コンパクト・サイズのボディーに、シンセサイザー、リズム・マシン、サンプラーなどの機能を落とし込み、誰でも気軽にダンス・ミュージックをプレイできることで人気のKORG「volcaシリーズ」に、新製品となる『volca drum(ヴォルカ・ドラム)』が加わりました。

すでに発売されている「volca beats」、「volca kick」に続く第3のリズム・マシンとなる『volca drum』は、従来の製品とは全く異なる発想で作られたデジタル・パーカッション・シンセサイザーなのです。

本製品は、選択したトリガー波形を元にウェーブ・ホルダー、オーバー・ドライブで倍音や歪みを加えたり、ビット・リダクションでビットを落としたり、ウェーブガイド・レゾネーター・エフェクトで、うねるような独特の響きを加える事も、6パートで構成された新開発のDSPシンセ・エンジンによってバラエティーに富んだサウンドを生み出す事ができるのです。さらに内蔵のシーケンサーを使った即興性の高いパフォーマンスが可能で、『volca drum』の個性の強いサウンドを楽曲制作やライブで活用すれば、あなたのトラックをよりエレクトロニックに、エキサイティングに変化をもたらす事は間違いないでしょう。

発売されてまだ間もない本製品、今回、興味のある方や、買おうか迷っている方、お手頃な価格でカッコいい音が出せる機材を探している皆様に向けて、『volca drum』の使用レポートをお届けします!

一体どんなサウンドなのか?

音作りや演奏の自由度が高いデジタル・パーカッション・シンセサイザーKORG『volca drum』のサウンドと魅力 technology190410-korg-volca-drum-2-1200x802

こちらが『volca drum』です。ブラックとゴールドに塗装されたコントロール・パネルは落ち着きと高級感があります。筆者は今まで、幾つかの「volcaシリーズ」を触った事がありますが、今回ご紹介する『volca drum』はその中でもかなり気に入ってまして、最近は毎日いじってます。本製品の程良く奥の深い操作感覚、音作りの自由度が高いシンセ・エンジン、即興性に優れた内蔵シーケンサーによるリズム・パターンは最高にエキサイティングで、触っていて飽きないです。側面と裏側は艶のある半透明のプラスチックで作られていて、内部のメカニズムが少しだけ透けて見えるのがカッコよく、いつもピカピカに磨きたくなります。「volcaシリーズ」の価格帯でここまで自由度の高い音作りとプレイが楽しめるリズム・マシンが登場するとは嬉しいかぎりです。
さっそく様々な機能をご紹介しながら、本製品の魅力をお伝えしたいと思います。まずは、どんなサウンドなのか気になるかと思いますので『volca drum』を演奏した動画を撮影しました。お楽しみください!

KORG『volca drum』Demo performance by FALCON-106

MIDI IN端子、SYNC端子を使って、他の「volcaシリーズ」やアナログ・シーケンサー、DAWなどと同期できる

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まずは右上の方にある端子やノブからご紹介します。「MIDI IN端子」は外部のMIDI機器と接続して『volca drum』の音源をコントロールしたり、DAWと同期させて演奏する事ができ、「SYNC(IN,OUT)端子」は他の「volcaシリーズ」や、同社のアナログ・シーケンサー「SQ-1」などとモノラル・ミニ・フォーン・ジャックを接続して同期させる事ができます。「ヘッドフォン端子」は、3.5ミリのステレオ・ミニプラグを使用しヘッドフォンやスピーカーに接続します。何も接続しない場合は、本体に内蔵されている小型スピーカーからも音が出るように作られているので、乾電池で駆動させればいつでもどこでも遊ぶ事が可能です。「TEMPOノブ」は再生する速さを「56BPM」~「240BPM」まで設定でき、「SWINGノブ」を回すとリズムがスウィングし、跳ねたリズムになります。「FUNCボタン」(ファンクション)を押しながら、「SWINGノブ」を回すと逆の方向に跳ねたリズムになり、そのリズムはあまり聴いた事がないようなノリに変化するのでちょっと新鮮です。「VOLUMEノブ」はマスター・ボリュームを調整するのに使います。

