そろそろ、雪がちらつく季節。雪は日頃見慣れた世界を、あっという間に異世界へと変えてしまう。だからこそ、映画に彩りを与えてくれる。寒いのが苦手な人も、暖かい部屋にいながらにして美しい雪景色を楽しむことができる映画3作を紹介。
この冬に観たい、雪景色が美しい映画3選
ぼくのエリ 200歳の少女(2008年)
ストックホルム郊外のアパートに母親と二人で暮らす12歳の少年、オスカー。学校でひどいいじめにあっていたが、仕返しする勇気はなく、先生にも母親にも言えない。夜になるとアパートの近所の広場に出掛け、隠し持ったナイフで広場の木を刺して、妄想のなかでいじめっ子達に復讐する孤独な日々を送っていた。そんなある日、オスカーの隣の部屋に少女と父親らしき二人が引っ越してくる。少女の名前はエリ。彼女はどこか謎めいていて、夜しか外を出歩かないし、学校にも行っていない様子。オスカーがエリのことが気になり始めた頃、街では残酷な殺人事件が立て続けに起こっていた。
血まみれの事件とエリの正体をめぐるストーリーはホラー要素が強いが、この映画で重要なのはオスカーとエリの関係だ。ともに孤独を抱えて社会に馴染めない二人が、少しずつ心を通わせていく。そして、絆が深まるほど、二人は世の中からはみ出していってしまう。そんな二人が、雪が積もった夜の公園で会話を交わすシーンは、まるで世界中に二人しかいないような静けさに満ちている。雪の白さを引き立てながら、血をイメージさせる赤をポイントにおいた配色の映像の美しさも魅力的で、残酷さと切なさが融け合った物語を耽美的なムードで包み込んでいる。
ホルテンさんのはじめての冒険(2007年)
ノルウェーのオスロとベルゲンを往復する列車、ベルゲン急行の運転手をするホルテン。これまで遅刻をしたり、休むこともなく真面目に勤めてきたが、ついに定年退職を迎えることに。最後の勤務日の前日に仲間達がお別れパーティーを開いてくれるが、そこで思わぬトラブルに巻き込まれて、あろうことか最後の勤務日に初めて遅刻。駅に着いたら、乗るはずだった列車は出たばかりだった。でも、思わぬ失敗をしたことが、ホルテンの冒険の始まりだった。
監督はノルウェーの鬼才、ベント・ハーメル。「冒険」と言っても、そこで起こるのは大した事件ではない。空港で迷ってしまって、気がついたら滑走路の真ん中でパイプをふかしていて捕まったり。目をつむって車を運転するのが得意だという男のドライヴに付き合わされたり。これまでの判で押したような生活から、レールを外れてみると世の中は奇妙で面白い。様々な体験を通じて、ホルテンは人生を見つめ直していく。そんな本作の絶景ポイントはオープニングで展開する、ベルゲン急行の車窓から見える雪景色だ。トンネルを抜ける度に圧倒的な大自然のパノラマが広がっている。ホルテンにとっては見慣れた単調な風景なのかもしれないが、その幻想的な風景に見とれてしまう。