた。

Interview:Plastic Tree

——今回は夏をテーマにお話をお聞きしていきますが、ぶっちゃけ、みなさんと夏の結びつきが思い浮かびません(笑)。

有村竜太朗(以下、有村) 基本的に得意じゃないですからね。今日、この取材場所に向かうだけでも(暑さで)溶けそうになりました。息も絶え絶え(笑)。昔から暑さは苦手でしたけど、ここにきてそれが顕著になってきてて。季節的には好きですが、気温的にはあまり好きではないですね(笑)。

長谷川正(以下、長谷川) どこか遊びに行ったりするには、いい季節ですけどね。それも昔からの夏休みの印象が大きいからなんだろうけど。なんか他の季節以上にアクティブなことができるイメージはあります。

有村 暗くなるのが遅いのが、またいいですよね。

——ちなみに今年の夏はどのようにして過ごしていますか?

有村 こう熱いと一日家に居ますね。それこそ用事がなければ、ほぼ外出しません。楽曲制作ばかりしてます。

——夏こそレコーディングスタジオはいいですよね? 機材の関係もあってクーラーがガンガンに効いていて(笑)。

有村 確かに。地下だしね。

長谷川 地下もいいけど、夏の野外フェス、あの感じも好きなんですよね。観に行くのはなかなか勇気が要りますが、こと自分たちがステージに立つことに関しては嫌いじゃない。

——その好きなのは主にプレイしている自分ですか? それともステージから見える景色や壮観さですか?

長谷川 両方ですね。あの雰囲気や空気感とでも言うか。非日常的なアクティブさがあるじゃないですか、あそこには。自分たちの中でもライブハウスとではライブの魅せ方も違うし。その辺りの面白さはあります。

——その魅せ方の違いというのを、もう少し詳しく。

長谷川 演奏の力の入れ方等は、双方特に変わらないんですが、単純にイメージとして、あの屋根のないステージでの演奏する非日常感ですよね。開放的な部分も手伝って、音もどこまでも飛んでいきそうな気がしてプレイが出来るんです。

——その際は、どのようなことを思ったり、考えながらプレイを?

長谷川 見せつけたい気持ちもあれば、逆に遠くで眺めていたり、耳に入っている人たちのBGM的であって欲しい。そんな感じかな。もちろん、せっかくの機会なので、自分たちをしっかり観てもらい、惹き込みたい気持ちもありますが、例えば木陰等で涼んでいて、そこに自分たちの音楽がどこからか聴こえてくる。それも夏の野外フェスの楽しみや醍醐味でしょうから。盛り上がるのもいいし、どこかでのんびりとチルするのもいいし。

有村 僕も自然の中で演るのは大好きです。ある種、いつもの自分たちからしたら非日常的な場所でのライブじゃないですか。例えば自分たちの演奏が止んだ時に蝉の鳴き声が聞こえてきたり。ああいった瞬間は、外で演ってるって実感が凄くしますね。

——非現実からふと現実に戻る瞬間はライブハウス等よりも明確だし、メリハリがありそうですね。

有村 それらが溶け合い、混じり合う感じというか。やはりライブハウスはどこか密閉的な空間ですからね。それによって即非現実な世界へと誘えますが、やはり日常の中でどれだけ非日常的なことを味わってもらえるか? もあるじゃないですか。そこでのエネルギーの使い方は違っていて面白いですね。魅力でもあります。

長谷川 とは言え、特に演り分けてはいませんけどね。もちろん幅広い人たちや初見の人たちも多いので、その辺りの選曲は考えますが、演奏や歌に関しては、いつも通りのライブを演るだけですから。それが最も自分たちを伝える手段だし。逆にお客さんから普段の自分たちとどう違って映るのか? には興味はあります。

——でも、私からするとみなさんの場合は、逆に日常から非日常に皆を引っ張り込めるバンドの印象があります。

長谷川 確かにその場の雰囲気やシチュエーションに合わせるよりかは、その場の空気感や雰囲気を変えようと挑んでいるところはあるかも。そのような面白さもありますもんね。あとはやはりフェスは、あのお祭り感。あの感じも好きなんです。なんかワクワクしてくる。

——この夏にしてみたいことってありますか?

有村 キャンプとかしてみたいですね。とは言え、以前行ってあまりの暑さに後悔したことがありましたけど。蚊も多かったし。あとは、お祭りも好きなので、どこかお祭りにはいきたいかな。やはり夏の風物詩ですからね。盆踊りとかでもいいし。景観のあるお祭りだったらなお嬉しいです。

——お祭りいいですね。

長谷川 地元の祭りにしても、幻想的な非日常があるじゃないですか。いつもと違った街並みや風景が突如現れるみたいな。あれがいいんです。

有村 大きなお祭りも行ってみたいし。以前、京都にツアーで行った際にちょうど祇園祭りの真っ最中だった時があって。みんなで繰り出したんですよね。あれは楽しかったなぁ。

長谷川 あの祇園祭りは街全体が幻想的で良かったですね。たまたま行ったツアー先でお祭りをやってるとアガるよね。夏じゃなかったかもしれないけど、博多の山笠の祭りにもちょうどツアー中に遭遇したこともあったし。

有村 今はあまりなくなったけど、昔は真夏にツアーに行くことも多かったですからね。

——長谷川さんは何かこの夏にやってみたいことは?

長谷川 久しぶりに海とか行ってみたいな……とは思うんですが、実際、一歩外に出るとこの暑さじゃないですか。海に辿り着くまでに溶けちゃうかもしれない(笑)。でも、海は久々に行きたい。僕、地元が千葉なんですが、九十九里海岸とか久しぶりに行ってみたいな……とは思うものの、なかなか(笑)。

——ここからはお二人に選んでいただいた夏曲のプレイリストの説明をお願いします。

有村 アーティスト名や楽曲に夏がついているものを選びました。実際は“風をあつめて”を選びたいところなんですが、夏ということでこちらを。僕の中では、はっぴいえんどって夏のイメージのあるグループなんです。しかも昭和の原風景的な東京の夏を感じさせてくれる。この曲にしても、《ギンギンギラギラの太陽なんです》と歌っていながらも、どこか涼しげに響くところも面白いなって。なんか楽曲の中で風が吹いているのを感じるんですよね。 

はっぴいえんど – “夏なんです”

有村 この夏の暑い中、こういった暑苦しい歌を聴いてトランス状態になるのも一興かなと。僕が初めて彼女を知ったのは<ウッドストック(・フェスティバル)>の映像で。中学生の時でしたね。凄く人が集まってる中で大きな野外コンサートが行われたんだ……みたいな感じで観ていた中、現れたんですよね、ジャニス(・ジョプリン)が。とにかくかっこ良くて。そこから彼女のベストアルバムを手に入れたんです。自分の中では60年代後半のロック黎明期の夏のラブ&ピースなイメージも重なり、印象深い歌でもあって。実は中学時代、リアルタイムじゃないオールドロックを凄く聴いていた時期があったんです。そんな中、この曲もよく聴いてました。

Janis Joplin – Summertime

ジャニス・ジョプリン – “サマータイム”

有村 この曲をよく聴いていた時期はバンドの初期の頃でしたね。一つの車でみんなでツアーに行っていた時によく聴いてました。それが当時の夏の想い出とリンクして。そんな中でもこのバンドでは、これが一番好きだったんです。今でもふと考えるんですよ、こんな音楽性なのに、何でSummercampなんてバンド名にしたんだろう? って。当時からの疑問です。

Summercamp – “Drawer”

ベースの長谷川正が選んだ、「夏を感じるサマーソング」とは? 

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text by 池田スカオ