新開発DSPシンセ・エンジンが搭載され、バリエーションに富んだドラム・サウンドを作る事ができる

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液晶ディスプレイは黒い背景に、ややピンク色の文字や波形がくっきりと表示され視認性がとても良いです。画面上方には選択したパラメーターと数値が、左側には選択した音の波形、ピッチ・モジュレーター、アンプ・エンベロープが、右側には選択したウェーブガイド・レゾネーターのモデルが表示されます。きちんと並んだ文字やデザインはテクノ心をくすぐられます。

本製品は、6つのドラム・パートで構成されたDSPシンセ・エンジンが搭載されています。これは分かりやすく言うと、ドラム音色を作るためのシンセが6トラック分内蔵されているという事です。DSPによるアナログ・モデリングによって、バリエーションに富んだエレクトロニックなドラム・サウンドを作る事ができます。どのトラックがキックで、どこがスネアでという決まりはなく、それぞれのトラックのオシレーターを操作する事で、好きな音色を、好きな場所にアサインしてドラム・パターンを作る事ができるのが特徴です。1つの音色に対して2つのレイヤーが重なっていて、「LAYER1/2ボタン」を押すとレイヤーを切り替える事ができます。それぞれレイヤーごとに違ったサウンドを設定し、2つを重ねて複雑な音を作ったり、2つのレイヤーを同時にエデットし、同じ音を重ねて厚みを出す事も可能です。

「SELECT PARAMノブ」を回すと、「サイン波」、「のこぎり波」、「ハイパス・フィルター・ノイズ」、「ローパス・フィルター・ノイズ」、「バンドパス・フィルター・ノイズ」からオシレーター波形を選択すると同時に、ピッチ・モジュレーター、アンプ・エンベロープが次々に切り替わります。ノブを回した時の感触は「コキコキ」としていて、液晶ディスプレイに表示される様々な波形の組み合わせが切り替わり、割と簡単にサウンドを作る事ができます。波形の組み合わせによっては通常のドラム音色の枠を飛び越えて、効果音やノイジーな音色を作る事も可能です。

「SELECT PARAMノブ」で選択した波形を元に、左側に集中しているノブでドラム音色を作る

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左上の方には電源ボタンとACアダプターを接続する端子があります。裏側に電池ボックスがあるので、付属の単三アルカリ乾電池を6本入れれば約8時間駆動できますが、長時間使用したい場合は、別売りのACアダプター「KA-350」を一緒に購入するのがおすすめです。

本製品左側に集中しているノブ類をご紹介します。前述しました「SELECT PARAMノブ」で選択した波形を元に、これらのノブを操作してドラムの音色を作ります。「PITCHノブ」は音色のピッチを調節するのに使用し、「MOD AMOUNTノブ」と「MOD RATEノブ」は、選択したレイヤーのピッチ・モジュレーションの深さや、スピードを設定できます。設定によって「ピューン」という効果音にしたり、「チュン」と短くしてドラムのアタック音などを表現できます。「EG ATTACKノブ」と「EG RELEASEノブ」は、選択したレイヤーのアンプ・エンベロープのアタックとリリース・タイムを設定する時に使用します。これらは単に音色をエデットする時だけでなく、演奏しながら操作して音を変化させる事もできますし、「RECボタン」を押して操作すれば、パターンにノブの動きを記録させる事も可能です。

「LEVEL VALUEノブ」は、通常は選択したドラムの音量を設定する時に使用するノブですが、「EDIT STEPボタン」を押した時に「SELECT PARMノブ」を回すと、液晶画面に「BIT」、「FLD」、「DRV」、「PAN」、「GAN」などのパート・パラメーターが表示されます。この時に「LEVEL VALUEノブ」を操作すれば、ビット・リダクション、ウェーブ・フォルダの深さ、オーバー・ドライブなどを調節して、ザラザラ感や、倍音、歪みなどを加える事ができ、パン、ゲインなどを設定して、より好みの音色にエディットする事ができます。「SENDノブ」を右に回せば、ウェーブガイド・レゾネーターによってかかるエフェクトの量を設定できます。このウェーブガイド・レゾネーターが本製品ならではの良い響きをしているので、次にご紹介します。

