――Rie fuさんは2ndアルバム『eddy』のゲストヴォーカルとして、3rdアルバム『Spaces in Queue』から正式メンバーとして加入しましたが、関わり方が変わったことで、例えばNAOTOさんからのヴォーカルのディレクションの仕方が変わったり、自分から曲のアイデアを持ち寄ったりするようなシーンも出てきましたか?
NAOTO ヴォーカルのディレクションはそんなにしてないよね? 実際にRie fuが持ってきた曲のモチーフを広げたりしているけど。
Rie fu うん、最初のほうはありましたね。私の気持ちとしては、NAOTOさんのソロプロジェクトだから、あくまでも楽器の一部としてあまり個性を出さずにするというか。言われたことだけをやるという控えめな気持ちで、2枚目のアルバムは参加させていただいてましたね。でも、3枚目のアルバムからはデロというプロジェクトへの熱が湧いてきて、こんな曲をやってみたらどうかな? とか、今後の活動についてのアイデアも発案してみたり、ちょっと図々しく参加する頻度が高まってきて。
NAOTO 個人的には、やればやるほどこなれてしまっていくのが一番怖いんですよ。もっとお互いの化学反応的なものを試してみることによって、いつまでも音楽としてまとまらない感じがあったほうがいいのかなって。それは二人でやっている意味合いとして大きいですね。今後の可能性に期待できるというか。
――お互いが想像できないような音楽ができるかもしれない、ということですね。
Rie fu そうですね。スタジオに入って曲を作るのは、バンドだったら普通のやり方だとは思うんですけど、私もNAOTOさんも完全に一人で作っているというタイプだったので、その場でアイデア交換していくことによって、今後さらに進化していきたいですね。そういう意味では、お互い自分のやりたいものを作っていて、他の可能性にも興味があるのは共通点だと思いますね。一人だけの世界で留まっているのではつまらない、というのはあるかもしれない。
NAOTO そうだね。リハはきついけど(笑)。
Rie fu NAOTOさんには裏番長みたいな圧迫感があるんですよ(笑)。
NAOTO 裏番(笑)。
Rie fu いつもリハーサルや制作でNAOTOさんに思うのは、作品に対しての向かい方が一見ソフトで優しげに見えて、実は割とスパルタだったりするんです(笑)。最近はそうでもないけど、最初の頃は1日8曲ぐらいヴォーカルのレコーディングを「はい、次」みたいな感じに指示されて。NAOTOさんに曲を送っていただいて私が歌詞を書くんですけど、そのやりとりもいきなり10曲まとめて送られてきたりして。そうやって詰め込む感じはありますね。でもすごく計算して曲を作る方なので、そういう面での信頼度はすごく高いです。
NAOTO (笑)。でもリハはきついと思うよ。延々とやり続けてるから。
Rie fu 以前は10時間ぐらいやってました。
――集中力が切れてぼやけてきませんか?
NAOTO 2時間前の方が良い演奏だったということもありますね(笑)。
――お二人には音楽以外の要素との接点を重視しているように感じるんです。NAOTOさんはdelofamiliaとしてadidasとコラボレーションしたり、デザイナーの倉石一樹さんとIS and ISMというインストユニットを結成したり。Rie fuさんは音楽活動以外で画家やデザイナーとしての一面を持っていますよね。音楽から何かへと繋げる意識が高いと思うんですが、その辺りはどうですか?
NAOTO そうですね。曲を作る時って、本を読んだり映画を見たりすることでフレーズが浮かんできて。僕は90年代のヒップホップとかグランジ、モッズ文化とか、一緒くたになったカルチャーが好きなんですよね。それこそブリストルのワイルド・バンチとか。ファッションだけ、音楽だけで切り取ってしまうと、そこまではのめり込めないんですよ。
――一つのムーブメントとして捉えているんですね。
NAOTO そうそう。ドキュメンタリーのDVDや写真を見ながらヒップホップを聴いてましたからね。
Rie fu 私は、聴く人と自分にとっても音楽が中心になったらいけないと思っていて。生活があって、その中に必要な要素として音楽がある。聴く人の生活があっての音楽だと必ず意識して、曲作りやライブの物販作りをしていますね。音楽を聴くことが旅行で、ある意味で異空間に行けるというか。それを体感できるものの一つという意識はありますね。
――音楽の関係や役割を考えているんですね。個人的には、異なる価値観を持つ二人がお互いの引き出しの中を見せ合うことで、新しいことを知るという機会も増えているんじゃないかなと思っていて。
Rie fu 私はアメリカの70年代90年代の女性シンガーソングライターとか、そういった音楽を聴いてきたので、UKロックに関することはNAOTOさんに教えてもらったり、歌い方をデロの曲の中で真似してみたり。今回のアルバムの中にはスミスの曲に影響された<In a Zoo>という曲があって。私はスミスを聴いたことがなかったので、実際にスミスを聴いて、学校に反抗しているような感じを自分なりに歌詞にしてみたんです。バックグラウンドが全然違うからこそ、常に新しいことを教えてもらっていますね。
NAOTO 自分はあまり弾き語りを聴いたことがなかったけど、Rie fuの弾き語りライブを観に行って、シンプルな表現に興味を持ち始めたんですよね。以前、音数が多い時があったんですけど、そうではなく素材を剥き出しで表現する美学というか。それだけでもパワーがあるんだなと思えたら、そこから音数に対する考え方を改めるようになって。声を主体にする考え方が出てきたんですよ。
Rie fu ある意味で正反対だからこそ、面白いというのもありますよね。