日本が世界に誇るバンド、その名もギターウルフ(Guitar Wolf)。漆黒の革ジャンを身に纏い、圧倒的なパフォーマンス、心を揺さぶるサウンド、オーディエンスの心を鷲掴みにする唯一無二のロックンロールバンドである。

今回、2019年5月8日から6月2日、アトランタ(ジョージア州)からメンフィス(テネシー州)まで23箇所を周るGuitar Wolf 東USA Tourに幸運にも帯同をさせて頂く機会を頂けた。ギターウルフが日本を越えてアメリカやヨーロッパで熱狂的なファンを生み出す理由や、現在も世界の音楽シーンの先端で数多くの伝説を生み出すギターウルフの魅力を、微力ながら当方から伝えさせて頂きたい。本記事では、写真を交えながら前篇/後篇の2部で記事をご案内する。

SLASH AND BURN AT EVERY TURN TOUR

今回のツアー名は<SLASH AND BURN AT EVERY TURN TOUR>。初日の公演はアトランタからスタートした。アトランタは黒人のハリウッドと呼ばれ、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの生まれ故郷でもある。このツアーはアメリカのロックバンド「Nashville Pussy」、パンクバンド「THE TURBO A.C.’S」の3バンドでツアーを周った。28日の日程で東アメリカを23箇所周る、過酷なツアーとなった。

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ギターウルフのUSAツアーのギグは、どの会場も気合いがみなぎる素晴らしい公演であった。Seiji氏の魂を削るボーカルギター、Gotz氏のリズミカルなベース、Toru氏のパワフルなドラム。毎公演、彼らのステージングから目を話すことが出来なかった。屋外ステージ、ライブハウス、ボーリング場、パブと毎日異なるロケーションと環境にも関わらず、圧倒的なライブをオーディエンスに披露していた。写真でライブの臨場感を体験してほしい。

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ブルックリン、スタンホープ、プロビデンス

さらに、特に個人的に印象的だった3箇所、ブルックリン、スタンホープ、プロビデンスでのライブをご紹介したい。

アメリカの中心地はもちろん世界の大都市ニューヨーク。高層ビルがたち並び様々な人種がすれ違うパワーに溢れる街だ。中心地から地下鉄で約20分、ブルックリンの会場はツアー8箇所目の場所であった。おしゃれなカフェ、レストランが立ち並び、近くのクラブからは良質なテクノも聞こえてくるのが、ブルックリンの街だ。会場はボーリング場と並列したライブハウスで、ボーリングのピンが倒れる音とライブサウンドが入り混じる、日本でもヨーロッパでも体験したことの無いロケーションだった。大型スクリーンに演奏風景が映し出され、オーディエンスのボルテージもヒートアップしていった。ライブは圧巻で抜群の呼吸。特筆すべきは、ボーリング場にちなんで、アルバム『LOVE & JETT』に収録されている“ボーリングIN高田馬場”を中盤に披露したこと、ボールを観客席に投げ込み笑いを誘っていたことだろう。カッコいいロックの中に、お茶目な笑いを入れるのもギターウルフの大きな魅力である。

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ニューヨークからバスで1時間の場所にあるウエスタンスタイルのカフェには、ジュークボックス、歴代のブルースミュージシャンの写真など味のある雰囲気が印象的で、ここでのライブは特に素晴らしかった。ライブでは、一発目に“喧嘩ロック”を演奏して、一気に観客のボルテージを上げていく。音楽を愛する雰囲気を持つロケーションで、いつもピカいちの演奏をする。そんなギターウルフの心がこもったライブを観る事が出来た。

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プロビデンス、神の化身という場所。1ドル紙幣にイラストが記載されているプロビデンスの目のモデルにもなっている街は、銀行が立ち並び静かで、人もまばらであった。タトゥーショップの下近くにある会場の「Alchemy」の内装は独特の雰囲気で、壁にはアート、ペン画がかかっている。この日、アーティスト出口から歩いてくるSeiji氏のオーラが凄く、とにかく登場シーンに圧倒された。鬼の形相でギターをかきならし、マイクに魂をぶつける。この日、ステージから降りる瞬間にSeijiが倒れこんだ。ローディーのRojerが肩を支える。汗だくの革ジャン、控室に引っ込む後ろ姿、ライブの余韻と静寂がおり混じる緊迫した会場。どれだけ魂をぶつけているのだろうか……。

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アメリカツアーで、バンドは毎日毎日大きなメッセージと感動を届けるライブを繰り返していた。ライブ前の独特の緊張感、登場曲のラモーンズの“Certain Hop”で威風堂々と登場、仁義なき戦いのテーマで一気飲み。これだけでも十分、見応えのある演出である。

ど頭にSeiji氏がギターを描き鳴らし、一発目にマーシャルアンプからアンプ直差しで繰り出すけたたましい音、そして力強くかつリズミカルなベース、パワフルで全体の音を包み込むドラムス、そのそれぞれの個性が3身一体となり音が重なり交差していく。ギターウルフの魂を擦り減らすライブに、私は一瞬も目を離せなかった。

ツアー後半にベースのGotz氏と話す機会を頂いた。ギターウルフは曲順、セットは決まっても観客の空気を感じ取り曲を変えたり間合いを入れ、ジャム的な要素を入れていくと説明してくれた。その変化はSeiji氏の合図、タイミングからスタートするという、不規則な展開らしい。ギターウルフの音楽は荒々しい音の中で、独特の阿吽の呼吸から幾何学的に計算もされたサウンドであると私は思う。微妙なメンバーのバランスと即効性から爆発的な音が絡みあい増幅され、すれ違ってまた絡み合う何とも形容しがたい音楽。ギターウルフという音楽が既にジャンルであり、生き物であり狼の牙の様に噛み付いてくる。写真を撮っていて、ギターウルフの世界観にどっぷりのめり込んでいくのが自分でも分かった。

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後編にはとある事件のことについて書こうと思う。事件が起こったのは13公演目。しかも同時に2つも重なったのである。その渦中に居た私としても、このエピソードは書き残したい事件である。後編も是非ともご拝読頂きたい。

Text & Photo by Harada Atsushi

ギターウルフ