ウェーブガイド・レゾネーターによる、うねるような響きをリアルタイムで操作してパフォーマンスできる

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本製品の中央の辺りにあります、3つのノブがウェーブガイド・レゾネーターです。こちらは物理モデリングによるエフェクターで、共鳴による響きを加える事ができます。「DECAYノブ」は、エフェクトのかかる時間を調節し、「BODYノブ」は、エフェクトのキャラクターを設定、「TUNEノブ」は、エフェクトのピッチを設定します。数値を小さくした時は、ディレイをかけたような音に聴こえ、そこから数値をゆっくり上げていくとサウンドが変化し、派手な効果音になります。アナログ・ディレイのエフェクターで、ディレイ・タイムを変化させた時に鳴る「ギュイーン」という音に似ている印象です。リズム・パターンを鳴らしながらノブを操作すれば、ドラムに対して金属的でうねるようなエフェクトの響きが加わり、なんともカッコいいです。

ウェーブガイド・レゾネーターは「TUBE」と「STRING」の2種類のモードがあり、「FUNCボタン」と鍵盤キーの「11」を同時に押すと切り替える事ができます。「TUBE」は太鼓のような筒状の響きで、「STRING」は弦のようなメタリックな響きです。それぞれ音の感じが違うので、お好みで使い分けてみてください。ライブで演奏する時に、このウェーブガイド・レゾネーターをリアルタイムで操作してパフォーマンスするのもありですし、「RECボタン」を押してノブの動きをシーケンサーに記録する事も可能です。

マルチタッチ鍵盤は、ファンクション・ボタンと組み合わせて様々な設定が可能

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続いて、手前の方にあるマルチタッチ鍵盤 の「ステップ1~16ボタン」ですが、「ステップ1~6」まではドラムの音色が内蔵されていて、「ステップ7~16」は「FUNCボタン」(ファンクション)と一緒に押すと色々な機能を設定する事ができます。細かくご説明すると凄く長くなってしまいますので、どんな事ができるのかざっくりとご紹介したいと思います。

まず、打ち込んだパターンと、作った音色のキットをセーブ・ロードしたり、「ステップ1~6」にアサインされたドラム音色を選択したり、パート・コピー・モードに入り、パートのサウンド、シーケンス・データをコピーできるのは勿論のこと、チョーク・セレクト・モードでは、幾つかの音色の中で発音を優先したいパートを設定しドラム音色の歯切れをよくしたり、選んだ音色のレイヤーと、ステップ、スライス、アクセント、アクティブ・ステップなどの設定をランダマイズで変更し、想定外の変化や展開を加えたり、ウェーブガイド・レゾネーターのモデルを切り替える事などが可能です。さらにモーション・シーケンスをオン・オフしたり、選択したドラム音色か、全パートのモーション・シーケンス、ステップ、スライス、アクセント、モーションなどを消去して、アクティブ・ステップを初期設定にリセットできるなど、納得のいくパターンが作れるまで何回でもやり直しが効く便利な設定が凝縮されています。

マルチタッチ鍵盤は16ステップのドラム・パターンを打ち込む時にも使用します。ボタンの幅が意外と狭いので、間違って隣のボタンを押してしまう事もありますが、センサーの反応はとても良く、指で軽く触るだけで瞬時に切り替わります。パターンごとに違う音色キットを設定していても、シーケンスを切り替えた時に音も瞬時に切り替わり、ほとんど違和感を感じる事なくプレイできます。

ステップが再生される確率を設定し、毎回微妙に異なるパターンを再生したり、ポリリズムを簡単に作る事が可能

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「EDIT/STEPボタン」を押すと、ステップ・エディット・モードになり「ステップ1~16ボタン」にドラム・パターンを打ち込む事ができます。特に面白いのは、この時にステップ・ボタンを指で押しながら「LEVEL VALUEノブ」を操作するとステップが再生される確率を設定でき、パターンがループ再生されるたびに設定したドラムが鳴ったり、鳴らなかったりできる事です。例えば「100」に設定すればそのステップのドラムは毎回必ず鳴りますが、「70」に設定すれば時々鳴らなかったり、「30」に設定すればたまにしか鳴らなかったり、ステップごとにドラムが鳴る確率をお好みで設定する事ができるのです。これによって毎回微妙に異なるパターンが再生され、単調さを回避できるありがたい機能です。

「EDIT/STEPボタン」を押した後に「SLICEボタン」を押すと、スライス・エディット・モードに入り、「ステップ1~16ボタン」の中でドラムを連打させたい箇所をオン・オフする事ができます。この時「LEVEL VALUEノブ」を一緒に操作すれば連打されるドラムの細かさを設定でき、ドラム・ロールのように「ダラララ!」とリズムを連打させてパターンに盛り上がりを加える事ができて便利です。
「EDIT/STEPボタン」と「ACCENTボタン」を押した時は、アクセント・エディット・ モードに入ります。これはステップごとにアクセントを設定するための機能で、ステップ・ボタンを押しながら「LEVEL VALUEノブ」でアクセントの強さを設定すれば、リズム・パターンに強弱のアクセントを付ける事が可能です。

「ACT.STEPボタン」を押すとアクティブ・ステップ・エディット・モードに入ります。これは、選んだドラム音色のステップ数を設定する機能で、オン・オフすると再生する箇所とスキップする箇所を決める事ができます。例えば、キックを「16ステップ」、ハイハットを「6ステップ」、スネアを「10ステップ」、パーカッションを「13ステップ」に設定して再生すると、全部のパートが同じテンポのまま、どんどんずれていくようなポリリズムを簡単に作る事ができるのです。これらの機能を使いこなせば、単調なループから、アクセントや強弱のある表情豊かなパターンを作れるので、ぜひ試してみて欲しいです。

ステップ・ジャンプ・モードを使い、アドリブでオカズを入れればキサイティングなパフォーマンスが可能

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もう一つカッコいい機能をご紹介します。「STEP JUMPボタン」を押すと、ステップ・ジャンプ・モードに入ります。これは「ステップ1~16ボタン」の中で、押したステップが次に再生される機能です。どういう事かというと、スネアの打ち込まれたステップを押せば「タタタタタタタタ!」と再生され、キックとスネアが打ち込まれたステップを2つ同時に押せば「ドタドタドタドタ!」と再生されます。しつこいようですが、キック、ハット、スネアが打ち込まれたステップを3つ同時に押せば「ドツタドツタドツタドツタ!」と再生されるのです。思いついたステップを適当に押すと、予想外のリズムが飛び出して来るのがなんとも痛快です。ステップ・ボタンから指を放せばすぐに元のリズム・パターンに戻るので、この機能を使ってライブ中にアドリブでオカズを入れれば、エキサイティングなパフォーマンスをする事ができます。

「MUTEボタン」は、押しながら「ステップ1~6ボタン」を押すと、指定したドラム音色をミュートしたり、ミュートを解除する事ができ、「PLAYボタン」はシーケンサーの再生と停止に、「RECボタン」を押して「PLAYボタン」を押せばリアルタイムでドラムを打ち込んだり、ノブの動きをシーケンスに記録する事が可能です。

『volca drum』は音作りや演奏の自由度が高く、触っていて最高に楽しいリズム・マシン

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『volca drum』の使用レポートいかがでしたでしょうか。本製品の落ち着いた色合いのルックスと、程良く奥が深い操作感覚は触っていて飽きませんし、DSPシンセ・エンジンで作るエレクトロ二ックなドラム・サウンドは、通常のリズム・マシンとは違い柔軟に音色を作れるところがとても良いです。内蔵のシーケンサー部分は、ステップが再生される確率を設定して、毎回微妙に違ったパターンを再生できたり、トラックごとにレングスをバラバラに設定してポリリズムを作れるなど自由度が高く、やや複雑なリズムに聴こえるところがカッコいいです。即興性にも優れているのでライブ・パフォーマンスで威力を発揮するでしょう。なによりも触っていて最高に楽しいです!

『volca drum』と同時に発売された『volca modular』(ヴォルカ・モジュラー)も、付属のピン・ケーブルを接続して、モジュラー・シンセの基礎を学んだり、音作りの可能性を探究できるセミ・モジュラー・アナログ・シンセサイザーで、そちらも興味深い物があります。オーソドックスなダンス・ミュージックの演奏に向いていた今までの「volcaシリーズ」に比べて今回発売された2機種は、より一層、緻密なエレクトロニック・ミュージックの音作りに向いている印象があり「volcaシリーズ」の歴史が新しい章に突入したように感じます。気が早いかもしれませんが今後はどのような新製品が発売されるのか目が離せません。『volca drum』はお手頃な価格でありながら、その音は文句なしにカッコよく、末長く使用したいと思わせる、おすすめのリズム・マシンです。ぜひ試してみてください!

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